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魔の増す間に  作者: 負けうさぎ
冒険者、はじめました

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48/50

46.お金持ちになりました

人影が街の方に叫びながら走っていく。


状況についていけずシロークを改めて見ると白い体が所々血で汚れている。

シロークも首を傾げてこちらを見ている

俺も改めて自分の体を見る、ウルフの返り血のせいで汚れている。

師匠から貰ったローブは魔法の効果か汚れていないがフードは外しているので顔や手にもしっかりと血が着いている。

周りを見渡せばまだまだウルフの死体が沢山転がっていて所々に血溜まりができている。


膝から力が抜けその場に崩れ落ちる形になる。

逃げ出した理由がわかった。


完全に俺たちのせいだ……


どこから見ていたのか分からないがどのタイミングから見たとしても大量のウルフを狩る子供とヘビはたから見たらどんな地獄絵図だったことか……


隠れてたのも俺たちが怖くてきっと隠れてたんだな

それならあんな聞き方して悪かったな……


しばらくはちょっとした罪悪感に襲われたがやってしまったことは仕方がないので切り替えてウルフの回収作業に戻る。


街で変な噂立てられてないといいなぁ


回収作業も終え街へ戻ると夜遅い時間で門番の人も一人しか立っていなかった。

ギルドカードを見せると特に何も聞かれることなくすんなり通ることが出来た。


この辺は以前街に来た時、師匠が領主に頼んでいたおかげなんだろうな


そんなちょっとしたことに感謝しつつ今日買ったばかりの家に向かう。

家は定期的に商業ギルドの掃除が入っていたようでそこまで埃っぽいことは無く前の住人が使っていた家具もあらかた撤去されている、ただ暫くは誰も住んでいなかったので多少の埃は仕方がない。


今から掃除をするのは面倒だし近所迷惑だから明日すればいいか


家に入るとシロークも自分の家ということを理解しているのかするりと、俺の首元から降りて自由に家中を見廻り始める。


「シロークおいで」


とりあえず先に汚れたからだを洗うためにシャワーを浴びる。しっかり洗わないと血はなかなか落ちない。

目の前で洗われているシロークは気持ちよさそうな表情をしている。


湯船を張ろうかとも考えたが今日は疲れたのてシャワーだけで済ませる。

家具は撤去されているため当然家にはベットもないので今夜は床で寝るしかない。

森で寝たりもしたし前世で使っていたベットは床と変わらないくらい硬かったので問題は無い、俺とシロークは食事もそこそこにその日は寝ることにした。


二階には部屋が三つほどありその中の一番階段から近い部屋に入る、この部屋に決めた一番の理由がここにある。

商業ギルドで選んだ四つの家はどれも機能性は似たり寄ったりでどこも同じ感じであったのだがこの家はこの一部屋だけ天井の一部に窓があり寝ながら空を見上げることが出来たのだ。


寝転ぶとそこには前世とは違う星があり眺めていると眠くなってきた。


「おやすみシローク」

「シャーン」


シロークに小さく眠りの挨拶をするとシロークも鳴いて返し二人ともすぐにその日は眠り落ちた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


眠っていると身体が暖かくなってきたのでなんだろうと目を覚ますと天正の窓から光がさしていて部屋もなんだか明るい。


「シャー?」


声のするほうを見ればシロークがうっすらと目を開けてきょろきょろとしている


もう朝か……


起きようと思ったがなんだか頭が上手く回らない、寝転んだままなんとなくシロークを抱き寄せるとシロークも抵抗なく俺の腕の中に入ってくる。


それからまた夢の世界へ落ちる。


「シャーン、シャーン」


シロークの声が聞こえる、

それになんだか体が熱い、まるで前世の真夏の昼間のような……


「あっつい!」


あまりの暑さに飛び起きるとシロークがやっと起きたというような顔をしてしっぽを振っていた。

暑さの原因はなにかと思えば天井の窓から陽の光がさんさんと俺を照らしていた。


もう昼?


