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魔の増す間に  作者: 負けうさぎ
異世界生活の始まり

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32/50

30.何事も適量が大事です

すいません、遅くなってしまいました。

その後俺たちは食事に呼びに来たメイドについて行き食堂に向かい領主一家と食事をした。


メニューは希望通り肉がメインで久々だったのもありとても美味しかった。


領主様やヨナさんにも泊まっていくよう言われたが今回は師匠が丁重にお断りしていた。

宿にも心配をかけるからと言っていたが多分ゆっくり休みきれないからと思う。


その事にヨゼフが一番ショックを受けていた。

現に今もまだ門の前にいるのに引き止めてくる


「必要でしたら宿にも連絡を送りますよ」

「いやもうここまで来たんだから帰るわ」


最初は師匠も丁寧に断っていたのだ、しかししつこすぎてもう適当だ。


「ヨゼフ、もうここまで着いてきたのお前だけだぞ?もう従者すら屋敷に戻ってるぞ?」

「コハクは泊まりたくないのか?泊まれば枕投げなんかもできるぞ?」


いや泊まっても枕投げはしない

こいつもしかして……


「友達がいないのか?」

「仕方ないだろ!俺は貴族だからこの街の人たちとは距離があるし、通っていた学校では勉強することが山のようにあって友達とかそんな時間はなかったんだ!」


そんな、早口でまくしたてられても……


「今日だけ泊まっていけ!な!?」

「これからも時間は沢山あるんだ、また今度な」


ここに居たら永遠に引き止められそうなので俺は師匠と宿に向かって歩く。


「俺にはお前ほどの時間は無いからな、早めに来いよ!」


後ろを振り返ると大きく手を振っているのでそれに軽く手を振り返す。


「今日一日で随分仲良くなったもんだね、これからも期待できそうだ」

「今回はヨゼフが詰めてきただけです」


決して俺のコミュニケーション能力が高かった訳では無い


「領主夫妻も驚いていましたね」

「息子のあんな姿は初めて見らしいからね」


食事の時やたらと話しかけてくるヨゼフの姿に領主様と驚くとは無縁そうなヨナさんまでびっくりしていた。


「これから街に来る度に泊まれと言ってきそうな勢いだったからね」

「言わないでください、考えないようにしていたんですから」


今度から街に降りてきた時はあまり暴れないようにしよう。

いや、そもそも周りが勝手に絡んできてるだけだ。俺からは何もしてない


「しかし、今日もよく寝れそうだ」

「朝寝たんですけどね……」


俺と師匠は昼過ぎまで寝ていたから実際はまだ起きてから七、八時間しか活動はしていないがなんだか疲れた。


「明日は昼過ぎくらいに帰るんですよね?」

「そうだね、ボックさんにも挨拶をしてエリちゃんの様子を見たら帰ろうかね」


街に来るまではまさかたった数日で挨拶をする人がこんなに増えるとは思わなかったな。


空を見れば月のが少しかけている、それでも地球で見た月よりは距離が近いのか一回り大きい、


「大変なこともあったけど楽しかったですね」

「そうだね、これからもそうなるさ」


これからもか、それはいいな


宿に帰るとなぜか店主の親父にとても心配された。


「よかった!無事帰ってきたか!」


また何かあったのか?


「何かあったんですか?」

「いや今日噂で聞いたんだがなどうも子供をさらってる連中がいたらしくてな、そのタイミングでお前さん方が帰ってこないから心配したんだ」


あぁ、昨日の件か

またなにか事件が起きたんじゃないかと俺も師匠も焦った。

さすがに連日連夜事件に巻き込まれるのは勘弁したい


しかしわざわざ一組の客をこんなに心配してくれるなんていい人なんだな


遅くなったことを謝ると店主は無事でよかったと言ってくれ食事のメニューを聞いてきたが俺たちはもう食べてきているため断るとすごく落ち込まれた。


「えっと、明日の朝はここで食べるので楽しみにしてます」

「そうそう、招かれたから仕方なくね」

「店主の魚料理がいちばん美味しいですよ、ね?師匠?」

「ええ、そうね!」



何故か俺たちはそのまま宿屋の店主を励ましてから部屋に戻ることになった。


宿屋の店主も最終的には腕まくりして厨房に入っていったから多分大丈夫だろう。


部屋に戻ったあとはシャワーを浴び寝巻きに着替え横になるとすぐに眠気に誘われ俺はそのまま目を閉じた。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


