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第2話「女性嫌い」


 僕は日を改めて女性嫌いだという綾乃の弟をいつもの教室に呼び出した。もちろん綾乃と結衣と仁にも来てもらった。


「君が頼斗君か」

「ああ。なんだよ。何か。用なのか。啓太さん」


綾乃の弟を見て、思い出したが僕はこいつに会っている。昔、確か少し遊んだことがあった。僕が頼斗君を加えてかくれんぼをして彼が鬼の時にそのまま俺たちは彼を置いて帰った時以来だ。後で綾乃の家では弟がいなくなったということで捜索隊が出て大騒ぎになったらしいが僕は我関せずでゴールデンタイムの探偵アニメをのんきに見ていたことを思い出した。


「こいつ口悪いな」

「和楽。すまんな。こいつは昔から口が悪くてな。私も困っていた所だ」

「まあ。いい。大目に見る。頼斗君。用というのは他ではない。君の女性嫌いを治してやろうと思って呼んだんだよ」

「だ。誰がそんなことを言っているんですか?」

「ん? お前の姉ちゃんだよ」

「そ。そんなことはありませんよ。僕は至って正常です。女性嫌いなどでもありませんよ」

「じゃあ。何でそんなに教室の端っこにいるんだ」


みんなあえて突っ込まなかったが頼斗君は不自然なくらい教室の端っこに位置していた。それなので僕は少々大きな声で喋らないと彼に声が届かないのだ。全く疲れる。


「ぼ。僕はですね。端っこが好きなのですよ。ほら言うじゃないですか。教室の端っこは風水的にとてもいいとかなんとか……」

「……」


非常に苦しい言い訳だったが僕はおろか彼の姉さんである綾乃まで突っ込まなかった。僕は「ほら。いい突っ込みチャンスだ。突っ込めよ」というアイコンタクトを仁に送ったが仁は僕のアイコンタクトを見事にスルーして見せた。全くがっかりだよ。


「おい。コラ。頼斗よ。ネタはあがっているんだ。さっさと白状せんか!」

「啓太さん……。いい加減にしてくださいよ。これ以上僕を侮辱するのなら僕にも考えがありますよ。名誉毀損であなたを訴えますからね。僕にはいつでも法廷に出る準備がある。それだけは忘れないでくださいよ」

「じゃあ。啓太の弟1。お前そこでパズルをしている馬鹿丸出しの女に近づいてみろよ」


話が変な方向に転がりそうな所を仁がうまくアシストしてくれた。さすが僕の親友だ。


「な。何を言っているんですか。言っている意味が分かりませんよ」

「分かった。そういう態度を取るんなら俺も強硬手段に出るしかないな。なあ。啓太」

「ああ。できるなら僕はこういった方法は取りたくは無かったが仕方が無いね」

「な。何をするんだ」

「こうするんだよ! 結衣ちゃーん。綾乃の弟1がねー。結衣ちゃんとお友達になりたいんだってー。だからさー。パズルなんて止めて。彼と遊んでくれるとうれしいなー」

「んー。わかったよー。らいとくーん。わたしとパズルで遊ぼうかー」


色気には乏しいが僕は結衣を使って頼斗君の化けの皮を剥がしにかかった。結衣も生物学上は女性に位置している。結衣が近づけば頼斗も女性嫌いのリアクションを取るはずだ。


「ねー。何でわたしとそんなに距離を取るのー?」

「頼斗君。結衣先輩のスキンシップを拒否するのか? まさかそんなことをする訳ないよな」

「い。いや。あのですね。ちょっと寒気が来ましてですね。少しでも温かい所に移動しようと思っていたんですよ。ほら言うじゃないですか。猫はできるだけ温かい所を探して移動するって」

「……」


誰も突っ込まないが計算通りだ。結衣が頼斗君に近づくと頼斗君は結衣と近づくだけ離れるようになっているらしい。目算だが頼斗君のパーソナルスペースはおよそ半径2m以内のようだ。女性は彼の2m以内には入れないような仕組みになっているようだ。全く難儀な男だ。


「わー。なんか面白ー」

「ゆ。結衣先輩。お願いしますから止めていただけますか?」

「えー。何でー。だったら頼斗君が止まればいいんじゃないー?」


結衣はパズルよりも頼斗君に近づくことが面白いことに気がついたらしく。今はものすごい速さで教室中を追い回していた。僕は昔の外国のアニメのトムなんとかみたいだと思った。

そして、ついに結衣は頼斗君を追い詰めて抱きついた。よし。よくやったぞ。結衣。結衣と知り合ってから10数年になるが初めて結衣が居てよかったと思った。


「つーかまえた」

「止めてください! 止めて……! ……止めろぉぉぉ!!」

「きゃああ!!」


頼斗君は急に態度を急変させて結衣を突き飛ばした。


「おい。僕の結衣に何をする気だ」


僕は思わず頼斗君を掴み上げた。お前タダで済むと思うなよ。結衣はな。僕の23番目の嫁なんだぞ。ふざけるな。お前はデコピンの刑に処すことにする。僕はこう見えてもデコピンの強さは誰にも負けないんだからな。


「ふふふ。啓太さんが悪いんですからね……」


頼斗君は不気味な笑いを洩らすとどこからか木刀を取り出した。こいつ木刀をどこに隠していやがった。物理的に不可能すぎる。


「止めろ! 頼斗。素人に剣を向けるなんて剣道三段が泣くぞ」

「ふふふ。僕は何も悪くない。悪いのはいつも他のみんななんだ」

「駄目だ。聞こえちゃいないぞ」

「死ねー。○△■&ふぁおもえうおあrの」


頼斗君は僕に竹刀を振りあげて僕の頭をカチ割ろうとしている。これはまずい直撃コースだ。さすがに竹刀を頭に食らったら僕の得意な受け身でもどうにもならない。どうする。どうする。どうする。どうにもならない。死にそうになる時、周りが止まって見えるのは本当なんだな。全ての物がゆっくりと見える。仁、結衣、綾乃そして今はここにはいないけどひなた。ごめん。僕は君を救ってやることができなさそうだ。僕は目を瞑ってひなたに詫びた。

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