10、女子部員だらけのお泊まり
「何でアンタ達まで付いて来てんだよーっ!
これじゃあ、チャリンコ暴走族じゃねーか!」
「いいだろ!まだ、話し足らんし
このままじゃ気になって寝られんよ。」
「イイけど、たいがいで帰れよ。
飯は食わさんぞ!
男共は当然だが、
女子も、もちろん泊まるのはヨッシーまでだ。
そこをわきまえろよ!」
「いや…冷てーだろ!
家まで着いて行って飯抜きなんて…
なっ、頼む!七草様…」
「アンタ、本当に意地汚いね!
部長の前で、恥ずかしくないのかい!」
「いえ、私からも、お願いします。
部員は皆、一心同体です。
食を分け合う事で絆も深まるんです。」
「もう、部長まで……わかったよ!
今回、だけだぞ!
母ちゃんにメールだ。追加を、頼まんと…」
「やったぁーーっ!」
「ただいま!」
「おかえりなさい。
園芸部みんな揃い踏みね。」
「ああ、男どもまで、付いて来やがった。
コイツらは飯くったら、追い出すから…」
「追い出すって、それは、ないだろ…」
「じゃあ、追い返す!」
「何も変わっとらんだろ!」
「まぁ、まぁ、玄関先で……
まずは、お母様に、ご挨拶ですよ。
今夜は大勢で押しかけて申し訳ありません。
更に食事までご馳走になると言う事で
大変恐縮しております。
お母様のお料理、楽しみにして参りました。
どうぞ、よろしくお願い致します。」
「ハイ、ハイ!
さすが部長さんね!
立派な挨拶、承りました。
まっ、とにかく、みんな、上がって…上がって…
食事、沢山、用意してあるから…
いっぱい食べて!
ねっ、育ち盛りなんだから!
ヨッシー!…は、いいか…
いつも通りだ。いっぱい食べなよ!」
「モーッ!ママ、私は…」
「言わんでも、コイツは腹一杯食うさ!
部長は胸いっぱい食うけどな。
この二人は栄養が全部、チチに集中しておる!」
「ナクサ!」
「七草さん!」
「ハハハッ!
七草!失礼な事言わないの!
…って、お料理、冷めちゃうから
とにかく上がって…」
部員がゾロゾロと玄関を上がった。
彼岸花美咲も最後尾についてリビングに向かった。
「狭くてごめんなさいね。
おばあちゃんの家は結構、広かったけど
我慢して下さいね。」
春野一家はお婆ちゃんが亡くなってから
お婆ちゃんの住んでいた昭和の木造住宅に
マンション住まいから居を移していたが、そこは
先の大地震で耐震構造の補強の鉄骨を残して
全倒壊していた。
ここはその跡地に新築した家だ。
今や、お父ちゃんの肩には、長期住宅ローンと言う
責務が重くのしかかっている。
先に席に着いていたそのお父ちゃんが
笑顔で、みんなを出迎えてくれた。
部員がキッチンとリビングに分かれて座ると
早速、部長の挨拶がまた、始まった。
「お父様、こんばんは…
お初にお目にかかります。
今夜は大勢で押しかけて申し訳ありません…」
「まぁまぁ、かたい挨拶は抜きにして…
早速、頂く事にしよう!
皆さん、遠慮しないで、たっくさん
召し上がって下さい!
さあ、どうぞ!」
部長は挨拶の出鼻をくじかれて少し戸惑ったが
七草はそんな事、意にも介さず
真っ先に箸でカラアゲをつかんだ。
するとヨッシーも遠慮せずカラアゲに食らいついた。
それが、合図のように
みんな一斉に箸を伸ばした。
「うんめーっ!」
「うまーーい!」
「おいしーっ!」
「凄く、美味しいです!」
みんなニコニコ顔でカラアゲを頬張った。
「うっ、うっ…」
美咲がカラアゲを食べながら泣きだした。
「美咲!どうした?」
「おっ、お母さんのカラアゲの味と…同じ…です。」
「そっか…そこは、同じなんだ…
大丈夫!また、食えるさ!
お母ちゃんのカラアゲ!」
「ハイッ!」
泣き笑いしながら千晴は
カラアゲをゴクリと飲み込んだ。
「あーっ!
食った、食った!
後は、寝るだけかーっ!
…って、これ、狭すぎるだろ!
ギュウギュウ詰めじゃないか!
だからヨッシーまでって言ったんだよ!
初めに言ったよなぁ
こーなるから言ったんだよ。
変な感性持ち合わせた人達ばかりだから
直ぐに首突っ込んでくるんだ。
面白がってるのがアリアリなんだよ。」
部長が七草のおかーちゃんを
まんまと垂らし混んで
お泊まりの手はずを整えてしまった。
「だって、お母様から泊まってらっしゃい。
…って、おっしゃってくださったのですよ。
こちらは、お言葉に甘えただけです。」
「甘え過ぎなんだよ!社交辞令だろうがっ!
