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赤鱗の龍  作者: 犬海
1/1

竜頭蛇尾

この物語は架空の人物によるフィクション小説です。

東京には「赤い龍」がいる。

この話をしても多くの人が頭に「?」を昇らせているのが想像できる。

それもそのはず、実際にはいないのだから。

大事なことなのでもう一度言うが、赤い龍は実在しない。

なのに、なぜだろう。

私の祖母は昔からよく口ずさむ。


「東京にはね、()()()がいるんだよ」

 



たった今、高校生達は夏の代名詞である修学旅行の班決めを行っていた。

内心ではクラスで思いを寄せるあの子と一緒の班に…なんて思いながらも、神様は実在するわけもなく…。

いや、悪魔なら実在するかもしれない。


「とりあえずどこ行くか決めよー」

「私、東京っぽいとこならどこでもういいよ」

「じゃあチームラボとか?」

「それいいね!別の班と合流して写真撮っちゃおうよー」


なんて会話が聞こえてくるが一応僕もこの班に在籍している。

メインの行き先はこの二人の女子が決めている流れになっており、残りの僕含め4人は相槌や賛成の意思を返して進行していた。

だが、僕にだって行きたいところがあるのだ。

「ちょっといいか」と声を出す。


「さっき東京っぽいところ行きたいって言ってたから、東京タワーとかどうかな」

唐突に喋ったせいか全員がこっちを見て、感覚5秒ほど沈黙が続いた。


「全然あり!めちゃナイス!」

「完全に東京タワーのこと忘れてたわ笑」


少しだけ感触があったので、もう少し踏み込んでみよう。


「じゃあ、エアーウォークって知ってる?」

「あれでしょ?東京タワーを階段で登る的な」

「そう!みんなで東京タワー登ろうよ!」


我ながら誘導が上手いと思い、これで理想的な旅行プランに仕上がると思ってしまった。

だが、ここからは意外にも思っていた反応と違ったのだ。


「あー、面白そうだけど…」

「いや、ぶっちゃけなしでしょ」


なし。


この言葉が出るとは予想もしなかった。

しかもこの会話をきっかけに、急に沈黙が解禁され始めた。


「俺も登らないにさんせー。さすがに登るのはめんどいって」

「いや、でもせっかくだか登るのも楽しいと思うんだけど…」

「なら一人で登ってくれば?笑」

「上から写真撮って送ってあげるよ!」

「さすがにそれはエグいって笑」

「じゃあ別行動でいっか!」


さっきまで黙ってた奴等のくせに、急に否定だけしてきやがって。

行動計画書は形だけのモノを先生に提出して、「あとは当日話し合おう」ということでまとまった。




そして迎えた東京一日目。

独断決行!!


つれない班員にはしびれを切らせたので、待ち合わせ駅は通過して赤羽橋から目的地まで直行した。

そしてやっと辿り着いた東京タワー。

待ち望んだ青天井に突き抜けていく東京タワーを眺めているとLINEの着信音が鳴った。

きっと先生に怒られるから、とか言って脅そうって魂胆なのだろうが、生憎こちらはこれから忙しくなるんでね!

そういって携帯を閉じて、麓まで足を進めた。



ところで、これを読んでいる読者諸君。

この四行前の自分をどうか殴ってほしい。

なんなら文字を切り裂いてでも止めて欲しい。

なぜなら、東京タワーの階段は全部で600段もあるのだ!

帰宅部エースの僕には時間がたくさんあるけど、こんなことを下調べする時間はなかったのだ。

なおかつ、強靭な体力がないのは言うまでもない。

とにかく始めてしまったからにはしょうがないから、無言で登るしかなかったのだ。


「しっあわっせはー、あるいてこっないー、だーから歩いていくんだねー」

さっきまであれほど無言で登ってたのに、一人で何を歌っとるんだ僕は。

数分後には頭がおかしくなったのか、ずっと三百六十五歩のマーチを口ずさんで5周目くらいだった。


さぁ、いよいよ限界がくるぞ!いや、もう来てるか!という時だった。

突然目の前に「Last Floor」と書かれた看板が現れた。


やっと到着だ!(そもそも何で登ってたんだっけ)


とにかく目的を達成するのは気持ちがいいというもので、一瞬だけ涙が出そうになった。

堪えて踏み超えた最後の階段。

目の前には壮大な東京の景色が広がっていた。

まるで自分のものと独占できてしまうかのように思えるほどだった。


「こんな景色を見れないなんて、あいつらも残念だろうなぁ!」


誰もいないので、とにかくでかい声で叫んでおいた。

「あっ、そうだ」

そう思って、ポケットから携帯を取り出すと、写真を一枚撮った。

枠に収まらないのが残念だが、あいつらを後悔させるだけの力はあるだろうと納得した。

そうしてLINEを開いてグループに写真を投稿した。

思っているよりも高い場所のせいか、アップロードに時間がかかっている。

その間、鉄柵に寄りかかり、東京の街を見渡していた。



呆然と眺めていたら、時間があっという間に過ぎていた。

いかんいかん、と振り返ったその時。


ドンッ!


突然背後から押し出され、気づいたら真っ青な空に投げ出されていた。

眩しいほどの快晴のせいで、上空は何も見えなかった。

ただ、ニヤリと笑う歯だけが僕を覗いていた。

初投稿作品になります。

誤字などがあってもお許しください。

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