廃墟にて8
「なにもなかった」
「なによ生きてるだけでいいじゃない」
「なにもなかった」
外に出た俺たちは、銃やら何やらを探したのだが死体すら残っていたなかった。要するに。
「赤字」
拾ったものはほぼなにもない、あったのは昨日手に入れた銃何丁かだけだ、そしてそれもあまり手入れがされていないらしく、普通に売るとあまり価値のない品になりそうとのことだ。つまり赤字だ。
「自転車操業、火の車」
ネガティブな単語ばかり頭に浮かぶ。
「ウエダひとりで何言ってるのよ」
「いや収入が」
「あるじゃない」
そう言って手に持ったライフルを見せてくるのだが、4丁しかない上に1丁は自分用にしている。次の仕事のコストを考えるとお腹が痛くなる。要は収入を増やさなければ生きていくのも難しい。
「いや増やさないとなぁって」
「それはみんな」
「今回だと次の仕事のコスト考えると収入が足りなくて」
「ウエダそんなこと考えてるの」
「そりゃあ考えるよ、生きてく上では必須だろ」
「つまんないこと考えてるわね」
「つまんないことねぇ」
生きるために支出入を考えるのはつまらないが大切なことだろう、まあ常に考えているようなことではないかもしれないが。
「ならアーニャは何考えてるんだよ」
「私、私は」
「実は何も考えてないとか」
「しっ失礼ね私もちゃんと考えてるわよ」
そう言ってアーニャは悩みだす、多分何も考えていなかったのだろう。そんなアーニャはほおっておいて何かないかと探す、この廃墟がどこかはわからないが高い建物があるならもしかすると地下にも、地下鉄のように何かあるのではないかと期待してだ、徒労になるかも知れないが探してみる価値はあるだろう。
「さすがに砂に埋もれてる可能性の方が高いだろうけど」
期待はしないでおく。廃墟を眺めつつ、辺りをうかがうがやはり何もない、あるのは廃墟だけ、そして廃墟に金目のものはない。あっても多分持っていかれてる。そうして隠れていた廃墟を中心に1周回ってみても、何もなくアーニャの元へと戻ってくる。
「アーニャ」
「何よ私だって」
「そろそろ町に帰ろうか」
「…………そう、私はウエダが安全に帰れる帰り道を考えてたわよ、感謝しなさい」
多分どころか疑いようもなく考えていなさそうなのだが、あまり聞かないでおく。自分も悲しくなりそうだし。
「ならその安全な道を使って帰ろうか」
「ええ任せなさい」
と言うわけで帰路に着いた。