真上にある天井から陽の光が見えるということは日が昇ってから相当な時間だったということに違いない。

この場所で寝るデメリットがわかった、ここで寝ると陽の光でやたらと熱されてしまう。


まぁ、昼まで寝るなよという話なのでデメリットという程でもないけど


シロークと一緒に一階におりて今日の予定を話し合う。話し合うと言っても俺が一方的に話しているだけだけど。


「今日はまず冒険者ギルドによってお金を受け取ったら生活に必要なものを買おう」

「シャーン」

「この家も買ったからどれくらいお金が入るか分からないからどれくらい揃えれるかはまだ分からないけどな」

「シャーン!」

「出来ればベットと料理道具は欲しいよな」


昨日冒険者ギルドに行った時ついでに魔獣を追加して渡しておけば明日も収入があったのにすっかり忘れていた。

こんな大きな家を買ったんだ、そこまで今日の収入には期待できないと思う。


ローブを被りシロークを首元に忍ばせ、家を出てとりあえず冒険者ギルドに行くといつも通り外まで聞こえるほど騒々しかったが、俺が扉を開いて中に入るとシンと静まり返る。


別に絡んでこなければ何もしないのに…

わざわざそんなことは言わないがこうも毎度注目されるのも面倒だ


カリンさんを探そうと思ったが受付けのカウンターに姿が見えない、仕方が無いので手の空いてそうな受付の女性に声をかけてみる。


「すいません、カリンさんはいないんですか?」

「あ、カリンは今日は休みでして。どうかされました?」

「いや、今日報酬が貰えるって聞いてたので受け取りに来たんですけど」

「その件ですね、少々お待ちください」


カリンさんは休みだったらしい、道理で姿がないわけだ。そりゃ休みくらいあるよな。

今の受付嬢も俺のことを知っているのか元々そういう性格なのか丁寧に接してくれた。


そりゃギルマスから言われてるか


少しの間受付の近くで待っていると奥からのしのしと音がし、ギルマスがやってきた。


「おう、コハク。昨日はエリ達に勉強させてやったらしいじゃねぇか、ありがとな!」


エリ達と言えばボックさんとレインとミーシャのことだろうな。

ちなみにレインだけ呼び捨てにするのもあれだったのでミーシャもそう呼ぶことにした。元は弟子にしてくれという話だったのでおかしなことは無い。


「勉強という程じゃないです、手合わせしただけですよ」

「それでもあの四人には勉強になったんだから間違ったことは言ってないだろ?」

「そりゃまぁ」

「それより報酬の件だったな、ちっと奥の部屋に来てくれ」


ギルマスについて行きながら奥の部屋に行く。

もう何度も来たのでここにも慣れたものだ、いつも座っている椅子に座ってフードを外す。シロークも体を伸ばしている。


「冒険者でこの部屋に入ってそんなにのびのびするのはお前くらいだよ…」


そんなこと言われても街中ではフードも脱げずシロークも同じ姿勢なのでなかなかこういう場は無いのだ。


「それで、なんでわざわざこの部屋に?」


別にお金を渡すくらいなら受付で済むはずだ、なんならほかの冒険者がそうしているのを見たことある。

未だにブツブツと言っているギルマスに話を変えさせるように聞く。


「そりゃ報酬の金が思ったより多かったからな」


ギルマスがテーブルの上に小さな箱を置く。


「なんですかこれ?」

「とりあえず開けてみろ」


言われるままに箱を開けるとそこには二枚の少し青みがかかった硬貨が入っていた。


なにこれ?

開けてみろと言われて開けたが結局何かわからない


「すげぇよな、俺も初めて見たぜ」


勝手に感動されても困る。俺はまだこれがなんなのかわかっていないのに


「すごいってこれがなんなんですか?」

「知らねぇのか、いやそりゃ見た事ないよな」

「凄いものなんですか?」

「そりゃな、普通に生きてたら大商人や大貴族でもない限り実物で見ることは無いわな」


はやく教えろ


わざとなのかやけにもったいぶるギルマスを少し睨みつけるとゴホンと咳をしている。


「これは、聖硬貨ってものでな金貨千枚分の価値がある」


金貨千枚!


