5/39
5
一週間後――
「お嬢様~~~!」
カフェでの仕事を終え、家に帰るなり、百合亜の元に物凄い勢いで十祈が駆け寄ってきた。
「どうなさったの? 十祈さん、血相を変えて……まさかお父様の身になにか……?」
「そ、そのような不吉なお話ではございません。どちらかというと、朗報と言ってもいいかも知れませんわ」
汗を飛ばしながら、興奮気味に言葉を紡ぐ。
「朗報? まさかと思うけど、借金返済のメドがついた……とか?」
百合亜は探るような視線を向けながら、尋ねた。
「――というほどの朗報ではございませんけど、とりあえず、あのヒヒジジイとのお見合いを破談に出来そうだという気が致しましたの」
「ええ? それはいったい……」
「現れたのでございます」
ずい、と前に出た十祈が不敵な笑みを浮かべる。
「な、なにが……?」
「お嬢様を……西園寺家の救世主が、ですわ!」
「救世主?」
うっとりと手を組む十祈を前に、百合亜は首を傾げた。