5.二階級特進しました
しまったな、久々の実戦で焦ってしまった。
蹴りのタイミングが少し遅れてしまった、そのせいもあって男は即座に首を回して衝撃を吸収していた。
思った以上にこの男はやるようだ。
それに今の蹴りを受け顔つきが変わった、甘く見ていたのを考え直したのだろう。
さすがに剣は抜いていないが最初とはうってかわりしっかりと拳を構えている
おまけにここが建物の中というのもあって下手に魔法が使えない。やりすぎるとこの建物ごと壊してしまいそうだ。
さてどうしたものかと構え直す
「さっきまでのような奇襲はもう通用しねぇぞ、少しは認めるがその程度じゃ魔獣に殺されるだけだ。とっととお家に帰んな」
「こちらにも事情があるのでそうはいかない」
そう言って魔法で閃光玉を出し相手の目を潰す
さすがにまだこんな子供のからだでは少しの補助程度ではこの男の筋力には敵わない
だったらもっと筋力を魔法で底上げし一気に決める!
男は急な光に目をやられている今ならいける、そうして男の腹に拳を叩き込むと、男の体は衝撃に耐えられず勢いよく建物の扉を壊しながら外に飛んだ。
しまった、やりすぎた……
さすがに死んではないよな?
土煙がたっていてよく見えないが殺すほどの威力じゃなかったはず……
先程より少し多い程度の魔力を込めたつもりが思ったより多かったらしい。
扉の外から土煙が上がっている。
周りで観戦していた人達も何があったのか分からない感じでぽかんとした顔をして男が飛んでいった方を見ている。
これは騒ぎになる前に終わらせて早めに出よう……
またなにか騒ぎが起きる前に出ようと考えたままに受付に戻り
「お姉さん、ギルドカード作れますか?」
誠心誠意笑顔でそう言うと受付嬢はさーっと顔を青くした。
そりゃ、小さい子供かいきなりガタイのいい男をドアごと吹き飛ばして何事も無かったように催促してきたら怖いよな。
すると、受付嬢の後ろの方からさっきの男に負けないくらいガタイのいい男が現れる
この世界の男はみんなでかいのか?
いや、門番の人は鎧を着ていて分からなかったがここまで大きくはなかったはず
「なんの音だ?とんでもない音がしたが」
そう言いながら扉のない入口を見て驚きながらも周りの人達の視線から犯人を見つけたと言わんばかりの表情で俺を見つける。
そんな目で見られても困る。俺は絡まれたから対処しただけだ、どっちかと言えば被害者側だ。
「ぼうず、こりゃいったい……」
大男が何かを言おうとした途端
「やれやれ、もはや通過儀礼だな」
そう言いながら先程俺がぶっ飛ばした男を引きずりながら入口から師匠が入ってきた。
あ、絶対この人こうなるってわかってたな………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
師匠の登場により周りの視線は俺から一気に剥がされることとなった。
「ツクヨ様だ」「初めて見た」
ヒソヒソと色々聞こえてくる。
門番が知ってるくらいだ冒険者の間でも有名なんだろう。
今度何したか詳しく聞いてみるのもいいかもしれない
「久しいなギルドマスター、どうだ?うちの弟子は冒険者になれそうか?」
と、先程出てきた大柄の男に向かって挨拶をする。
ギルドマスターなのか、通りで大柄なわけだ
「いや、どうも何も俺は見てないから知らんのだが」
横にいる受付嬢をちらっと見ると彼女は青ざめた顔で震えながらコクコクと首を勢いよく縦に振る。
そのリアクションに満足言ったのか師匠は嬉しそうに
する。
「そうかそうか、なら早速カードを作ってくれ代金はこれだ」
そういいながら受付嬢に銀貨を渡していると、ギルドマスターと呼ばれた男は
「ちょっと待ってください、最初からあんたの弟子だと伝えてくれてればこんな騒ぎ起きなかったんじゃないですか?」
もっともなことを言う。それに関しては俺も同意見だ。そう思い師匠の方を見ると
「それだとこいつひとりで依頼を完了したりしても信じられんだろうし、そもそもひとりで受けれるかも怪しいからな」
実力を見せつけたというわけか……
まぁ師匠なりに考えはあったんだろうけど付き合わされた方はたまったもんじゃない。
それはギルドマスターも同じようではぁと大きなため息を着く
「わかりました。とりあえずその手に持ってる男は離してやってください、それと坊主その男に勝ったんだな?」
床で伸びてる男に指をさしながら確認してくるので頷く。
「わかった、じゃあDランクだ。本来ならFから始める所だがそうしよう物なら黙ってなさそうな奴がいるからな」
そう言ってげんなりとした表情で俺の後ろを見ると師匠が満面の笑みを浮かべる。
おぉ、二階級特進だ。前世で死んだからかな?
