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魔の増す間に  作者: 負けうさぎ
冒険者、はじめました

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50/50

48.???視点

なんで俺はこんな目にあってるんだ。

あの事件さえなければ俺は今でも楽しく過ごせていたのに。

ただ思い返せば我ながら馬鹿なことをしたとは思っている、あれは人間じゃない。

思い返しただけで体が震えてくる。



最初に絡んだのは完全な八つ当たりだった、あの日俺はなかなかランクが上がらない鬱憤を晴らすために冒険者同士で金を賭けてゲームしていた。

いつもならするはずない大負けをしていたこともありイラついていた。

そんな時に冒険者ギルドには似つかわしくない小さいガキが入ってきた、依頼か?と思い耳を済ませて聞いてみれば冒険者になるからカードを作ってくれと言い出した。

なんの冗談だと思った、たまにどっかの村の大人が市民カードのために冒険者になりカードを作るというのは聞いたこともあるしなんなら見た事だってあった。

いつもであれば無視していたはずなのにイラついて絡んでしまった。


いやガキが冒険者を舐めてると感じた俺はきっと賭けがなくても絡んでいたかもしれないが、俺は直ぐにガキの後ろに行って辞めるように言った。

俺はこの街の冒険者の中では腕が立つ方だ、基本的に俺に文句を言うやつはいない。

だからか分からないが俺がガキにそう絡んでも止めるヤツはいない。

ガキも怯えてすぐ引下がるだろうと思っていたんだがそいつは生意気なことに俺を無視して受付嬢と話し出す。


無視してんじゃねぇ!


もう一度脅すように言えば受付嬢に俺のことを聞くとなんと質が悪いとか言い出した。


このガキ、完全に舐めてるな


ガキの態度にイラつきが収まらない、するとそのガキは俺と戦って黙らせると言ってきた。

思わず笑ってしまった、こんなチビが俺に敵うと思っているのか?

俺の半分しかなさそうな身長に白いローブから度々見える手足は女かと思うほど細く白い


しかしそのガキはずっとつまらなさそうな顔をして早くしろと言う。

その気性は確かに冒険者の素質はあるのかもしれないな、ただお前は俺を怒らせた。

もう今日のことがトラウマになって二度と冒険者ギルドには近づけねぇだろうがな。


周りの冒険者が見てる以上やりすぎにも注意しなきゃな、俺の印象が悪くなる。


俺が油断していたせいか一瞬ガキの姿が目の前から消え嫌な予感がし体の前を防ぐとやたらと重たい蹴りが飛んできた。


今のはなんだ!?


驚いているとガキも少し驚いた表情をしている、こいつ見た目によらず重たい攻撃してくるな。

先ほどまでの自信がどこから来るのかと思ったがどうやら先頭を誰かに習っているのは確かだな。


この攻撃は確かに無防備に喰らえばダメージになるだろうが魔獣をしとめ切れるほどでも俺を倒せるほどでもないな。

確かに子供にしてはめちゃくちゃな攻撃力だ、喧嘩で負けることは無いだろう、それで自信がついたんだな。

俺は今度はしっかりと構える。

油断さえしなければ今のも当たることは無かったはずだ。

俺は今の攻撃なんかきいていないことをガキに伝え絶望を与えてやった。しかしガキは少し体制を低くしたかと思うとまた真正面から向かってきた。


バカが!


俺はタイミングを合わせガキの顔面に拳を叩きつけようとしたが間に合わなかった。

急にガキのスピードがさっきの倍以上早くなったのだ。この速さはなんだと思ったのも束の間俺は腹に来た衝撃と共に意識を失った。


目を覚ますと俺は自分の家のベットで寝ていた。小さいながらも俺のマイホームだ。

最初に家の代金の半分を払い今はもう半分を定期的に少しずつ支払っている。

変な夢を見たなと思いながら体を起こすと腹にとんでもない痛みを感じる。

急いで服をめくり腹を見ると青色を通り越してもはや黒に近い紫になっていた。

夢じゃなかった……?


色が変わっていた場所は夢の中でガキに最後に蹴られた場所と同じた。動こうにも腹に痛みが走り少なくとも今日は動くことは出来なさそうだ。

再びベットに寝転ぶと部屋のドアが開く。


「起きたのか?」

「なんでおめぇがここに!?」


扉を開いて入ってきたのはガキに絡む前にゲームをしていた冒険者のひとりでこの街では友人と分類出来るやつだった。


「お前があのちびっ子に蹴り飛ばされて意識を失ったから家の場所を知ってる俺が連れ返させられたんだよ」


こいつとは何回か飲みにも行ったしその時家を買ったことを自慢したため一度見せたことがあるからその時のことを覚えているんだろう。


「って、あれは夢じゃねぇのか?」

「あー、夢みたいなことではあったが現実だ」


つまり俺がガキに負けた?

