23.恐怖の体験をしました
今何が起きた……?
今目の前で起きたことが理解できない……
時は戻り俺がこの男の元にたどり着いた時の話だ
俺はウルバを殴り倒したあと一度起こし尋問をするとここにいるゲビタのことを聞き始末しておこうとここに来た。
屋敷は領主邸とはまた違う別館のようなものなんだろう、守りも薄く屋敷に人はまばらに数人いるだけだった。
邪魔建てされないようにととりあえず全員気絶させそのうちまた一人からゲビタの所在を詳しく聞き部屋を見つけることが出来た。
部屋の中では男は酒を飲みながらぶつぶつと何かを呟いている。
男に気配を感じられないようそっと近づくとゲビタの顔が月明かりで照らされ見える。
ウルバから聞いていた、魔獣の騒ぎもエリ達に施した魔術式もこいつが企んだ事だと、つまり今日の騒ぎはほとんどがこいつのせいだということだ。
ボックさんは片腕を失いギルドマスターは娘が亜人になりエリは人としての生を失ったというのにこいつは月を見ながら酒を飲んでいるのか……
無性に腹が立ちこのまま殺してやろうかと思ったが、聞かなければならないことがあったと心を落ち着かせ逃げられないよう深手はおってもらう。
しかし片腕を飛ばしてもゲビタという男騒ぎ立てることもせずどこか余裕そうだ。
片腕飛ばされたのにこの余裕何かあるのか?
俺はその男に注意を払いながら質問をする、何度か会話を交わしているとゲビタはどうやら腕が無くなっていること握づいてない素振りなので切り落とした腕を見せて腕がないことを確認させるとどうやらそこで気がついたようだった。
今更になって騒ぎ出した、その姿を見ていると前世で殺してきた男たちを思い出す。
あぁ、どこかで見た顔だと思ったが俺が前世で殺してきたヤツらに似ているのか。
こういう奴らは殺される直前は皆似たような表情をするんだな。
しかし真白の時のように手が動かないということは微塵もなくて安心した。
「それに!俺にはあの『夜の住人』が後ろについているんだ!俺に手を出せばお前みたいなガキは一瞬であの世へおさらばだ!」
ひと思いに首を跳ねてやろうと思ったら男は気になる単語を叫ぶ。
夜の住人?そのことについて聞き出そうとしたがそれは出来なかった
ゲビタの後ろに突然黒いモヤが現れたすぐ後にそのモヤは人の形を形成しそのままゲビタの首を切ってしまった。
なんだこいつは……
咄嗟に後ろへ飛んで下がる。
さっきまで確実にここには俺とゲビタの二人しかいなかった。
つまりこいつはどこからか急にここに現れたということになる。
そんな魔法が有り得るのか?
なんにせよまずい、こいつと今戦うことになれば圧倒的不利だ……
いやな汗が流れ、じっと静かな空気が流れる。
しかし構えた状態で黒いモヤを見ていると次第にモヤは消えていった。
なんだったんだ?
