13.女の子はちゃんと家まで送りましょう
そんなことがあったのか
「その後両親にはこっぴどく叱られるし熱で倒れてまた心配をかけることになっちゃったんだけどね」
まぁそりゃ怒られるだろ
「だから私にとって先生は命の恩人なの、そんな人の助けになりたいと思うのは当然でしょ?」
確かに、そんなことがあってその人が苦労しているとすれば助けたくもなるか
「だけどそれならなおさらあんなこと言ってよかったのか?」
「うっ、わかってるわよ。でも」
「ボックさんのためにしていることが理解されなくて悲しいんだろ?」
「わかるの?」
「なんとなくね」
下を向いていたエリの顔がはっと上がる
「俺も師匠には普段から色々世話になってるけどまだ何も返せてないからな、そのヤキモキした感じは少しわかるよ」
なんせうちの師匠はなんでも出来てしまうのでしてあげられることがないのだ
「容量が多少悪くても恩を返せてるだけエリは立派だと思うよ。だからボックさんに心配をかけてまで魔法にこだわらなくてもきっとエリの気持ちは伝わってるよ」
エリはぼーっとこちらを見たあと薄く笑う
「ふふふ、コハクってばなんだかパパみたいなことを言うのね」
エリの両親がいくつか知らないが前世合わせても子供がいるような年齢では無い
大人ぶった言い方になってしまったか
「そっか、気持ちは伝わってるか。あ!いけない、もうこんな時間!」
空を見て焦る姿につられて俺も空を見るともうだいぶ遅めの時間だ。
話を聞いてるうちにだいぶ時間が経っていたようだ。
「ママが先生のご飯用意してるはずだから取りに行ってくる!」
「このまま一旦ボックさんのところに戻らないのか?」
「そんなことしてたら日が暮れちゃうわ!大丈夫すぐ持ってくるからそれに遅い日は先生が送ってくれるしね!」
そう言うとそのまま家の方に向かって走り出していった。
俺も師匠のところに戻るか
そのままボックさんの店に戻ると難しい顔をした師匠がいた
「もどりました。どうしたんです?何か問題でもありましたか?」
「あぁ、おかえり。コハク、明日帰る予定だったけどもう少し残るよ」
いよいよ、何か問題があったのだろう
「公園で魔法を教えている男、本格的に調べてみる必要があるね」
むむむ、なんだなんだ?詳しく教えてくれない師匠に疑念の目を向ける
「そんな目で見るな、宿に戻ったら教えてやる。私もまだあまり整理ができてないんだ」
「分かりました、もう宿に戻りますか?」
「そうね、今日は暗いし本格的な調査は明日からにしましょ。ボックさんもそれでいいですね?」
「もちろんです、ところでどちらの宿に泊まってるんですか?明日僕がそちらに行きますので」
そういえば宿の名前知らないな
とりあえず軽く道を教えると
「あぁ、『海の家』ですね。あの魚料理だらけの」
あそこそんな名前だったのか
「ではまた明日」
とりあえずその日は解散することになった。
師匠と宿に向かいながら話す
「それで一体どうしたんですか?」
師匠は何から話したものかと少し考えると
「まず、人間は十二にならなければ魔力は感じられない。これは本人の才能どうこうの話じゃない。人間の構造上絶対だ」
「でもエリは使えてましたよ」
「そこなんだ、彼女は魔力を感じるどころか操っていた、しかも聞けば彼女は半年前までは少なくとも魔力を感じていなかったそうだ」
半年前……
「つまり彼女は半年で魔力の流れをつかみ扱えるようになっていた。これは異常だよ、何らかの人体実験を疑うレベルだ」
「公園に男が現れたのもエリから半年ほど前からと聞きましたよ」
「そうかい、なら十中八九そいつが何かをしたんだろうね」
「でも魔力を使えるようなったからって何か問題があるんですか?いい事だと思うんですけど」
何に対してそんなに師匠たちが深刻になっているのかが分からない
「いいかい?生物の体は今の世界を生きていけるよう完成されたものなんだ、彼女のが自然とそうなったのであればいいが、人が手を加えてしまえば後にどんな悪影響が出てくることか」
なんとなく言わんとしてることはわかってきた
「ましてや、その男は不特定の子供を集めどんな手を使ったのか分からないが魔力を子供でも感じられるようにしている。正しい術を使用しているならまず王国に申請すれば爵位贈呈ものなのにそれもしない」
