3.力技でした
扉をくぐり外に出るとそこは草木や、様々な色の花が生い茂った高原だった、遠くには湖のようなものも見える。
ほんとに日本じゃないんだな……
あまりのリアリティのない綺麗な景色に改めて生まれ変わったことを実感した。
景色に見とれていると、横の方から
「なにしてるの、はやくついてきなさい」
声のするほうをむくと手を大きく振って存在をアピールしているツクヨさんがいて、その外見と景色もあわさり幻想的と言えるほどだった。
その後ツクヨさんについて行き気づいたのが家の真裏に大きな山がある事だ。
そういえば山の麓とか言ってたな。
大きい……頂上が雲に隠れて見えないほどだ
そうしてツクヨさんについてあるいていくと草原のようなところに着いた。
「よし、今から毎日ここで魔法を教えてやる。」
そう言ってツクヨさんが指を鳴らすといつの間にかカジュアルスーツのような服装に眼鏡をかけた姿に変身していた。
こっちの世界にもスーツとメガネはあるのか、ツクヨの外見でその服装はちょっとコスプレじみたものを感じるな…………
そんな失礼なことを考えてるとは露知らずツクヨさんは説明を始める
「まず、本を読んで知っているとは思うが、魔法の属性は火、水、風、大地、光、闇の六つに分けられており人それぞれ適正がある」
「適性がいくつあるかは人それぞれだが大体一つから多くても三つだな」
ここまでは本で読んだとおりなので分かるが
「適性は特定の装置を使わないと判明しないのでは無いですか?」
手を挙げそう伝えるとビシッと木の枝をこちらに向けてくる。
あぶないな……
「その通り!しかしそれはあくまで簡単で確実な方法がそれと言うだけで、特に我々魔人は何も無くとも確認することは出来る。」
そうなのか、すごい!
何か魔人特有の識別方法があるのか!
「それは!」
「それは?」
「使ってみることだ!」
サーっと二人の間を爽やかな空気が通り抜ける
なんて事ない、力技だった。
要は使ってみて使いやすいのが適正ということかしかしそれで行けるなら装置はいらないのでは?
そう思いながら呆れた目でツクヨさんのことを見ていると
「おい、その目をやめろ。」
ツクヨさんは、はぁとため息を一つつくと
「言ってるだろう魔人はできると、そもそも生まれた時に魔力で作られる我々と人間とでは魔力への理解も総量も何もかもが違うのだ」
そう言うやいなや人差し指から小さな炎が出ていた
「人間はこの程度の魔法も最初に覚えるとなれば余程の天才でも一年はかかる」
一年か、決して短くは無い時間だ
「それほど、時間もかかるものに適性を使って知ることは難しいが魔人はすぐに魔力を感じ使うことが出来る、だから使って適性を知るということが出来るのだ」
「ちなみに魔人が魔力を感じやすいのは生まれた直後に魔力が体から流れ出る時に嫌でも魔力の流れが分かってしまうからだ」
なるほど、確かに自分も生まれ変わった直後体から何かが流れ出ていく気がしたがあれがきっと魔力だったのだろう
あの時の感覚はしっかりと覚えている
「あとはその魔力を扱いイメージをすればこのように魔法が使えるというわけだ」
そう言いながら人差し指を上に向けその上に火や水が出たり消えたりを繰り返している。
イメージか……
「まあ、とりあえずやってみるといい。そうだなじゃあ、あの辺に向かって水でも出してみろ。魔力を手からだし水を飛ばすイメージをすることだ」
そう言いながら月詠の指を指した方向にはいつの間にか大きな岩があった。きっと今魔法で作ったのだろう。
目を瞑り感覚を研ぎ澄ませれば魔力なのかは分からないが何がが体の中を巡っていることは分かる。
そこから魔力を少し引き出し自分のよく知る水をイメージする、勢いよく岩にぶつけるイメージで!
そうして目を開き魔力を手から放出するような感覚がすると自分の手から何かが岩に向かって飛び出しそのまま岩を貫き消えてしまった……
岩を貫いた……
驚いて自分の手と岩を交互に見てしまう。
「これは……」
ツクヨさんも驚き岩の方に近づくとなにかに気づいたのかこっちに来いと手招きをしてくるので近づくと
「これは水魔法の応用の氷魔法だ」
「氷魔法ですか?でも俺は確かに水をイメージしましたよ?」
当然氷なんて想像していない
「それならイメージの問題だろう、お前の中で水がとてつもなく冷たいというイメージがあってそれによって氷になってしまったんだろう。心当たりはないか?」
言われてみれば、意識しないうちにそう思っていたのかもしれない。
最近連続して全身濡れる経験をしたからかな
その後何度か水を出そうとするもどうしても氷になってしまうので一旦家に戻ることにした。
ちなみに他の属性は全て使えたが特段使いやすいものはなかった。
家に戻る頃には昼もすぎていたので昼食にすることにした。
その日はツクヨさんが作ったスープにパンを食べた。
食べながらふと気になることを尋ねた
「ツクヨさんは魔法で得意な属性はなんです?」
「これからは師匠と呼べ、それと得意な属性は火と光だな。当然長く生きておる分全ての魔法完璧には使いこなせるがな!」
実際師事してるんだから師匠と呼ぶのは当然か
「師匠、俺の適性はなんなんでしょう」
「今のところなんとも言えんな、全て使えはするんだ。困ることは無い、ゆっくり見つけていけばいいさ」
そう言いながらスープを口に運ぶ
「ん?そういえば大事なことを決めておらんかったな」
大事なこと?
