6.心の影に潜む罪
目の前にひょろっとしたつり目の男が気色の悪いにやけ顔で近づいてくる。
なんだコイツ……
「これはこれは、ゲビタ・タンディー様偶然ですね、私共はちょっと教会に用があるので失礼させていただきます」
と、横から師匠が軽い挨拶をすると早く離れようとしている気も隠さずすっと歩こうとするが、ゲビタという男は手を伸ばし道を防いできて
「良ければこの後おすすめのランチを提供している店があるのでご一緒しませんか?」
と言いながら師匠の手を取る
このあと用があるって言っているのに話を聞かないやつだな……
しかしなんだろうこいつの顔?なんだか見覚えがある気が…いや、そもそもこの世界で人と会うのは今日が始めてだ。あったことなんてあるわけもないし
と、頭をなやませている間にも
手を取られよほど嫌なのだろう、すごい顔をしている
「いえいえ、先程も申しましたようにこの後予定があるので(話を聞けこの変態!)」
「そうおっしゃらず、教会に用があるなら私の従者に伝えさせますよ」
「そんな、わざわざお手を煩わせる訳には行きませんのでまたご縁があれば(行かないって言ってんでしょ!早くこの手を話せこのバカ!)」
なんだか師匠の心の声が聞こえる気がする
この師匠の態度にめげずにアタックするその精神はすごいなと思う
するとふとゲビタは俺の存在に気づきちらりと視線を受ける
「もしかしてそちらの子供は迷子かなにかですか?あぁそれで教会に!なんてお優しい人だその子なら私の方で保護しますので」
そう言いながら手をこちらに伸ばしてくるのでなんとなく思いっきりその手をはたいてやった。
パンッと手を弾かれた予想していなかったであろう行動に一瞬呆気にとられるも、すぐに顔を赤くし
「てめぇ!このガキ!」と怒りをあらわにしようとしたが師匠の手前そのような姿は見せたくないのだろう即座に切りかえる
「躾がなっていないようで良ければお預かりしても?」
と、あくまで穏便に話すがそれを見ていた師匠は俺を見てニヤリと笑うと
あ、なんか嫌な予感……
「ゲビタ様?この子は私の可愛い子供でしてよ。」
俺を後ろから抱き抱え頬擦りしてくる。
ちょっ!近い近い!
師匠とはいえ見た目は絶世の美女なのだ、さすがに恥ずかしい
しかしそれどころじゃない者もおりゲビタの顔は様々な色に変化したと思ったら後ろに倒れかけていた。
あ、気絶したか?と心配したが無用だったみたいで、ギリギリのところで踏みとどまるとこちらを指さし
「こ、子供!?ははは、そんな冗談には騙されませんよ。はは以前渡した手紙の件考えておいてくださいね。」
と言うやいなや横を通りすぎ「冗談だろう、ははは、面白いなぁ」とボソボソ言いながら足早に去っていった。その後ろを着いていくように人だかりもなくなっていった。
「なんなんですか?あいつ」
ある程度察しているが改めて聞くと
「この街の領主の次男坊よ。大して取り柄もないくせにプライドばっか高いボンクラでこの前私に第二夫人になれとかふざけた手紙を送ってきたのよ」
まぁ名前に街の名前が入っている時点でそうだろうなとは思っていたが
「師匠を第二夫人ですか?!師匠を奥さんになんて……
やっぱり正気じゃないですね、あいつ」
そう言いながら去っていった方を振り返りながらそう呟くと、思いっきり頭を鷲掴みにされ骨の軋む音がしだした。
いだだたたたたた!