イライラしてくる、完全に油断していた。所詮ガキだと思っていたが何か隠し玉を用意していたのか。


「じゃあ俺は帰るぜ、そうだ、冒険者ギルドが目が覚めて動けるようになったら来いだってよ。それとこれ薬だ。ちゃんと塗れよ」


そう言って部屋を出ようとしながら俺に薬の入った容器を投げてくるのでそれを受け取ろうと体を伸ばせば腹に痛みが走る。


「くそ、投げんじゃねぇよ」


もう部屋を出ていったアイツには聞こえやしないだろうがつい口からそう文句がこぼれてしまう。

あいつは気の利く良い奴だがいい加減なところもある。憎めないやつというのはああいうやつなんだろうな。


俺はその日と次の日丸一日はベットの上で過ごすこととなった。

動くと腹が痛む以外は特になんの症状もなく薬を塗ったおかげか痛みも変色も次第に引いて行った。


俺は2日後の昼飯を食ったあと冒険者ギルドに向かった。要件はあのことだろうな。

少しの小言を言われるのは覚悟していた。

しかしいざ冒険者ギルドで通告されたのは信じられないほど重たい処罰だった。


「ふざけんじゃねぇ!なんで俺が冒険者を辞めなきゃ行けねぇんだ!」

「お前は小さい子供に絡んだ挙句負けたんだぞ?そんなやつはもうウチは要らん」

「んだとコラ!」


冒険者に行くと受付嬢がギルマスを呼ぶと告げられたのは俺の冒険者カード剥奪というものだった。

しかも聞けばあのガキはカードを作った日にDランクになったという。俺と同じランクだ、ありえない。


「じゃああのガキをボコボコにして名誉を取り戻したあとはCランクにでもあげてもらうぞ!」

「てめぇ、今なんつった!」


俺のその言葉にギルマスがキレる、しかしキレたいのは俺の方だ。あんなガキに何をそんな固執してるんだ、未来のBランクと言われたこの俺を切るつもりかと言い争いになりついには胸ぐらの掴み合いになるがさすがにギルドマスター俺より力が強く押し負けてしまい殴り飛ばされてしまう。


ギルマスの拳で意識を手放していた俺は目を覚ますと冒険者ギルドの端で寝かされていた。

冒険者の目線が俺に刺さる。


やめろ、そんな目で見るんじゃねぇ


ここ数日で二度も意識を失った俺に向けられる視線は同情や哀れみ蔑みが多い。


ギルマスの姿はなかったので俺は受付嬢のところに行きもう一度ギルマスを呼ぶように伝えるが今は別のお客様の対応中だと断ってきた。


じゃあお前でいいからさっきのギルマスの発言を取り下げろと無茶を言えばさすがにギルマスを呼ぶだろうと思えば奥にあるギルマスの部屋の方から人が歩いてくるのが聞こえる。


ようやく来たかと思えばギルマスよりその隣にいた人物が目に飛び込んできた。


あの時のガキだ!


俺は神の助けだと思った。俺が冒険者カードの剥奪となったのはあいつに絡んで負けたからだ、それなら勝ってしまえば問題ないわけだ。


しかしガキの後ろには見たことないほど、どえらいべっぴんな女性がいた。よガキとどんな関係なのか知らないがあのガキを打ちのめしたあとあの女をお持ち帰りするのも良さそうだ。


そんなことを考えていると今度はあのガキから話しかけてきて、また勝負することとなった。まさに天啓。

神は完全に俺の味方をしている。

今度は一切の油断を捨て本気で戦おうとした。


しかし結果は悲惨なものだった。俺の攻撃はすべて軽々と避けられ当たったと思っても片手で受け止められもう片方の手で殴られる。


永遠と殴られた。徐々に俺の中にあったイラつきが変化していく。今となっては恐怖でしかない。

頼もうが喚こうが俺を殴る拳が止まることは無い。

しかもつらいのがこのガキは俺が意識を手放さないよう殴る場所位置を調整してきている。

もう殴られ過ぎて体の感覚がなくなってきた時拳が飛んでくる時間にようやく終わりが来た。


気づけば俺の口からは謝罪しか出てこなかった。今までの人生、いやこれからの人生を含めたってきっとこの時間が俺にとっての一番の地獄だったと思う。


その後すぐに俺をこの前家に運んでくれたやつが何かを叫ぶのが聞こえる。目を動かすことさえできない、耳もよく聞こえないので何が起きてるのか分からないが数名のおれと仲良くしていた冒険者達が騒いでるようだ。