「何かありましたっけ?家事分担とかですか?」
「いやそれも大事なんだが、家事は当番制な。」
当番制かなのか。師匠なのに家事はするのか
「そんな事じゃなくて、名前だよ、な・ま・え」
名前か、前世でもなかったからか何も考えてなかったな。
「お前、前世で名前なかったのか?記憶あるんだろ?」
そう聞かれるが名前はなかったので首を振る、九番が名前じゃないことは俺にもわかってる。
「ないのか、じゃあ私がつけてやろう。路地裏で拾ったからロジなんてのはどうだ?」
名付け理由適当すぎるだろ!
「どうだじゃないですよ、適当すぎです!もうちょっと真面目に考えてくださいよ!」
初めて貰う名前なんだ、さすがにその理由は嫌だ
真面目で優しい人なのはもうわかっているがたまにノリで行動してるとこがありそうなのでそう言うと
「わかってるよ、ここには私たち二人しかいないんだ、いいのが思いつくようのんびり考えるよ」
そう言ってパンを口に入れながらボソボソと何かを言い出したので名前を考えてくれてるのだろう。
邪魔しないよう食べ終わった皿手に取り台所で洗っていると横から皿を持ってきた師匠が、
「家事はどのくらいできるんだ?」
「料理以外ならあらかたできます。」
生憎前世では料理だけはすることがなかったので出来ないが、他の家事であれば仕事の一環でやっていた時もあるのでできる。
「そうかそうか、なら今日は私が作るから明日から料理も練習していくぞ」
「何から何まですいません」
少し申し訳なくなりそう言うと
「これから長い人生だ、色々覚えておいた方がいい。恩を感じているのなら、自分の世話ができるようになった時困ってい子を助けてあげろ。私だってそうしてもらった」
そう言った師匠の横顔はなんだか少し寂しげに見えた
その後しばらく休憩を取りまた午前中いた広場に戻ってくると、大事なことを言い忘れていたと言いバタバタとしていた
大事なこと??
「全ての種族は大なり小なり魔法を使える。これは理解したな?」
改まってなんだろう、こくりと頷くと
「しかし魔人、いや魔人だけでは無いがまれに魔法では無い能力を持つ種族がいてな」
魔法ではない能力?
「それを人々は固有能力といいそれは魔法では到底再現できないような能力を発揮する」
ギフト?
「魔人はなどの特定の種族は百パーセントまれに人間達も持っていることがある」
「そのギフトって例えばどんなのがあるんですか?」
「それに関しては私の見せるのが手っ取り早いな」
そう言うやいなや師匠は急に羽を出すと羽がキラキラと光出すその瞬間に体が動かなくなった。
いや、比喩表現なんかではなく1ミリたりとも体が動かせない!
一体なんだこれは!?
「私の能力は《停止》人や物はもちろん頑張れば時間だって停められる」
めちゃくちゃな能力だ
実際こうして師匠やその周りの草や遠くにいる鳥は動いているのにどれだけ身体に力を入れてもまるで動ける気がしない、そうこうしていると急に体が動くようなになり変に力を入れていたため転んでしまった
「いたた、解除するなら教えてくださいよ」
じとっとしためで見ながらそう言うと
「あははは、ごめんごめん。でも分かりやすかったろ?」
いたずらっこのような顔をして可笑しそうに言うが分かりやすくはあったので何も言えずいると
「まぁまぁ、そうむくれるな。で、実際受けて見た感想はどうだい?」
「なんだか、防げるような気がしませんでした」
魔法はどうにか出来るかもしれないがあれは無理だと何となくわかってしまった。
「そう、《ギフト》の怖いところはそこだ。誰かに使われる時絶対に防ぐことは出来ないしかし逆に言えばこちらも絶対に決められる能力ってことだね」
なるほど、すごい力だ
「俺にもあるんですか?」
「当然あるだろう、だけど今は分からない。」
わからない?まだ使えないのか?
「固有能力が何か知るには実際にたまたま発動する場合か教会にいき見るしかない」
教会で見ると言えば魔法の適性属性を調べるのもそこだ。
「これも生活に必需というものでは無いから今度街に降りる時一緒に教会に行って見てもらおう」
そう言いながら頭を撫でてくる
誰かに頭を撫でられる経験は初めてだったので驚いたが悪い気はしなかった。
その日はそのまま少し魔法の練習をして家に帰ることとなった。
今回も読んで頂きありがとうございます。
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