「あぁ!師匠なら第一夫人は当然ですよね!というか!師匠を夫人なんておこがましいですよね!!」
そこまで言うとさすがに満足したのか手を離してくれたので、頭をさすりながら
「実際なんで何もしないんですか?あんなのぶっ飛ばせば終わりじゃないですか」
師匠はポリポリと頬をかきながら
「いやー、あいつ以外この街の領主家はいいヤツらだしこの街も住みやすくなっているからあいつは無視しとけばいいかなって」
と乾いた笑いをしながら遠くを見つめる
まぁ、あんなのいちいち相手にして引っ越すより無視しつづけておこうということなんだろう。
美人も大変だな。
そのまま師匠に手を引かれながら教会の中にようやく入ることが出来た。
すぐに受付のようなところがありシスターがいたのでギルドカードを見せて中に入れてもらう。
中は白を基調に作られており様々なところに天使や神様であろう石像がおかれている。
「なんだか不思議な空間ですね。」
「実際神との交流の場だからな、神の気も混じってヒリついた空気感はしているな」
この世界は神が人を立てて行動指針を託したりそのまま降りてきて信託を託したりするらしい。
この空気感をつくりあげている存在だ、あまり会いたくは無いな……
そうして一番奥の部屋にたどり着くとそこに翼が生え両腕の欠けた石像があり今まであったどの石像よりも大きかった。
妙にその石像からはただならぬ雰囲気を感じる気がする。
そしてその前には街に入った時に魔力を通したような水晶、あれより二回りほど大きいものが魔法陣の書かれた床の中央に置かれている。
魔法の勉強をしているとはいえまだまだ魔法陣までは手が回っていないのが現状だ。しかし少しくらいはわかるので見ていると、何となく完成しきっていないように見えた、のぞきこんでいると
そう考えているのがわかったのか
「あの魔法陣はね特殊な水晶と組み合わさることで鑑定の効果を発揮するのよ」
そう指をさしながら教えてくれる、成程、水晶あってこその魔法陣なのか。
「鑑定の結果はすぐにわかるんでしたっけ?」
「ギルドカードとシステムは同じだからなあの水晶に魔力を注げば文字が浮かんでくる。」
遂に適性属性と固有能力がやっとわかるのか、特に固有能力は楽しみだ!
自分だけの能力か、師匠みたいに便利そうなのがいいな
「よしそれじゃあ早速確認しよう、まずは石像の前に行き膝ついて神に挨拶をすること」
そう言って石像の前で片膝をつき
「親愛なる神様、日々は幸福に感謝申し上げます。まぁ、こんな感じだな同じようにやってみろ」
振り返り戻ってくるのでそれと入れ違うように石像の前に行き膝をついて
「親愛なる神様、日々の幸福に感謝申し上げます」
ジッーーージジジジッーーーーーーー
同じように言葉を告げると、頭の中に酷いノイズがはしった。驚き師匠の方を振り返るとまっすぐこちらを見つめている。
今のは……気のせいか……?
「そのまま水晶に手を置いて魔力を流せ」
ノイズのことは気になったが言われた通り水晶のところに行き魔力を流す、すると空中に文字が浮かび上がってきた
適セイ 豌エス 髣◼️呪 莠コ谿コ縺
蜻ェ縺
真ゴ◾︎茮ノ 《┈┈┈》 白
謨代∴縺ェ縺
なんだこれ……
すごい文字化けしてる
「なんだこれは!?こんな文字が浮かんでくるなんて聞いたことがないぞ?」
後ろで師匠がなにか言っているが少年はそれどころではなかった
文字化けでなんと読むのか分からない文字だらけだがはっきりと、とある文字が見えていたから。
見逃すわけのない文字が少年の目に映っていた。
この世界には漢字なんて存在しないはずなのに……
わかっていた……
目を背けていたのだ…………
水魔法も光魔法も使えない時点で頭をよぎってはいた
最終的に殺してしまった要因の冷たい水、そしてまるで君のためにあったかのような光属性
俺に使えるわけがなかったんだ
使っていいわけないんだ…………
だけど考えないようにしていた
真白…………
どうやら世界の神々は罪人を許してはくれないらしい
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