次の日の朝俺は早く寝たこともあってスッキリと目覚めることが出来た。


横で師匠はまだ眠っている。

いいことを思いついた……


師匠を起こさないように静かに移動し顔を洗っていると廊下からいい香りがしてくる。


店主は俺たちよりも後に寝たはずなのにもう起きてるのか、料理人は大変だな……


そんなことを考えつつ着替えを済ませローブを羽織って完璧だ


「師匠、朝ですよ!」


ゆさゆさと揺らし師匠を起こす


「あぁ、おはようコハク」

「おはようございます、師匠」

「今日は起きるの早いね、ってもう着替えまでしてるのかい?」


まだ少し眠そうに目をこすっていた師匠は俺の姿を見て驚く。

昨日は師匠が準備バンタンの状態で起こされたからその仕返しだ。


「はい!もう準備は出来てるので師匠も早く起きてください」

「わかったわかったから、ちょっと待ってて」


ふふん、と胸を張る


「そういうとこ誰に似たんだろうね」

「俺も最近師匠に似てきたなって思います」


俺の返事に、はぁとため息をついてまた準備を始める。

とはいえこの世界はメイクなんてものは無いしあっても師匠には必要なさそうだが、ともかく準備は直ぐに終わり一緒に食堂に向かう。


「今日の朝ごはんは何にしましょうか」

「なんか昨日やけに張り切ってたからね、心配だから少なめに頼もう」


しかしそんな心配は杞憂だった。

というより、もうなんの意味もなかった。


なぜならメニューなんて聞かれなかったからだ。

食堂につくとすぐに店主が現れ俺たちをテーブルに案内され、言われるがまま座っているとそれはもう大量の料理が運ばれてきた。


「て、店主?これは一体……」


言葉が出ない俺の横で師匠が戦慄しながら店主に尋ねると頬を掻きながら照れくさそうに話し出す。


「昨日お前さん達が言ってくれた言葉が嬉しくてな、今日には街を出るって言うからそれなら盛大にやろうとな?」


いやいや、これは盛大すぎる……

料理一つ一つも量が多いし、皿数なんか多すぎてテーブルが埋め尽くされている。


昨日の領主邸で出た五人分の食事より量が多いぞ……


「美味しそうですね。あ、ありがとうございます……」


店主の顔を見ると満面の笑みなため断ることも出来ず頂くことにした。


「師匠は大人ですから期待してますよ」

「私はレディだからね、それよりコハクこそ今は成長期なんだ沢山食べるんだよ」


俺と師匠はお互いに押し付け合うがそんなことをしても料理が減ることは無いのでとりあえず食べ始める。


ちなみに魔人は魔力で臓器のようなものを作り上げるが正確には臓器では無いので俺たちは排便というものがない。

口に入れたものは体の中で魔力に変換されるからだ。

そのため普通の人間よりかは沢山食べることは出来るがあくまで食べれるだけで満腹感はある。


魔力に変換されるには多少時間がかかるため無尽蔵に食べれる訳では無い。


魔力を大量に消耗する魔術でも使えば魔力の変換も早まるだろうが俺たちが街中でそんなもの放てばとんでもないことになる。



しかし食べる選択肢以外が俺達には無いため黙々と食べるしかないのだ……



……一時間後、テーブルの上には変わらず大量の料理の乗った皿が並んでいる。


「師匠……」

「言うな、それを口にしたら待ってるのは絶望だけだ」


いやもうそれはほぼ俺たちが同じことを考えてると自白してるようなものだ


全く減らない!


