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19.能力値

 白亜の〈剣技〉習得を契機にして、街に戻ることにした。魔物の解体に時間がかかるため、魔物を探して動く時間を合わせると一日で十匹は狩れない。倒した魔物はクリスラビットが四羽、ポンポンコーギーが一匹、ファイアチキンが二羽である。


 ファイアチキンというのは、チロチロと燃える鶏冠(とさか)をもつニワトリの魔物である。他に燃え移るようなこともなく、特にこの部位を使って何かしてくるわけでもないため、大きくて獰猛なだけの鶏だ。攻撃手段は蹴爪(けづめ)による攻撃とクチバシによる突っつきくらいなのだが、いずれもHPを大きく減少させるらしい。だが〈剣技〉を習得した僕と白亜の敵ではなく、一度の被弾もなく倒せた。見た目通り肉は美味で人気があり、火の消えた鶏冠もまた換金素材として価値が高いらしい。


 聖域から近い魔境からは弱い魔物しか生まれないらしい。だから街の周辺で戦っている以上は、強い魔物に遭遇することはほとんどない。


 帰り途中、更に二羽のクリスラビットと遭遇したので倒した。血抜きと内蔵を取るくらいの解体は白亜も覚えたので、分担して済ませる。


 血抜きを待つ間に、〈マイ・ステータス〉を眺める。


『名前:マツダ・カケル

 種族:人間 年齢:15 性別:男

 HP:19/19

 MP:9/24

 筋力:- 器用:- 敏捷:- 知力:- 精神:- 感知:-

 ギフト:〈永遠に変わらない愛(プロミスト・ハート)

 スキル:〈性技〉〈剣技〉〈属性魔術:水〉〈空間魔術〉〈情報魔術〉〈神聖魔術:エルミーユ〉〈剣技指南〉

 魔術:〈エンゼル・ホットライン〉〈ストレージ〉〈エンサイクロペディア〉〈マイ・ステータス〉〈エリア・マップ〉〈ウォッシュ〉〈クリエイト・ウォーター〉〈ウォーター・スピア〉〈ホワイト・ノート〉〈ヒール〉〈ディストーション〉』


『名前:イチジョウ・ハクア

 種族:人間 年齢:15 性別:女

 HP:15/15

 MP:5/20

 筋力:- 器用:- 敏捷:- 知力:- 精神:- 感知:-

 ギフト:〈期待する瞳〉(ウィッシュ・スター)

 スキル:〈属性魔術:水〉〈剣技〉

 魔術:〈ストレージ〉〈マイ・ステータス〉〈ウォッシュ〉〈クリエイト・ウォーター〉〈ウォーター・スピア〉』


 HPとMPは今朝、起きると上昇していた。MPは恐らく魔術スキルを習得したのが原因だろう。もしかしたらしつこく魔法を使ったせいかもしれない。〈ディストーション〉の消費が10と重めなので、もっとMPが増えるといいのだが。


 〈情報魔術〉のレベル1は〈ホワイト・ノート〉という、いわばメモ帳のような魔法だ。大きさは最大MPに依存し、今なら24cm×24cmの無地の四角い白板を生み出せ、24枚の内容を保持しておける。雑貨屋で見た紙は黄みがかったものが12枚で銀貨5枚という高級品だったので、金銭的に考えても便利な魔法だ。この魔法がなければ〈エンゼル・ホットライン〉を一時的にメモ帳代わりにしなければならなかっただろう。スキル習得のために連打したときもかなり嫌がられたから、メモ帳代わりにされるのもきっと嫌がられたはずだ。


 そして〈神聖魔術:エルミーユ〉で手に入った魔法は〈ヒール〉だ。イメージ通りの回復魔法だが、小さな切り傷を完治させる程度の効果しかない。HPなら即座に10点くらい回復するようなので、怪我をする前にHPを回復させるのがいいようだ。


 あとは〈剣技指南〉と、白亜の〈剣技〉が今日の収穫である。


 そこでステータスウィンドウの下端に『SP:1』というボタンが出現しているのに気づいた。知らない機能だ。勝手に増えたのか? 〈エンゼル・ホットライン〉を起動する。


『はい天使でございます』

『おいSPってなんだ。ステータス画面にボタンが増えてるぞ』

『おめでとうございます。それは能力値を増加させることのできるポイントを入手したことを表すものですよ。早速、押していただければお分かりになるかと思います』

『ふうん?』


 じゃポチっとな。


 すると〈マイ・ステータス〉で表示されているいくつかの項目が、明るく点滅しはじめた。各種能力値とHP、MPだ。


『お好きなところに振り分けてください。1点ですので、1箇所ですね』

『どのくらい増えるんだ?』

『能力値ですと1点増加します。HPは3点、MPは1点で、MPの場合は習得している〈なになに魔術〉というスキルひとつにつき1点が更に増加します。つまりお客様がMPを選択する場合は5点、白亜さんなら2点となるわけですね』