たしかに後遺症もないのなら全ての人類がその方法を知りたいはずだ
「だから考えられる理由としてはまだ実験段階にあり公表する前の試作なのか、はたまた誰かに貰った術をどんな効果が後々あるかも知らず使用しているか最悪のケースとしては国には認められないような悪質な術と知っていてしようしているのか。」
どれにしてもろくなもんじゃないな
「これで分かったろ?そもそも人様の家の子にしている時点でろくなもんじゃないのさ」
「にしてもその男は何者なんですか?それだけ怪しければ衛兵に既に捕まりそうですけど」
「それが、ボックさんは一度その男の後をつけたらしいんだがどうに最近できた教会の人間みたいでね」
「教会ってこの前のですか?」
「いや、そことは別のエリの家から城壁の方に近づいたところに最近できたらしい」
あそこの教会はひりつく空気はあったがなんとなく悪意を感じるような場所ではなかったからな
「衛兵に報告はしてないんですか?」
「一度したらしいんだがなんでもその教会はタンディー伯の庇護下にあったみたいで取り合ってくれなかったそうだ」
あのつり目の男の顔を思い出す
「師匠、ここの領主はまともだったんじゃなかったんですか?」
なんだかんだ世話になってるみたいなこと言ってた気がする
「そうだな、こんなこと許すようなやつではなかったと思うんだがな、明日少し問い質すとするか」
「そういえばエリは間違いなく人間なんですか?他種族なら魔力を扱える場合はありますよね?」
「彼女は間違いなく人間だよ、魔力の流れを見ているからそれは間違いない。両親も人間だしね」
そういえば師匠はエリの両親と面識があるようだった
「むしろ人間じゃないのは……」
「何か言いました?」
「いや、なんでもない。今あれこれ考えてもしょうがない、明日から色々と調べてからだな」
話していたらいつの間にか宿についていたので中に入り宿屋の主人に戻ったことと滞在期間の延長を伝え食堂に行く。
「そういえばしばらくこの宿に滞在するんですよね。」
「ん?まぁわざわざ宿を変える必要は無いからな?それがどうしたんだ?」
「いや、しばらく魚料理が続きそうだなと」
「あぁ……」
この宿屋部屋も綺麗で主人もいい人なのだが料理のメニューが魚だらけなのだ。絶品だと言える腕前ではあるんだがそれでも魚だけというのは辛いものがある
「ま、まぁお昼はどこかで食べることにしよう」
「そうですね」
その日は師匠とサラダに魚のフライとスープを頼んだ。朝もそうだったが地味に量も多いのでまた二人で半分こしながら食べた
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二人でお腹をふくらませながらなんとか完食することが出来たのでそのまま自分たちの部屋に戻ることにした。
一応部屋に戻る時明日の朝ボックという男が尋ねてくるのでその時は教えて欲しいと伝えておいた。エリじゃないから朝みたいな騒ぎにはならないと思うが来るとわかっているなら伝えておいた迷惑をかけないだろう
少し考えエリが来た時も教えてくれと伝えた。
特に約束はしていないが今日の朝の様子的にもなんか来そうな気がする。
部屋に戻りお風呂に入りもう寝るだけの状態になり明日の予定の確認をする。
「師匠、明日はボックさんが来たら先ず領主邸に行くんですか?」
ちなみに師匠はモコモコのガウンのようなものを着ていてパッと見セレブなお嬢様だ
俺?俺は普通の今日買ってもらった真っ白なパジャマだ。
なんか変な三角の帽子はかぶせられているけど。
「そうだね、領主に直接問い質して何を考えてるか聞き出せればその後その教会にでも行こうかね。」
「意外とそんなに時間はかからず解決しそうですね」
「犯人の所在も誰の管轄下もわかっているからね、むしろ子供たちのケアの方が時間はかかるだろうね」
「にしてもホントなんのためにやっているんでしょうね」
よその家の子供が早く魔法を使えるようになって一体なんのメリットがあるんだろう
それか師匠の言うとうり実験の段階なのだろうか
「さぁね、それも近いうちにわかるさ。ほら明日も早いんだ早く寝るよ」
