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頼れるものは

「……どういうこと?」

 智哉が不安と期待の入り交ったような顔で見つめてくる。

「黙ってついて来いって」

 なんだか安っぽい台詞だな……と周は一人で苦笑してしまった。

 

 広島北署の向かいにあるお好み焼きの店で周達は聡介と落ち合った。

 やはり仕事が忙しいのだろうか、少し疲れた顔をしている。


「すみません、お忙しいのに」

 すると父親ぐらいの年齢であろう刑事は笑って、

「他ならぬ君の頼みならね」と言ってくれた。

 それから智哉の方を不思議そうに見る。

「彼は篠崎智哉っていいます。俺の友人です」

 初めまして、と智哉はお辞儀をした。

「高岡です。彼の、隣の部屋に住んでいます」聡介は言った。


「あの、実は……」

 周は智哉がストーカーに悩まされていることを話した。警察に行ったけれど取り合ってもらえなかったことも。

「……なんていう警官だったか、覚えてるかい?」

 聡介はいつにない厳しい顔を見せて訊いた。

「……すみません、名前は覚えていないんですが……中年のオジさんと、アラブ人みたいな濃い顔をした、まだ若い男性でした」智哉は答えた。

 アラブ人? と、思い当たる節でもあるのか今度は微妙な表情になる。


「若いお巡りさんの方はちゃんと僕の話を聞いてくれたんですけど、オジさんの方が途中で遮ったんです。時間のムダだとか何とか言って。まるで僕がこんな顔をしてるのが悪いみたいな言い方で、もっと男らしく鍛えろとか何とか言って追い返されました」

 再び厳しい表情に戻る。

「どこの所轄に行ったの?」

「……家の近く……宇品東署です」

「ひょっとして、あそこにじっと立ってこっちを見つめている男性が、君につきまとうストーカーかな?」

 鋭い眼つきで聡介が店の外を見る。

 その先を追いかけると確かに、さっきの男がじっとこちらを見つめていた。

 

 ちょっと待ってて、と刑事は立ち上がって外に出る。

 聡介が男に近付く。二、三言交わすと、男は慌てて逃げて行った。

 

 それから戻って来ると、

「警告しておいたよ。取り敢えずは、ね。けど、改めて所轄に相談する方がいい。相手が君に送ってきたメールや手紙は捨てないで取って置く。それから電話は録音できるようにしておく。物証を揃えて提出すれば、警察も動かざるを得なくなるよ」

 さすがに現役の刑事だ。


 周はすっかり感動してしまった。智哉も目から鱗が落ちたような顔で、しきりに頷いている。

「高岡さん、ありがとうございました! やっぱり頼って良かった……」

 優しい父親のような、隣室に住む刑事は微笑んでくれた。


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