 自然と増加したHPとMPのことを思えば、能力値に振り分けるのが正解だろう。しかしどの能力値にするかと言えば、悩ましい。というかどの能力値がどんな場面で有効なのかが分からない。


 なので天使に聞いてみた。結果、


 【筋力】は力の強さを高めるもので、重いものを持ち上げたりすることができるようになる。腕力が強くなるため、単純に剣を振るときの力が強くもなる。

 【器用】は手先を思い通りに動かすもので、細かい作業をするのが上手くなる。剣を扱うのも上手くなるため、受け攻めいずれにも活かせる。

 【敏捷】は身体を速く動かすことができるようになる。剣速も上がるが、それ以上に素早い体捌きが可能になる。回避や移動が上手くなるわけだ。

 【知力】は頭脳の働きを良くする。記憶力が良くなったり、発想力が高まったりするらしい。剣や魔法に限らず万事に活かせる能力値だろう。

 【精神】は心の強さを高めるもので、過度な緊張や恐怖を緩和したりもする。特に魔法の強さと抵抗力が高まるが、平常心で戦えるというのは剣においても役に立つ。

 【感知】は五感の働きを高め、また根拠に依らない第六感をも鍛える。罠の発見や気配を察知しての不意打ち防止など、様々な場面で役に立つ。


 …………あれ。どの能力値も割りと役に立ちそうだぞ?


 迷ったら消去法だ。まず白亜が魔法寄りの成長をしたがりそうなので、僕は剣士寄りの成長をするべきだろう。魔法を多く取得できているけど、MPには限りがある。【精神】は今後のMPの増加具合を見てからでいいだろう。剣に役立つ要素が発想力しかない【知力】も後回し。だいたい僕が頭脳系とか似合わないだろう。


 残るは【筋力】【器用】【敏捷】【感知】だけど、これらはどれも剣士に必要そうな能力値だ。しいて外すなら剣技に直結しない【感知】だろうか。気配を察知するとか剣士らしいけど、剣を扱うこと自体に関わるものではない。


 あとはどういう剣士になりたいかだな。【筋力】ならパワー系、【器用】はテクニカル系、【敏捷】はスピード系と分かり易い。今の剣は短い分、軽い。いずれは剣を買い換えたいけど、今はお金がないから【筋力】は後回しだ。


 剣の技術について優先するなら、やはり【器用】だろう。【敏捷】はどちらかといえば身体を動かす方だ。〈剣技指南〉に良い影響を与えるとするなら、上手く剣が扱えるようになる【器用】が一番だ。


 ……【器用】か。なんか意外なチョイスだな。


 RPGなどのゲームならまず選ばない能力値だ。装備更新や攻撃力を視野に入れての【筋力】が鉄板だったり、回避や行動順を重視して【敏捷】が強かったりすることが多い。【器用】はレベルに応じて強くなった敵に対して、命中が心もとない場合に補うくらいだろう。場合によっては装備で補って放置することもある能力値だ。


 あとはアイテム制作なんかが関わる場合もあるけど、そういう場合は戦闘向きではない制作担当のキャラクターを作るか選ぶかして任せてしまうと思う。いずれは僕もアイテム制作をするような、鍛冶や調合のスキルを入手できるといいかもしれない。白亜が見ててくれれば、それらもグングン上達するはずだし。


 この手の能力値は一点突破が基本。平均的に上げるより得意分野を作って差別化するのが理想だ。この世界はゲームじゃないから、そうとは言い切れないけど。必要になったら他の能力値も補わなければならないかもしれないが、まずは【器用】特化を目指してみよう。


 間違いの無いよう慎重に【器用】の欄を選択する。すると無事に『器用:1』の表示に更新された。


     ◇


 白亜のステータスにもSPが割り振ることができるようなので、教えてあげた。どうやら僕の方で割り振ることも出来そうだったが、さすがに勝手に割り振ったら怒られるだろう。


「白亜。能力値が伸びるSPとやらがあるぞ。〈マイ・ステータス〉で割り振れるはずだ」

「え、そうなんだ。能力値かあ。何がいいかな~」


 早速ステータスを確認して、SPを割り振ろうとする白亜。だが手を止めて、困ったようにこちらを見た。


「えっと。どれがどうなるの?」


 同じ疑問に立ち止まることになる。うん、そうだよね。先に言うべきだったかな。


 先ほど天使に聞いた情報を教えると、白亜は「ううむ」と唸りながら難しい顔で悩み始めた。


「ちなみに僕は【器用】に振ったから。剣が上手くなったと思う」

「うーん。じゃあ私は魔法系だね! 【精神】に振っていい?」

「いいんじゃないか? 今のとこ使える魔法も多くないから、大器晩成になりそうだけど」

「大丈夫。ガンガン使って鍛えるから!」


 本人のやる気があるというのはいいことだ。


 放血し終わったクリスラビットを回収して、街に向かった。

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