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魔の増す間に  作者: 卯月
異世界生活の始まり
4/50

2.状況説明されました

握手をしたあとはまた話し始めるわけでもなくツクヨにまだ当分安静と言われしばらくはベットで寝たきりの生活を送ることとなった。

朝と夜に2回食事は運ばれ軽く濡れたタオルで体を拭き動く場面と言えばトイレに行く時くらいだ。


なんだか、前の人生と似ているな


そう考えるとつい苦笑してしまった。まだ、自分の身に起きたこともこれからの事も何も分からないが、その不安を感じるこの状況さえ以前と比べると面白く感じてしまえる。


たけど、ずっと何も考えずにいるとふと思い出してしまっていた。以前の人生の最後の日を。


あの時自分がもっとよく考えていれば、先に船に乗せておけばといろいろな後悔がおしよせ目をつぶると血に濡れた自らの手が、最後に見た真白の顔がどうしても過ぎってしまっていた。


すると、扉の方からノックする音が聞こえ目線を移すとツクヨが入ってきていた。


「もうそろそろ、安定もしてきた頃だし一度状況整理でもしておこ……!」


そう言いながらこちらを見るツクヨの目が大きく開かれ


「なんでこんな手から血が出ているんだ?!」


そう言いながら手を取ると確かに今にも垂れそうな程には血が出ていた。

上下とも真っ白な服を着ていたので血で汚すと洗うのが他大変そうだ。

気づかないうちに強く握りすぎていたようだ


ツクヨはまったくと溜息をつきながら何かをつぶやくと手元が光りみるみるうちに傷がふさがっていった


傷が治った……!?


