はじめに。
先日ポストに、一通の手紙が届いた。
それは、薄い黄色の、やさしい色の封筒にはいっていた。
手紙はしろの、やわらかな無地の便せんに書かれていた。
手紙の文字は、お世辞にも上手とは言えなかった。
しかしその筆跡には、とても好感が持てた。
これを書いた人物はきっと、善良な人物なのだろう。
手紙相手に向けられた愛情、とでもいうようなもの、
それが手紙の節々、行間、すき間といったところに、
見え隠れしつつしっかりと、読み取ることが出来た。
しかし問題が、ふたつ程あった。
一つ目の問題、それは差出人の名前がないことだった。
二つ目の問題、それは受取人の名が違っていることだった。
樫山という姓、たしかにこれは合っていた。
が、それに続く名、これが明らかに違っていた。
たしかに。
私の名にも「泰」の字は入っている。
しかし、
私は歴とした男だし、女性の名を騙る趣味もない。
きっと只々差出人は、送り先を間違えたのだろうが、
いや……、
あるいは、他に、おくる先がなかったのだろうか?
この、まるで別の世界から滑り込んで来たような、
イメージと構想は、少なからず私の背中を押した。
勿論、いつもと同様、まだ形にはなっていないが。
物語を始めるきっかけなど、大抵がこんなものだ。
そう。
なので今回試すのは、
悲運な手紙と差出人を、
元の相手に渡すこと、
元の世界に戻すこと――それだけである。
それでいいよね? まひろくん。
そう。
つまりはこれから皆様に、
ご披露し上げるこの物語は、
いつも通りの変わらない、
書いてみないと意味不明、
書いたあとにも意味不明、
鬼の出番かそれとも蛇か、
天使や悪魔も出はするが、
それらは見ての、お楽しみ。
本題:SHEEP
副題:目下、検討中。
先ずは一場の、はじまり、はじまり。