そんなわけは無いのだか実際に死んだあと二階級特進したのはきっと俺だけだろう。
もし俺以外にも転生者がいたら分からないけど。
「わかってるじゃないか、助かるよ。これはドアの修理代と迷惑料として取っといてくれ」
そう言いながら巾着袋をギルドマスターに手渡す。
しかしギルドマスターの顔は疲れ切っている
「助かるよ、そういえば今日は依頼受けていかないのか?」
「しばらく休業だ、一時したらこいつが受けに来るからよろしく頼むよ」
そう言いながら師匠は俺の頭に手を置く
「そうかい、じゃああとは任せたぞカリン」
そう言って先程の受付嬢の肩を叩くとギルドマスターは奥の方に引っ込んでしまった。
なんだか色々と申し訳ないな……
受付嬢もある程度落ち着いたのか血の気は戻っておりせっせと作業をしており五分ほど経つと終わったのか、カウンター越しにカードを渡してきた。
「そのカードにご自身の魔力を流していただければ登録が完了されます」
と教えてくれたので流すと名前、ランク、職業適性属性など様々な欄があるがランクと職業のところ以外は空白になっていた。
「ギルドマスーよりDランクにしろとの事なのでそちらにそのように記入はされてます。職業は魔法使いと仰っていたのでそれで間違いないでしょうか?」
丁寧に聞かれ確認し間違いないので頷く。
どっちかといえば得意なのは近接だけどそれも魔力を使って筋力を強化しているので魔法使いでも間違いはないはず。
「それではこれで完了です。このままなにか依頼お受けしますか?」
聞かれるがこの後は教会に行って街を回る予定なので依頼は受けれないことを伝える
「分かりました、それでは次回よろしくお願いします」
そして俺たちはお礼もそこそこに冒険者ギルドを出た。
あまり長くいても面倒が起こりそうな予感がしたので
そうしてまた師匠と並び街を歩きながら問い詰める。
「あぁなるって師匠分かっていましたよね?教えてくれても良くないですか?」
「あれはもう魔人にとっては必ず通る道だからね。私も通った道だ、ちゃんとやれたようで良かったよ」
と軽く言う。これ以上何か言っても無駄だと判断し諦めて話題を変える
「この後は予定通り教会に行くんですか?」
「そうだな教会はすぐそこにあるからな、適正と《ギフト》が分かったら街を見回ろう」
教会も買い物も楽しみだ。
それから十分ほど歩いたところで大きな白い建物が見えてきた。
だが建物の前には少し人だかりができていた。
「あの人だかりはなんでしょう?」
「なんだろうな、有名な司祭でも来ているのかもな」
そう話しながら人だかりに近づくと急に「ゲッ」と師匠の方から声がし人だかりの奥から一人ひょろっとしたつり目の男が嬉しそうにこちらにきた
男が通ると群がっていた人達は道を開ける。
「おや、こんなところで会えるとは運命的ですね。もしかして私に逢いに来てくれたのですか?」
そう言いながらにやけヅラで手を揉みながら前に出てくる男
なんだコイツ……
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