主1
悲鳴、銃声、エンジン音に爆発音、それは唐突に鳴り響く。
「なにが」
鐘の音、足音、更に大きくなる悲鳴、爆発音、銃声、悲鳴、そんな中で武器だけは手放せないとAKとリボルバーを拾い部屋を出る。
「ウエダ、遅い早く」
「おっおう」
部屋の外にはアーニャがいて、彼女についていく。宿の中には誰もおらず、不思議な感覚だ。そして宿を出る。
「なんだこれ」
外は戦場だった。ただし戦場は戦場でも撤退戦、しかも追いかける方ではなく逃げ惑う方の戦場だ。戸惑っているとアーニャに声をかけられたので見ると、アーニャは軽トラの助手席側に乗っていた。
「はぁっ」
「運転できるんでしょ」
「できるけどさ、いったいなにが」
「主よ」
それって、と声をかけようとしたところで荷台を見る、見てしまう。荷台にはモノが乗っていた。
「いいから早く」
「いやに」
「早くして」
運転席に乗り込む、これだけ慌てているのだ今は気にしている余裕はない、自分にできることをする。まず鍵を確認するが鍵は刺さりONになっているのだがエンジンが止まり動かない。計器をチェック、ただのエンストだ。クラッチを踏み込み、ギアを1速にして鍵を回す。
「運転できるって本当だったんだ」
「でどこに」
「どこでもいいから早く」
「どこでもいいからって」
エンジンがかかったので鍵から手を離し、当てはないので耳をすまし、音が少ない方向を探る。
「正面か」
「いいから早く」
「だからなんで」
アーニャがイラついて答えようとしたときに状況が動く。ひび割れたバックミラーに謎の物体が。
「はやく」
アクセルを踏み込むと共にクラッチを半分戻し、前に進むのを確認した上でクラッチから足を離す。
「人ひいても構わないから」
エンジンの回転数が上がり速度が上がらなくと、アクセルから足を離し、クラッチを踏み、ギアを2速へ。
「なんなんだよ」
またバックミラーを見る、そこには2本の触角、鋭い顎、そして軽トラよりもでかいそれは。
「ありって」
「主よ」