完全に気配が消えしばらくしても何も起きないので警戒をとく。
なにがなんだかわからないが俺は今完全に見逃されたということだけは分かった。
あのモヤの急に現れたり消えたりする移動術の謎が解けていない限り俺に勝ち目があるようには思えない。
一つだけわかるのは今のやつが夜の住人に関わっているだろうということだけだ。
ゲビタがその名前を出した瞬間口封じのように現れ首をはねた辺りそれは間違いないだろう。
これは師匠に相談しなきゃだな……
一人で勝手なことしたから怒られるかな……
ゲビタを処理することは完全に独断で行っているため師匠には黙っているつもりだったが黒いモヤのせいで報告しなきゃならなくなった。
ひとまず戻るか
ゲビタの遺体などはそのままに屋敷を後にする
遺体は完全に消し去っても良かったのだが親はあんなのでもきっと消えれば捜索隊を出したりして心配するだろうからな
それならいっそ葬儀を行った方が無駄なこともせずに済むだろう。
まぁその場合犯人探しで色々捜査は行われるだろうがあいつを殺さずにいることは出来なかった。きっとそのまま生かしておけば今日みたいなことを何度だって企むはずだ。今回は師匠もいたから何とかなったが次回俺たちがいるとは限らない
それに領主の息子ということもありしたことがバレたとしてもそうそう思い罰にもならなかっただろう。
きっと師匠もこの決断には何も言わないだろうな、一人で相談もなくしたことにはめちゃくちゃ怒ってきそうだが……
怒られることを考えげんなりしながら教会に戻ってくると教会を出る前より人が多かった。
見たとこ衛兵の数が多い。
なんとか中に入れないかと人混みの様子を見ていると俺のことが知らされていたのか人混みのうち一人が俺を呼び師匠の元に案内してくれる。
師匠はなんだか疲れた様子で瓦礫のひとつに座っていた。
「師匠お疲れ様です。子供たちの様子はどうでしたか?」
「コハク?子供たちなら全員問題は無いよ。魔石の魔力とは適合しなかったのか少し魔力の流れを修正するだけで良かったよ。それよりお前今までどこに行ってたんだい?」
俺の見つけた子供たちはエリのような症状が出ることなく無事だったらしい。
よかったよかった。子供たちが無事で何よりだ
「そうですか!いや、よかった!子供たちが無事でよかったですね!」
「ん?まぁ、そうだな。それで、今まで」
「師匠!もうやることは無いのですか!?なければ早く宿に戻りましょう!お腹がすきましたね」
「おい、コハク」
「いやー、今日は何を食べましょうか。あ、でもこんな夜更けもう食堂は閉まってそうですね」
「…………そうだな、私にはもうすることは無いし宿に戻るとするかね。ダグマとボックさんに挨拶してから帰ろう」
「そうですね。二人はまだ帰ってないんですね」
「ダグマはギルドマスターだからな、仕事があるんだろう。ボックさんは当事者のひとりってことで色々話をしてるみたいだよ」
ふぅ、何とか誤魔化すことが出来た。
報告しようとは思っているのだが、いざ言うとなると勇気がいる……
まぁ、後で報告すればいいか
さらっと流すように報告しよう!
「僕らも当事者ですけどいいんですか?」
「私は後から来ただけだしお前は子供だから被害者の一人程度にしか思われてないから大丈夫だよ」
「そうなんですね、今日は色々あって疲れたので助かりますね。」
実際今日は色々あって疲れた。早く帰って寝たい
前世と違って最近はふかふかのベットで寝ているため寝ることが気持ちいい。
「ん?お前は宿に帰ってもしばらくは寝れないよ?」
空気の温度が下がったような気がした。
心なしか寒く感じ、師匠の方を見ることが出来ない
「えぇ?な、何かありましたっけ?」
「あぁ、お前が隠していることを報告してもらわなきゃいけないからねぇ」
バレてる……!
恐る恐る横を歩いている師匠を見上げると氷のような笑顔で俺を見ていた。
「一体何を隠しているんだろうねぇ、楽しみだよ」
ひ、ひぇ……
な、なんで報告前からこんなに怒っているんだ……
ほぼ、怒られることが確定した状態で歩きながらギルドマスターたちの所へ向かうとボックさんと一緒にいたのでもう帰ることを伝える。
「おぉ、帰るのか。すまねぇが明日いつでもいいから時間が出来たら冒険者ギルドに来てくれねぇか?話したいこともあるしお礼も言い足りねぇからな」
「それじゃあ明日の昼過ぎから夕刻までには行くよ」
「本当に今日は色々助けてもらいありがとうございました。この音は一生忘れません。」
「お礼ならもう十分だよ。エリちゃんをしっかり守るんだよ」
二人と師匠が会話をしているが俺は正直それどころじゃないので会話が頭に入ってこない
「……コハクのやつはどうしたんだ?」
「心ここに在らずと言った感じですね」
「これはほっといていいよ、明日には元に戻ってるから」
二人はそんな俺の様子を心配するが師匠は問題ないといい二人と別れ宿屋に向かって歩き出す。
当然俺もついて歩いていくが足取りは重くなる
はぁ、第二第三のウルバが今現れてくれればなぁ……
そんな意味の無いことを考えながら俺は宿に帰ることとなった。
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