しかしそれも一瞬の話、俺も何が起きているか分からないのに死を覚悟した。覚悟せざるを得ない殺気というか気配が全身を襲った。


それからは冒険者たちの声は聞こえなくなった。あいつらはどうなったんだ……


何も分からない、俺自身どこかに運ばれている気がするがもう意識が保てない。

俺はまたここ数日で三度目となる意識を手放した。



目が覚めるとまだ冒険者ギルドにいることが分かる。

身体中が痛すぎて動くことは出来ないが。


「目を覚ましたな」


ギルマスの声だ、あれからどれくらいの時間が経ったのだろう


「結果から伝えればお前の冒険者カードが剥奪されることは取り消しとなった」


意味がわからなかった、俺はもう一度ガキに絡んで今度は以前よりも無惨に負けたのに


「お前の絡んだ子供、コハクからの願いでな。本当はコハクの願いでも断ろうと思ったがああも頼まれたら断れん」


あのガキがなんで……?


「ただお前になんの罰も与えない訳にも行かない、お前には二週間程の謹慎、その間の冒険者ギルドでの雑用をしてもらう。いいな」


声を出すことも出来ない俺はかろうじて少しだけ顔を動かすことが出来了承を伝える。

これ以上ない譲歩に断る理由がない


そこからは体が直り動けるようになった後はギルマスの言う通り雑用をこなす日々が続き2週間以上経ってようやく冒険者に復帰することが許された。その間変わったことといえば俺より弱そうな男と魔法使いの女のCランク冒険者が来たことくらいだ。あのガキはあれ以降見ることはなかった。


俺より弱そうというか鍛錬しているのを見たがおそらく弱いアイツらが俺よりランクが高いことにむかつきもしたが絡むことはしなかった。

というより出来なかった。あの事件以降ガキや新人冒険者を見ると身体が震えてあのガキを思い出してしまうからだ。


俺と仲の良かった冒険者も大半はあれ以降別の町に行ったという。俺もそれは考えたが家を買っているので無理な話だった。


しかしそれ以外では平和な時間が続いていた。あのときまでは俺はその日は冒険者ギルドに行かず東門の先にある森に来ていた。

風の噂であのガキがギルドであの二人組のCランク冒険者と手合わせしていると聞いたからだ。


考えただけでも震えるのに近づきに行くなんてもうできるわけが無い。

森に入ってみると魔獣が何故か多くいつもより戦うペースが早い日が落ちてからだいぶ時間もたったため帰ろうかと考えた時目の前に大量のウルフの群れが見えた。


しかも群れの中には何体か銀狼(エーデルウルフ)がいるじゃねぇか!


こんなのは無理だ、しかし下手に動いて音を出せばこっちの存在に気づかれてしまうひっそりと草木に身を潜めウルフの群れが移動するのを待っていると突然ウルフの群れが騒がしくなる俺のことがバレたかと焦ったが直ぐにその原因がわかった。


あの時のガキだ、ガキがウルフの群れに単身で乗り込んで来た。突然の事だったがそこからの光景に俺は目が離せなかった。


血の雨が降る中小さいガキと小さな蛇が遊んでいるように、踊っているように次々とウルフが殺されていく。

楽しそうな表情で目の前にいた三十匹以上いた群れは次々と数を減らしていきついには最後の一匹まで殺されてしまった。


ヘビもよく分からないがそれよりもあのガキから目が離せない。

体が震え、近くの枝を踏んでしまった。

森の中にパキりと俺の枝を踏んだ音が木霊する。

まずい、別に悪いことは何もしてないがあのガキが恐ろしくて体が動かない


ガキはこちらに気づき誰だと言い近づいてくる。死の足音が近づいてくる。

俺は耐えきれず叫びながらその場を逃げる。

早く街に逃げないと……


あれは絶対に人間じゃない……

俺が絡んだのは人間のガキなんかじゃなかった。


悪魔だ。


その日俺は再びもう二度とあれには関わらないと深く誓った。その願いが叶わないことを知らずに。



今回も読んで頂きありがとうございます。

どんな評価、感想でも励みになりますので良ければお願いします。

次回も是非よろしくお願いします( ´ ▽ ` )

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