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過去の男とめくるめく散文たち

今晩だけ、甘えてもいいですか

作者: 水岡きよみ

きみがあまりにも 薄情な口調で

さよーならーって、言うから

きみがあまりにも うざったそうに

もう嫌いバイバイって、言うから

少し寂しくなったの

この秋の空気の冷たさに

釣られたんじゃないのよ

きみの大人の駆け引きに


甘えても いいですか


だって今晩は あまりにも冷え込むから

寒すぎて 心まで凍えるようで

どれだけ布団を重ねても 眠れそうにないから

冴えてしまうの 頭が?目が?

どっちかなんて 知らないけれど

あなたを考えると落ち着けないの

当分まともに眠れそうにないわ



きみがあまりにも 普段と変わらぬ様子で

ローマの歴史なんか教えるから

きみがあまりにも 真剣な眼差しで

官僚制と在地領主制の違いは何だとか言うから

少し 自信が持てなくなったの

嘗てきみが言ってくれた 可愛いって言葉にも

完全に信じてた訳じゃないのよ

きみが囁いてた甘い愛の罠を


甘えても いいですか


だって本当は 素直になりたいの

自分に自信を持つということを

一度くらい信じてみたいの

自分の可能性を 試してみたいの

そう思うことは いけないことかしら?

きっときみなら 言ったと思うの

したいようにしたらいいって

そう あのときのきみなら

こんな寒い夜に 頭を撫でて 抱き締めて

きっと温めてくれたでしょうね

寒さに震える体も 冷えきって凍った心も

きっと暖かいコーヒーを淹れて

耳許には熱い息を吹き込んで

溶かしきってくれたのでしょう

忘れさせてくれたのでしょう

なにもかも すべて

そんな風に考える私って 馬鹿ね

当分眠れそうにないわ



ひとつ 我が儘言ってもいいですか

本当は 甘えたくなったのは

今日に始まったことじゃなくて

毎日毎日四六時中

ずっとずっと考えてて

頭がおかしくなりそうで

少し寂しいなんて嘘で

少し自信が持てないなんて嘘で

本当は全然自信なんてなかった

だってきみが あまりにも

私のことをこんなに惚れさせたから


きみのせいなんだよ

会いたくて頭が変になって何も手につかないのも

今日が寒くてやたら甘えたになっているのも

きみに拒絶されてることをいつまでも引きづってどうしようもない気持ちになっているのも

私が馬鹿みたいな都合のいい妄想をしてしまっているのも


って言ったら 本物の馬鹿になるから

これ以上はもう言わない

いい子になるから 我が儘言わないから

最後にひとつだけ お願いしてもいいですか


今晩だけ、甘えさせてください

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