「おぉ、コハクのそんなリアクション初めて見たぞ」


なにか失礼なことを言っているが俺だって驚きぐらいする。

しかし千枚って凄いな、あんな虎にそこまで価値があったなんて……


金貨一枚だってそれで十分数日は楽しく暮らせる額なのにそれの千枚分……


途方もない数字だ、というか途方も無さすぎてこんなの普通の会計で使えない、お肉を買うためにこんなの出したらお店側もお釣りに困るだろ。


「これってどこで使うんですか?」


考えれば考えるほど使いどころが分からない


「普通の店では使えんわな、基本的にはギルドかよっぽどどデカい買い物をする時か」


それなら金貨千枚貰った方が嬉しいんだが…

使い道の少ないものよりどこでも使えるものがいい


「まぁ、待て。お前の言いたいこともわかる。普通のお金が良かったってことだろ?」


こくりと頷くと目の前にさらにギルマスの顔くらいありそうな袋を出す。中からジャラジャラと音がするので硬貨が入ってるのはすぐにわかった。


「本当は聖硬貨三枚だったんだが家を買ったんだろ?そのお釣りとして金貨が三百枚ほど入ってる、確認してくれ」


ということはあの家は金貨七百枚位だったのか、買えるものを選ばせてもらったので値段を聞いてなかったので知らなかった。


「それにしても多いですね」


ちゃんとどこでも使える硬貨を貰えたことに喜びながら金貨を袋ごとアイテム袋しまう。

まさかここまでお釣りがあったとは思わなかった。これなら家具も生活用品も全部今日買えそうだ


「あぁ、お前の持ってきた王虎(ケニングタイガー)はもはや伝説上の魔物だからな毛皮や肉を求めて今や貴族や果ては王族まで出てきたくらいだ」


実はギルマスの家で食事をした時二人からすごい勢いで素材を譲って欲しいと頼まれたので今回は全て渡すことになったのだ。

肉は俺も食べたかったので全部位をある程度は取っておいてもらったが爪や毛皮などは渡すことにした。

本当は毛皮は俺も欲しかったがものすごい勢いで頼まれたので泊めてもらった恩もありお金もふんだくってくると言われたので渋々了承した。


確かにもう今後の生活でお金に困ることはなさそうな額のお金は貰えたし欲しければまた師匠の家の近くの森をうろつけば手に入るはずだ。


「おい、ちゃんと確認はしてくれよ?」

「ギルマスのことは信用してるので大丈夫ですよ」

「コハク……」


なんか感動しているが実際は三百枚も数えるのが面倒なだけだ。


お金も手に入ったので早速家具を買い揃えに行くことにする。


「ギルマス家具を買い揃えるならどこかいいところはあります?」

「そうだな、それなら西門の方にいい店があったな。ちょっと待ってろ」


店の名前と大まかな場所だけ教えてくれればと思って聞いたら地図まで書いてくれたのでお礼を言いありがたく受け取る。


フードを被り直し、ギルマスの部屋から出て冒険者たちがいるところに戻るとまだヒソヒソと話していた。

やたらと視線も感じるので足早にギルドを出て西門の方へ向かうことにした。


冒険者ギルドを出た時に大量のウルフと銀狼(エーデルウルフ)はちゃんと解体所に渡しておいた。数に驚きはしていたものの問題ないとの事なので変な騒ぎになる前に急いで冒険者ギルドから離れる。


いちいち疲れるな……


騒ぎにならないよう隠れるのも大変だ。

師匠が一人で山の奥に住んでいるのもわかるなと考えながら地図を見て西門を目指した。



今回も読んで頂きありがとうございます。

どんな評価、感想でも励みになりますので良ければお願いします。

次回も是非よろしくお願いします( ´ ▽ ` )

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