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第1話「あの子に克服できるのなら私にも克服できるんじゃないかしら作戦再び」


 前回の『あの子に克服できるのなら私にも克服できるんじゃないかしら作戦』が成功?に終わりひなたも前よりも元気になった。幼馴染み限定だが周りの人間と交流を持つようになった。再び俺たち幼馴染みの絆も深まり、全てがいい方向に進んでいた。

 深口ひなたは『音恐怖症』だ。音を異常に怖がる。そのため常にノイズキャンセリングヘッドホンの装着していなければならないのだ。そうしていないとひなたは具合が悪くなって日常生活が満足におくれない。最近、ひなたは一時期よりは元気を取り戻していた。ただひなたの音恐怖症が克服できた訳では無いし根本的な解決にはなっていなかった。ひなたは前よりも笑うようにはなったし元気にはなったが僕はまだ満足していなかった。そこで再び『あの子に克服できるのなら私にも克服できるんじゃないかしら作戦』を実行に移すことにした。

 ひなたを抜かした幼馴染みの三人、中里仁と手倉森結衣と沢木綾乃を放課後、空き教室に集めた。


「啓太。なんだ。急に」

「お前ら。気がつかないのか!」

「なんだ。啓太。急に」

「全く解決になっていないんだよ! 仁。どうしてくれるんだ!」


僕は仁を掴んで揺さぶる。


「啓太。全く……は。話が見えないぞ」

「止めろ。貴様ら!」

「「ぐは!」」


僕達は綾乃のキックで後頭部にそれぞれに食らった。おかげで僕は冷静さを取り戻した。


「全く話が分からん。和楽。順を追って説明しろ」

「そうだよー。いきなり訳が分からないよー」


綾乃は僕たちを蹴った時に乱れた服装を直して椅子に座った。結衣は最近のお気に入りの携帯型のパズルに夢中だ。


「僕はひなたに元気に過ごして欲しいんだよ!」

「またひなたか……」

「和楽。ひなたは前よりも元気になったと思うぞ」

「確かにそうなのかも知れない。でも全く根本的な解決にはなっていないんだよ」

「啓太。お前。まさか……。ひなたの音恐怖症を治したいとか思っているんじゃないだろうな」

「思っているよ。それの何が悪い。前にも言ったが俺はひなたには普通の女の子として生活して欲しいんだよ!」

「和楽。言っておくが私たちは医者でも何でも無いのだぞ。私たちにひなたの恐怖症をどうにかできる訳がないだろう」

「そうだ。啓太。お前の気持ちは分かるがこればっかりは仕方がないだろ」

「お前らはそうやって諦めるのか! そうやって全て諦めてしまうのかよ!!」


僕は幼馴染みのあまりの不甲斐なさのあまり思わず机を思い切り両手で叩いた。こいつらがこんなやつらだとは思わなかったよ。


「僕は諦めないぞ。ひなたの恐怖症を治して、仁、綾乃、結衣。お前たちの恐怖症も治してみせる。もちろん僕のタイ人恐怖症もだ。お前たちだって直せるものなら治したいだろ。恐怖症」

「ま。まあそうだけどよ」

「だろ! だからもう一度やろうと思うんだ。『あの子に克服できるのなら私にも克服できるんじゃないかしら作戦』を」

「またあれをやるのか……」

「ああ。わたしちょっとー。用事思いだしたー」

「まあ。待てよ。今回は僕たちがやるわけじゃない」


僕は教室から出て行く結衣を掴んで止めた。


「俺たちじゃないのか。じゃあ誰の恐怖症を克服するんだ」

「いや。それはまだ考えていない。誰か良さそうな素材はいないか知らないか?」

「誰か他の人間の恐怖症を克服させるっていうのか」

「そうだ。それでその人間の恐怖症が成功したら同じような手順でひなたの恐怖症も克服させるんだ。どうだ! いい考えだろ」

「……」

「……」

「……」

「お……おい。みんな何か言ってくれよ」

「いや。なんていうか」


仁が珍しく口篭っている。言いたいことがあるならはっきりと言って欲しい。他の二人も同じような感じだ。いったいどういうことだろうか。


「なんだ?」

「いや。いい」

「まあ。いい誰か知らないか。恐怖症を持っているやつ」

「心当たりがないわけではないが……しかしどうしたものか」


綾乃が声をあげた。意外な所からの声だったので僕は少々驚いた。


「誰? 教えてくれ」

「あまり言いたくないのだが。まあそうだな。私の弟なのだが」

「弟? 綾乃には弟がいるのか?」

「頼斗君のことー」

「そうだ。私の弟はなぜか大の女性恐怖症でな。私も何とかしないといけないとは思っているのだがなかなかな」

「なるほど。分かった。じゃあ明日にでも早速ここに連れてきてくれ。悪いようにはしないから」

「ものすごく不安なのは私だけだろうか……」

「いや。俺もものすごく不安だから安心しろ」

「よし。待っていろよ。ひなた。きっとお前の恐怖症は俺が治して見せるからな」


僕は拳を握って眩しいくらいの夕日に誓った。きっとひなたはこの僕が救って見せる。


「それにしてもこいつはなんでこんなにひなたにご執心なんだかね」

「綾乃さん。愛ですよ。愛」

「ふ……。歪んだ。愛だな」


 他の幼馴染みの不安を他所に僕は燃えていた。なぜか今の僕は恐怖症を治せそうな気がしてしかたがなかった。必ず、綾乃の弟の恐怖症を治して見せる。そして、必ずひなたの「音恐怖症」も治して見せる。そしたらひなたと昔のように笑い合って生活できるはずだ。




ご拝読ありがとうございます。

前に投稿していた『フォビアの五人』の続きを書いてみました。

よろしくお願いします。

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