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古いアルバムの中

「だいぶ焦ってますね、彼らも」

「そうだな……」


 二人が会議室に戻ると、他の部下達は額を突き合わせて何やら話し合っていた。

 あの駿河も加わっているぐらいだから、きっとまともな事件の話だろう。


 と、思っていたら……。

「じゃあ、ここで締切りだぞ」日下部が言って受話器を取った。「あ、班長。実は今、皆まだ晩飯食べてないから何か出前取ろうって言ってたんですよ。何にします?」

 なんだ、そんなことか。


 まぁいい、と渡されたメニュー表をざっと見る。以前に比べたらまるで違う方向を向いていた仲間達が、少しずつだが結束してきているように思える。


 別に所轄の刑事達と張り合うつもりはないが、この仲間達と一刻も早く事件を解決できたらいい、と聡介は思う。


 それから彼は水島弥生から借りてきたアルバムをめくった。

 被害者と彼女の幼い頃の姿が映っている。確かにいつも真ん中に頭一つ分背の高い少年が笑っていた。これが『まーくん』なのだろう。


「何ですか? これ」和泉が上から覗き込んできた。

「水島弥生から借りてきた。この子が、被害者がホストを始めるきっかけになった友人らしい」

「……それが、何か事件に関係しているとお考えですか?」

「わからん……でも、関係がある気がする。これは俺の勘に過ぎないが」

「だったら必ず関係があるんですよ」

 和泉は笑いながら言って聡介の隣に腰かける。「聡さんの勘は間違いないって、僕は信じてますから」

 聡介は思わずまじまじと息子の顔を見た。

「……何です?」

「なんだかお前、今日はやけに機嫌いいな? 昨日はあんなに調子悪そうだったのに」

 そうですか? と、和泉は立ち上がってコーヒーを入れに行った。


 長い付き合いだが、未だに彼の内面は計り知れない。


 再びアルバムに眼を落とす。この少年が大人になった時に、一目で本人だと見分けがつく特徴でもないだろうか。身体に傷跡だとか、めずらしい形の痣だとか。


 班長、と駿河が声をかけてきた。

「明日から、どのように動きますか?」

「それなんだが、被害者と金銭トラブルのあった相手が見つかった」

 被害者の勤務先だった『シルバームーン』のオーナー、玉城美和子。彼女は水島弘樹に大金を貸していたが回収できず焦っていたらしい。

「あの店、流行ってたんじゃないですか? そんなに経営苦しかったんですかね」

 日下部が言うと三枝が答えて言った。

「去年かなり大きな改装工事をしたんだよ、あの店。かなりのお金かけてね。今までは敦と隼人が稼ぎ頭で頑張ってたけど、この頃は期待してたほどの売り上げはないみたい」

「玉城美和子に話を聞く必要があるな」

 聡介は誰が適任かと全員を見回した。

「はいはーい! 僕が行きます!!」三枝が手を挙げた。確かに彼なら相手もそれほど警戒しないだろう。

「……葵、悪いがこいつの面倒を見てくれないか?」

 駿河はただ承知しました、とだけ答える。

「それから友永と日下部、お前達は引き続き池田麻美の身辺を洗ってくれ。まだ完全に容疑が晴れた訳じゃないからな」

「彰彦、そうしたらお前は俺と……」

「この写真の男の子を探すんですね?」

「そうだ。その前に、少し気になる人間がいる」

「気になる人間?」

「被害者を、新しくオープンする店に引き抜こうとしていた女性がいたな。被害者の勤めていた店の常連で、名前は確か……」

「高島亜由美、ですね」

「その女性にも話を聞く必要がある」

 はーい、と和泉は呑気に返事をした。

 それから、

「この写真の男の子、すぐ見つかる気がします」

 根拠はないが聡介もなんだかそんな気がしていた。


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