「回復魔法だ、勉強し練習すればお前もできるようになる。」


こちらが驚いているのを察したのか教えてくれた


「話が逸れた、このあとリビングでこの世界の事、魔法色々教えてやるからリビングにおりてこい」


そう踵を返し部屋を出ていこうとする。

しかし困ったな


「リビングってどこ?」


この部屋以外トイレしか行ってないんだからリビングと言われても分からない


「それもそうか、よしこのままついてこい」


そうして歩き出したツクヨにおいていかれないよう早歩きで歩く。

身体が小さいのが歩くととても違和感として感じてしまう

家のサイズ的には普通の民家程度の大きさなんだろう、リビングにはすぐに着いた。

そこには4人掛けほどのテーブルと椅子が向かいあわせで二つおいてあった。


「座って待っておれ」


そう言いながらツクヨはリビングから見えるオープンキッチンのようなところで飲み物を用意し始める


先に座って待っていると五分ほどして目の前にお茶が注がれたコップが置かれ淹れたてなのがすぐにわかるほどコップからは湯気がたっていた。


そうして向かい側の椅子にツクヨが座ると指をパチンと鳴らす

するといつの間にかテーブルの上にはたくさんの本や紙が山のように置かれていた。


「これはいったい」


思わず戸惑いの声を漏らすと


「この世界の地図や魔法の基礎知識の本、あとは宗教や種族のことに書かれているものだ」


なるほど、確かにこれだけの量になるだろうと思えるほど幅広い分野の書籍だ。


「さて、まず何から教えたものか」


と顎に手を当て少し悩むと一枚の紙にを渡してきた。


「これは魔人という種族についてのことが書かれている。」


そこには大きな絵と三分ほどで読み切れそうな量の文字が並んでいた。


「魔人についてはあまり学者の方でも研究は進んでいないのだろうな、僅かな数しか生まれずそれぞれの個体差もあり、かつ捕獲することは至難だからな」


そうぴらぴらとかみをつまみながら文字数の救い理由に言及し三本指を立てると


「魔人と人間の違いは大きくわけて三つある」


それに対し黙って頷くと


「まずひとつ、魔人は体内からも魔力が生成されるが人と違うのは空気中にある魔力を吸収することができるという事」


「そして二つ目、そもそも身体自体が魔力で作られているということ」


「そして三つ目が、人にはない部位羽、尻尾、角みたいなものが生えていること細かく言えばまだまだあるが大きく分けるとしたらこの辺りだろう」


指をおりながら話すも正直半分も理解出来ていない。

魔力については部屋で寝たきりだった時にツクヨが持ってきてくれた本である程度理解はできた。


その本自体は人間の書いたものなのだろう


それでも本で得た知識と今聞いた話でかけ離れすぎていて理解が追いつかなかった。


だが、魔人の本人が言うのだからきっと正しいのだろう。しかし


「体が魔力でできているって言うのは?」


自分はつい今しがた手から血を流したばかりだ、魔力でできているならちは流れないだろう

そう考え尋ねると


「別のことで例えるなら魔力は霧よ、霧を押し固めて水を作る、そしてそれを氷の体骨格に作り変えその後に人間のような臓器を作るの」


「だから最初のうちは自分でできるようになるまでは誰かが骨格を支えてあげなきゃいけないの」


なるほど、それが最初に言っていた弟子入りしないと死ぬということか


「でも今の話なら魔力さえ生きていけるのでは?何故わざわざ臓器なんかつくるんですか?」

「そこまでは知らないよ、実際無くなっても問題は無いだろうけどね」

「知らないって自分の体の事じゃ……」

「じゃあお前は人間だった頃なんのために臓器があってどこにどう作用してるのか知ってたのか」


そう言われたら知らない、確かにそういうものか


「別に困ってないからね私だって一々調べてないの」


俺は生まれ変わっているから気になるだけでもとからそうならたしかに気にならないのかもしれない


「とりあえず自我がしっかりしている子ほど体ができるのは早いからね、お前はすぐ終わったけどかかるやつは下手したら十年かかった者もいるそうだ」


面白話のように言うが笑えない


さすがに十年寝たきりはきついので早めに終わってよかったと、寒気を感じつつもほっとした。


そしてお茶をひと口飲みもうひとつ気になることを聞いた。


「もうひとつ気になることがあるんですが、羽とか尻尾があるって言うのは?」


そう、今のところツクヨにも自分にもそんなものは無い、というかそんな特徴てきたなものがあれば直ぐに気づくはずだが見る限りここにいる魔人である二人にはそれが見当たらない。

するとツクヨはキョトンとした顔をする。


「へ?最初に見せたじゃない、私にはこの羽よ」


そう言いながら彼女の背から大きな黒い翼が伸びた


あまりに急に出すものだから驚いて後ろに倒れてしまった。

見間違えじゃなかったのか。

どうやら収納が可能らしく普段は誰にも見えないくらい小さくしているとの事だった

だがそれならと


「自分には何もないんですけど」


あるのが魔人と言うなら自分は魔人では無いことになるが、そう考えていると


「君にもしっかりあるよ、しかも珍しいものがね」


肘をつきながらそうは言うが自分の身体ならもう隅々まで見たが、そんなものはなかった。


「そりゃ君からは見えないだろうね、鏡を見ない限りね」


そう言われ少年はひとつ思いついた。


「もしかして、目……?」


「せいかーい、自分じゃあ見えないだろうけど君の目は黄色くキラキラと輝いているよ」


道理で自分では分からないわけだ

しかし目の色で言うならだ


「ツクヨさんの瞳も真っ赤で綺麗だけれどこれは血統とかそういうものじゃないのですか?」


ふと疑問に思いそう尋ねると、ツクヨは少し顔を赤くし

「恥ずかしげなくそういうこと言うのね、そうねただの黄色であれば瞳の色で片付けられたのでしょうけど君の瞳は宝石をばらまいたかのように輝いてる、それは魔人の持つパーツの特徴のそれだ」


思い返してみればたしかにあの時のツクヨの羽根もキラキラとしていた。


「後で鏡のある部屋に連れていくから自分の瞳はその時確認するといいよ」


たしかに気になる、なんだかソワソワしてしまう


「ふふ、気になるのはわかるけどもう少し我慢して次は種族の話だ」


はやる気持ちを落ち着かせツクヨの話に意識を向ける

せっかく色々と教えてくれているのだ、しっかり聞かなければと種族に書いてありそうな本を手に取る


「この世界には人間族、エルフ族、獣人族、ドワーフ族、魚人族、亜人族がいる。数で言えば今言った順で多いな」

「魔人族はないのですか?」

「当然の質問だな、魔人は亜人族に分類されている。そもそも希少で数の少なく成長すれば個々で生きていける魔人は群れないからね、族には含まれないのさ、

基本的に数の少ない個体は亜人族に分類されている」


そういう事か、魔人の研究が進んでいないのも納得だただでさえ総数の少ない亜人族の中でさらに希少ともなれば会うことすらレアなのだろう。


そこまで考えると疑問がひとつでてきた。

そんな希少な種族どうしなぜ巡り会えたのか、最初に会った時の「こんなところで生まれるとは珍しいのぅ」あのセリフはまるでそこで生まれたことを知ってきたかのようだ。


それを尋ねるとツクヨは少し考え


「それに関しては魔人の生まれかたやこの世界の仕組みを説明しないといけないね、それはおいおい説明しよう。外に出るよ」


椅子から立ち上り扉の方に向かって歩き出すのでひとまず追いかけることにした。


そういえばこの世界に生まれ変わり最初の倒れていた時を除けば初めての外だ。

部屋の窓から多少は見えていたがそれでもいつもよりも開いたドアから差し込む陽の光がいつもより眩しく感じた。



読んでいただきありがとうございます。

どんな感想、評価でもいただけると励みになりますので良ければお願いします。

次回もよろしくお願いします

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