20.合流しました
ウルバを引きずりながらボックさんと別れた部屋に戻ってくると師匠が立っていた。
「師匠!もう戻ってきたんですか!?ちょっと早過ぎないですか?」
魔獣の群れって話だったよな、あまりにも早過ぎないか?
「強めに群れに魔力を当てたらさっさと山に引き返していってね、結界の札が無くなっているところがあったからその補強だけしてきたんだよ」
師匠は指をしーっと口元に当てると優しく笑いながら教えてくれる。
「エリ!おい、起きてくれ!エリ!エリ!」
声のする方に目を向けると壁際に寝かせられているエ
リとボックさんの姿が目に入る、倒れているエリの元にはギルドマスターがしゃがみこみエリの名前を何度も呼び揺する姿があった。
俺も急いで倒れた二人の元へ駆け寄ると痛ましい姿をしたボックさんの姿がそこにはあった、片方の腕が肩からなく身体中が血まみれだった。幸い師匠が手当をしたのか既に見える傷は無い。
エリには頭部に狼の耳が左右についていたがそれ以外で目立った傷はなさそうだ。
しかしボックさんもエリも目を覚ます様子は一向にない
「エリ、頼む。起きてくれ……頼むから……」
切実にギルドマスターは願うが二人の目はそれでも開くことは無い
「師匠二人はどうなっているんですか?無事なんですか?」
「いや、二人とも重度の魔力枯渇に陥っている、これは極めて危険な状態だよ、オマケにエリちゃんの状態は私でもどういうわけでこうなっているのか分からない」
そう言うとチラリと俺の後ろを見る
「それで、ここで何があったのか教えて貰えるかい?その後ろに引き摺ってるやつ含めてね」
俺は師匠にそう言われ狼族となったエリと出会いその後この後ろで引き摺っているウルバと話した内容の全てを話した。
師匠は何かを考え込むように、ギルドマスターも体はエリ達の方を向いているが話はしっかりと聞いていたようで途中途中、ぎしりと何かが軋むような音がギルドマスターの方から聞こえてきた。
「人間の体に術式を込めた魔獣の魔石を……」
全てを話終えると師匠は信じられないと悲痛な顔をしたが直ぐに何かを考え込んでしまった。
ギルドマスターはフラリと立ち上がるとフラフラと俺たちの横を通りすぎると縄に縛られたウルバを掴みあげるとおもいっきり顔面を殴り飛ばした。
「てめぇ、よくもうちの娘に………今すぐ殺してやる!」
「やめな!今はそんな男に構ってる暇は無いはずだよ、術式すらそいつの作ったものじゃない。そんなやつ痛めつけてもなんにもなりゃしないよ」
「んなこたぁ、俺だってわかってる…………わかってるがよぉ!じゃあ俺は一体どうしたらいいんだ!この悔しさを!苛立ちを!どうしたらいいんだよぉ……」
そう殴り飛ばした男をもう一度掴みあげようとするが師匠が止めると、ギルドマスターはそのまま膝から崩れ落ち地面を思いっ切りと叩く、その拳からは今の衝撃で手の皮が裂けたのかじわりと血が流れる
「俺の親友がこんな姿になってまで娘のために命かけたってのに………肝心の俺はなんにもしてやれねぇ……くそ、なんなんだよ...うぅゔ、、ゔゔ」
広間にギルドマスターの啜り泣く音が響き渡る
俺のあの時の行動は本当に正しかったのだろうか、あの時ボックさんと別れずに対処していけば、そもそもエリが家に帰る時俺が家まで送っていれば、魔法が使えると知った時もっと師匠に頼んで調べてもらえばそんな後悔が頭の中を埋め尽くす
また俺は救えないのか………
視界が揺れ、上手く立っていられず後ろに倒れてしまった。
「娘一人助けれねぇで……何がギルドマスターだ...頼むよ、教会なんだろ…………神様でも神様じゃなくてもいいから助けてくれ...俺の娘を助けてくれよ………」
「一つ方法がない訳では無い」
どうしようもないと半場諦めの空気が漂った時、師匠のいつもより低い声が無音となった広間の中を木霊する。
