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黒歴史

 自分の部下達が意外に普通の、ちゃんと仕事をする刑事達だったということを聡介は今さらながら実感した。

 水島弥生について調べてくれと頼んだところ、思いの外すぐに回答があった。


「連れ子? そうすると、彼女は被害者とは血がつながっていないのか」

 日下部は今日も緊張の面持ちで、自信なさそうに小さな声でぼそぼそと報告する。

「そうです。弥生の母親は彼女を産んですぐに夫と死別しています。交通事故だったようですが……」

「が……?」

「そのかっきり半年後にすぐ水島武司と再婚しています。なんだか、旦那が亡くなる前から付き合いがあって、亡くなるのを待ち構えていたみたいというか……」

 聡介はじっと日下部を見た。何かおかしなことを言っただろうか? と不安に思っているようで、彼は背中を丸めて目を揺らした。

「つまり事故は作為的なものだったと?」

「いや、その可能性も考えられるというだけです」

「日下部……」

「はい」

「いい着想だ。すっかり刑事らしくなったな!」

 大きな身体をしているくせに気の小さい刑事は、ぱっと顔を明るくして自席に戻った。


「いやはや、びっくりですよ。班長」と、友永がやってきた。彼には水島弥生の経歴について調べるよう言ってあった。

「過去に何度か補導歴がありますね。しょっちゅう夜の遅い時間に新天地をうろついていたみたいです。それも兄貴と一緒に」

「被害者と……?」

「二人でいつまでもゲーセンに入り浸っていたところを、警ら中のハコ番の巡査に見つかって補導されたらしいですね。もっとも家柄が家柄だけに、正式な記録には残っていないようですが」

「よくそんな情報が手に入ったな?」

 友永はふふん、と笑った。

「俺を誰だと思ってるんですか?」

「そうだったな。しかし、すごいな。山口県警の管轄なのに」

 すると友永はなぜか目を逸らした。


 それから、

「まだまだありますよ、とっておきのネタが」

 そうして元少年課の刑事から聞いた情報は、聡介にはとても信じられなかった。

「この子、せっかく顔立ちはいいんだから、こんな髪型しないで、もっと明るい色に染めてゆるふわパーマとかかけたらいいんだよ」

 ホワイトボードに貼られた水島弥生の顔写真を見つめて、いきなり三枝が言った。

 確かに和泉が『市松人形』と称したように、一目見たら忘れられない印象的な外見をしていた。

 

 それにしてもあれほど兄を慕っていた彼女が、兄の職場へ足を運んだことはなかったのだろうか?

 もし彼女が流川に出没するようなことがあればきっと目立ったことだろう。


 被害者と一緒に歩いているところを目撃されていれば、誰かがきっとそう証言したことだろう。

 しかし、彼女があの街で目撃されたという情報は今のところない。


「今どきのメイクしたら、きっとその辺りのご当地アイドルより可愛いのになぁ」

 もったいない、と三枝が呟いた時、聡介の頭の中で閃くものがあった。


「おい、三枝。この写真を加工して、お前の言う様な髪型と化粧をさせたモンタージュを作成できるか?!」

 聡介が水島弥生の顔写真を渡すと、

「オッケー、お安い御用だよ」


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