師匠がベットに入るので俺も隣のベットに腰掛け壁に付けられた魔石に触れ部屋の電気を消そうとした時
ドンドンッ
ふと部屋の扉を叩く音がする
なんだと思い師匠と顔を見合わすと
「お休みのところ申し訳ないです。タイサバです。ボックという男とダグマと名乗る人物が来られてて二人をお呼びなんですが」
タイサバというのはこの宿屋の主人の名前だ
知っている名前がふたつも出たのでそのまま扉越しにすぐ下に向かうと伝え着替え一階に降りると慌てた顔のボックさんとあれは……
「どうしたんだい?こんな夜遅くに大の男二人も慌てて。方や冒険者ギルドのマスターなのに」
そうだ、冒険者ギルドで少し話した大柄の男だ。
つまりダグマというのはギルマスの名前でエリの父親は冒険者ギルドのマスターだったということか
道理で師匠が知っているはずだ。教えてくれても良かったのに
しかしそんな二人がこんな夜遅くに……
少し嫌な予感がする
「エリが言ってた二人ってのはあんたらのことか?!いや、それは今はどうでもいい。ここにエリは来てないか?」
「エリ?来てないよ?ボックサンの料理を取りに家に帰ったんじゃなかったっけ?」
「本人はそう言ってましたよ?」
確かに家に帰って料理を取ってくると言っていた
「家には戻ってきてねぇんだ!あまりにも遅いからボックのところに向かってる途中でこいつと会って一回出てってから戻ってないと言うし」
ギルマスのダグマは身体中から汗を流し焦ったように叫ぶ
「僕も料理を持って来ると聞いていたのに日が落ちても来ないので何かあったのかと思いダグマさんの家に向かってる途中で」
「それでもしかしたら二人のところに来ているのかもしれないと思って」
なるほどそれでここに来たのかしかし
「落ち着きなさい、エリはここには来てないんだ。考えられるとすればどこかで怪我をして動けないでいるかもしくは攫われたか」
「攫われただって!?」
ギルドマスターが叫ぶ、ここは宿の入口で食堂から丸見えなのでほかのお客さんが驚きこっちを見る
「声が大きいよ、一旦外に出よう。」
四人で宿を出て話を戻す。
「攫われたってなんでそんな!?」
「ボックさん、ダグマにはあの事件のことは話しているのかい?」
「いえ、しっかりと安全を確保できてから話そうかと思っていたのでまだなにも」
「そう、それじゃひと通り話してあげな」
そう言うと簡単にボックさんはギルドマスターにエリを含めた数人の子供に魔法を教えている男がいることを話し始め話し終えた頃にはギルドマスターは頭に血管を浮かび上がらせボックさんの胸元を掴んでいた
「ボック!なんでそんな大事なこと黙っていたんだ!」
「言ってもしょうがなかったんです!話してもエリちゃんはこっそり行ってただろうし、衛兵に言っても無駄だったんですから!」
「それでも俺が知ってれば他にも……!」
「そこまでにしな、今二人で言い合ったってしょうがないでしょ。まずはエリちゃんを探すことが先決だよ」
掴み合い言い合う二人を師匠が止めそれに納得したのか二人とも手を離す
「攫われたとすれば彼女を狙ったのかそれとも誰でもよかったのかだけど」
「エリは狙われて攫われたんだとおもいます。それもエリが警戒心を抱かない人物に」
急に話に入りこむ俺に男二人は驚く
「どうしてそう思うんだい?」
「エリが家に走っていった時間は遅くはあれどまだ明るく人の行き来も多かったです、もしエリが知らない人物にさらわれたとすれば抵抗するはずなので周りが何かしらどこかに報告するはずです」
「たしかにね」
「そして、エリが警戒心を抱かず怪しい人物だったらひとり心当たりがあります」
「魔法を教えた男か」
「はい、もちろん偶然エリがさらわれた可能性もありますが」
「つっても、その男が攫ったとしてどこに連れてってたかなんてわかんねぇじゃねぇか」
ギルドマスターが焦りながら聞くと
「いえ、それなら可能性の高いところがひとつ思い当たります」
「そりゃどこだ!?」
ボックさんは顎を触りながらギルドマスターの疑問に答える
「教会です」
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