この一時間俺と師匠は会話もそこそこに食事を進めていた。

なのにまるで減った気がしない。


「あの店主、別の街から人が来る度こんなことしてるんですかね。大丈夫なんですかね」

「さぁ、どうなんだろうね。ここ数日ではそんな様子はなかったけどね……」

「俺たち何かしましたっけ?」

「……」


ついに師匠の手が止まった。

限界が来たみたいだ


ちなみに俺はもう十分前から手が動かないし、目線すら動かすのが億劫に感じる。



その時俺と師匠に天からの救いの手が差し伸べられる。


宿の扉が開き見知った顔が見えた。

ボックさんとギルマスのダグマだ。


「ツクヨさん、コハクくんおはようございます。今日街を出ると聞いて挨拶に来ました」

「おう!今日はエリの顔みていくだろ?うちに案内してやろうと思ったらそこでばったり会ってな!」


そこからの俺と師匠の動きは早かった。

二人を逃がさぬよう即座に二人を捕まえ俺たちが座っていたテーブルの向かい側に座らせその前に取り皿とカトラリーを置く。


傍目から見ればボックさんとギルマスが一瞬で移動したように見えただろう。

そのくらい俺と師匠の動きは早かった。

二人も何が起きたのかわかっていなさそうだ。


「よく来たね、二人とも。立ち話もなんだから一緒に食事をしながら話そう」

「そうですね、この通り料理は沢山あるので遠慮せず食べてください。遠慮はせずにね」


ここはしっかりと気持ちを込めて伝える。

大事なことは繰り返して伝えるべきだ。


「あ、あぁ。それじゃあいただくか」

「そうですね。よく分かりませんがここで立ち上がったら良くないことが起きる気がしてきました……」


俺たちの気持ちが伝わったのか二人が食事を始める。


二人とも大の大人で元冒険者だ。これくらいきっと食べてくれるだろう。


「ところで今日街を出るんですよね?」

「ええ、昼過ぎには出たいと思っているわ」


俺たちはそのまま食事をしながら会話する


「そうですか、本当に今回のことは感謝してもしきれないです。」

「お礼ならもうたくさん貰ったから気にしないでいい」

「はい、それに俺たちもやりたくてやった事ですから」

「そうそう、冒険者ギルドからも領主からもたんまり報酬は貰ったしね」


実際たくさんのお金と領主邸では持ちきれないほどの服も貰った。

俺なんかもう一生分の服をこの街で手に入れてしまった。


「それでもですよ。もし何か困ったことがあればいつでも頼ってください。僕にできることなら何でもするので」


ボックさんはまっすぐとした眼差しでそう言うと隣のギルマスが騒ぎ出す。


「おいおい、そりゃ俺のセリフだぜ!特にコハク!これからギルドに来て困ったことがあればすぐ頼れよ!」

「その時は頼みます」


ありがたい申し出なのでここは素直に受けとっておく



その後しばらくするとテーブルの上にあった料理はみるみるうちに減っていきからになった皿だけが残った。


意外とボックさんもギルマスに負けず劣らず食べていたため綺麗に食べ切ることが出来た。


一時はどうなるかと心配したが二人が来てくれてほんとによかった。

この料理を食べるために空に大量の魔術を繰り出そうかと考えたほどだ。



俺たちはその後宿屋の主人に部屋を出ることを伝え宿屋を出てそのままギルマスの家に向かうことにした。


やけに宿屋を出る時主人にお礼を言われまた来てくれと言われたがああいう営業なのだろうか?

だとしたらやけに接客熱心だな



何となく道は覚えていたが持ち主も居たためすぐにギルマスの家には着いた。





今回も読んで頂きありがとうございます。

どんな評価、感想でも励みになりますので良ければお願いします。

次回も是非よろしくお願いします( ´ ▽ ` )

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