風呂まで入って!
しかも、男共は飯を三杯もおかわりしおって
アレじゃあ、食い逃げだ。
不届き千万!」
「まぁ、いいじゃん、合宿みたいで
また、今年もやるだろ!
それに、こうやってワイワイやった方が
美咲さんの気もまぎれるって、もんだろ!」
ヨッシーの言葉に美咲も笑顔で応えた。
「そうですね。本当に皆さん!
ありがとうございます。」
「…で、どうするかね。明日から...
2.3日なら、ここに居てもいいけど
さすがにそれを過ぎると説明のしようがないよ。
そうなると、警察とか行政機関に
お任せって事になりかねんな。
ウチの親に異世界を現実として
受け入れる包容力はないよ。」
七草の話にヨッシーが答えた。
「それは、みんな同じだろ。
私達くらいのもんだ。
こんな途方もない事を受け入れてるのは...」
「そうだな。しかし、こうしていても
すぐには、解決の方法なんて、浮かばんだろう。
今夜はもう寝るとしようか。」
「ええぇ!七草さん!
折角、こうしてお泊りしているのに
もっと、お話しましょうよ。」
部長の「面白い事しよう!」が
始まったが七草は乗り気にならなかった。
「勝手にやってくれ!私は寝るよ!
そうだ!短亀ちゃん。
あの例のマッサージはやめとけよ。
みんな、おかしくなっちまうんだからな。」
「えっ!七草さんに
取って置きのマッサージがあるんですよ!」
短亀ちゃんは残念そうに七草の気を引こうとした。
それに七草も少し興味をそそられた。
「ええっ!何だ、それって!」
「胸を大きくするマッサージです!」
途端に七草は冷めた表情をした。
「やめとくよ!」
「ええ一っ!どうしてですかぁ?」
短亀ちゃんは焦って叫んだ。
それに対して七草が落ち着き払って応えた。
「オッパイ揉み揉みされて
醜態晒したくねーよ!
ちっちゃくても私のオッパイちゃんは
感度抜群なんだよ。
大きくなる前に変な気分になるに決まってるよ。
そう言う事だから
じゃあ、私は寝るからな!おやすみ!」
七草は布団をかぶって床に着いた。
「ええぇ...七草せんぱーい!」
短亀ちゃんはまだ残念そうだったが
矛先を素早く替えた。
「しょうがない。じゃあ、ヨッシー先輩!」
「ワーッ!私もいーよ!
それこそ醜態しかねーよ!」
「じゃあ、私が...」
部長は相変わらずノリノリだ。
「部長は、それ以上デカくなってどうすんだ!」
ヨッシーが、ツッコンだ!
短亀ちゃんも、それには同意した。
「はい!現状で充分だと思います。」
「あら、そうかしら...
残念だわ!」
部長は本当に残念そうだ。
どうやら他の何かを期待していたようだ。
そして短亀ちゃんは、まだ諦めきれてなかった。
「あっ!そうだ!美咲さん!どうですか?
私のスペシャルマッサージ!」
「えっ⁉︎ ハハハッ...
さすがに、今の流れで、お受けする訳には...」
美咲は突然の事に驚いたが
丁重にお断りしようとした。
そこへ、七草が助け船を出した。
「も一っ!うるせーから、おとなしく寝ろ!
明日も学校だぞ!
そんな、はしゃいでる場合か大問題抱えて!」
「そうでした。
じゃあ、皆さん、おやすみしましょうか!」
部長が応えて、それに、みんなしたがった。
「はーい!おやすみなさーい。」
「おやすみ。」
七草は眠りにつきながら思案した。
色々、大変だよ。こりゃ!
解決できる問題かね。
やっぱりチョン君しかいないか…
何とかできるとしたら…
アイツの天才頭脳なら
何か糸口が見つけられるかも....
ああ、それにしても眠いなぁ...おやすみだ...
「ハア~ッ。よく寝た。
アレッ!みんな、もう起きたのか!」
七草は洗面所に向かった。
そしてリビングを通り過ぎようとした。
「うーん。誰もおらんのか?
先に、出て行ったのか?自状な奴らだな。
声くらい掛けてくれても良さそうなもんだ。
厚かましく人の家に泊まったくせに
一宿一飯の恩義と言うものを知らんのか?
父ちゃんと母ちゃんも今日は早出かな?
まぁ、いいか、ボチボチ、出かけよう!」
七草は学校が近づくにつれ
段々落ち着かなくなっていた。
そして校門を通り過ぎた時
一気に、その想いが確言へと変わった。
「オイオイ、まさか!そう言う事か!!
制服は同じだが
顔見りゃ、知らんヤツばかりじゃないか!
今度は私の番か!
こりゃ、完全に美咲と私が
入れ替わったって事じゃないのか?
…と言う事は私が来ちまったのか!
「異世界」って、ヤツによ一っ!」
続く