「ほ、本当か!方法があるのか!」
「確実ではないが一つだけ」
「なんでもいい!頼む!魔術か?禁術か?どんな方法だっていい!必要なら俺の命だって使っていい!だから頼む、娘を親友を助けてやってくれ……ッ!」
師匠のその言葉に素早く顔を上げたギルドマスターは師匠の元に這い寄り足元で土下座をする。
救う手段がある...!二人は助かるのか
すると何故か師匠は俺の方を見てき
「コハク、もし今からこの二人を救うために私が力を使ったならこの街に、あの家にはもう居られなくなるがそれでもいいかい?」
街に居られなくなる?どういうことか分からなかったがそんなことは気にしていられない。
「もちろんです、師匠が言うのですから大丈夫だとは思うのですが本当に救う手立てがあるんですか?」
「あぁ、血を飲ませるんだよ。ただ説明をしなければいけない以上どうしても種族明かさなければならない」
なるほどそういうことか
「な、なんの話しだ?種族って一体?」
俺たちの話についていけないギルドマスターがあたふたと俺たちを見る。
「ダグマ、今二人は重度の魔力枯渇状態でエリちゃんに至っては外から別の魔力を入れられ体の中で魔力が馴染まず体の中で拒絶反応を起こしているそれはわかるね」
「あ、あぁ。」
「魔力枯渇を回復するには内と外から魔力を与えてやらなければならないだから二人には私たちの血を飲ませつつ魔力供給の魔術をかける」
「血って言ったっていくら魔力の多いあんたらでもそんな飲んですぐ回復するもんなのか!?」
「私たちは人間じゃないからね」
「人間じゃないって…」
そこまで言うと師匠は背中から大きな翼を出す。
「コハク、お前にも手伝ってもらうよ。ローブはもう外していいよ」
言われるがままローブを脱ぐ、ギルドマスターの目には俺の顔が鮮明に写っているだろう。
「な、あんたらは一体何者なんだ」
「あたしらは魔人なのよ、お前たち人間が持つ魔力とは比べ物にならないほどの魔力で体はできている。あたしらの血を使って一時は魔力回復薬が作られた時もあるくらいね」
「魔人って……」
「師匠俺は何をすれば?」
「まずはボックさんの方の治療を先にするから、コハクはボックさんに魔力を渡すイメージをしな」
師匠はそのままどこからか手にしたナイフで自分の手首を切ると大量の血が流れる。
「準備はいいかい?コハク」
「はい!」
俺は横になっているボックサンの隣に座り魔力を渡すイメージをすると、グングンと想像以上に魔力を吸われる感覚がする。
師匠もボックさんの口元に血の流れる手首を持っていき血を飲ませている。
むせ返るような様子はなくしばらくそうしていると
「ごほっ、がはっ!はぁはぁ、ここは……」
「起きたかボック!よかった!」
「ダグマさん?それにツクヨさんにコハクくんまで……そうだコハクくん、あの男は!?」
「あの男ならあっちで伸びてますよ」
ボックさんは起きると周りを見渡し俺の顔を見て気を失う前のことを思い出し始めたらしい。ひとまず落ち着かせてここまでの事情を説明した。
「な、なぁ!エリも早く助けてくれよ」
「そ、そうです!おねがいします!」
ギルドマスターがいてもたってもという感じで頼み込んでくるが師匠はエリに向かい治療をする様子がない
「師匠?」
「その前に確認がしておきたくてね、ダグマ、エリちゃんはこのまま助けても人間には戻らない」
「え?」
「少し原理は違うがこのまま同じように私たちの魔力を与えたところで彼女はこのまま狼族のままだ。それでもお前はいいのかい?獣人となった娘を今までのように育てられるのかい?」
師匠は今まで見た事のないほどの冷たい目をギルドマスターに向けた。
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