試練の夜、魔族との壮絶な戦い
俺は、アリエナに人差し指を向けた。その時、アリエナが左手を突き出した。
その瞬間、力が抜けた。何か魔法でも使ったのか? 身動き出来ない…なんだこれは!
俺は膝をつき、地面に手をついた。
「随分不思議そうなツラしてんな。良いぜ、冥土の土産に教えてやる。俺はな、左手で相手の魔力を封じる事が出来るんだ。もちろん動きもだ。つまり俺はタイマンでは、無敵なんだ。」
そんな…無敵だと…ぐぐ…こいつ、今までの敵とは、レベルが違う。こいつ1人だけならともかく、他に2人もアリエナレベルがいるなんて。おかしいだろ! こう言うボスって最初は、1人で来るもんだろ。
俺は心で愚痴った。悔しい…何も出来ないなんて。油断したのか? 100体の魔物をあっさり倒したから…確かに気の緩みはあったかもしれないが…こんなの予想出来るわけない。
そうこう考えていると、アリエナが近づいて来た。
「相手が悪かったな。その状態で、お仲間がやられるとこでも見てるんだな。ふふふ。顔だけは、動かせる様にしてやるよ。俺様は優しいだろう。」
アリエナが不気味な笑みを浮かべて、レニスの方を見た。
俺も今は、レニスを応援するしかない…
おい、ラピディフィカ! 石化させちまえよ、そのガキ。
コンクルカってやつが、ラピディに指示をする。
「する暇がないのですよ。」
困り顔でラピディが言う。
その言葉に俺は、レニスの強さを再認識した。
本当に彼女は強い…それに比べて俺は…敵に捕まっている。情け無くて、胸が痛む。
「仕方ねぇな。俺が隙を作ってやるよ。
コンクルカがそう言って、爪を伸ばして凶器にした。魔族は爪を凶器に出来るやつが多いと母に聞いたが…かなり鋭い。あれで引き裂かれたら、相当な激痛をうむだろう。
「そらそらそら!」
コンクルカが爪をレニスに向けて振り回しで攻撃した。それをレニスが受け流し、疾風の如く、コンクルカの背後に回った。
「イッテェ!…こいつ本当に化け物だぜ!
レニスがコンクルカの背中を切り付けた。普通なら重症を負うはずだが、あまりダメージがなさそうだ…それが魔族の頑強さを感じさせた。
言ったでしょうが! ですが…これで終わりにしましょう。師匠でしたか? その者と同じ目に合わせてあげましょう。
「バカな! 石化しないだと?」
ラピディが驚愕した表情で、何度も自分の手と、レニスを見た。
「へへん、私には、状態異常効かないよ!」
そう、レニスには状態異常の魔法やらは、全て無効なんだ。多分アリエナのこの魔法も効かないだろう。
「どけ! 俺がやる。グランドリフト!」
コンクルカが地面に手をつき、魔法を使った。地響きが起きて、レニスがよろけた。
地面から、鋭い巨大な岩がレニスに向かって行く。
レニスが左方向にジャンプして避けた。さすが…そう思って感心した。
「バカめ! 読んでるわ! ソニックインパクト!」
コンクルカが左手から衝撃波を発した。物凄い音だ。耳に痛みを覚えた。
レニスが吹っ飛ばされた。
「レニス!」
俺は思わず大きな声で、レニスに叫んだ。
「マギ! 凄い音が聞こえたけど…魔族!」
母さんと、ティミがさっきの音で目が覚めたのだろう。心配そうに、自宅の部屋から出て来た。
「えっ…魔族! うわわぁ」
ティミが、尻餅をついて、後ろに下がって部屋の奥に引っ込んだ。
「母さん、気をつけて! この魔族の左手は、魔法を封じる。」
大きな声で、母に警告をした。
「母さん? ククク…こいつは良いぜ、傑作だ。おい! ターゲット発見したが…フェミナの息子が手中にあるなんて、運が向いてるぜ。」
しまった! 母さんの命が狙いか。余計な事を言ってしまったか。
「マギ今助けるからね! 私相手に勝てると思ってるのかしら? 早く息子を解放した方がいいと思うけど?」
「そいつはどうかな? 魔法を使えば、この息子の命はない。それでも良いなら、歯向かうといいぜ。果たして出来るかな?」
アリエナが俺の首に爪を立てた。
「くっ…汚いやつらめ。」
母が批判した。当然だ。くっそ、俺はアリエナを睨んだ。
「殺し合いに汚えもクソもねぇんだよ。勝ちゃ良いのさ。俺はその為なら、なんでもする男だ。」
アリエナが怒鳴って言った。
「おい、コンクルカ俺がこのガキ抑え込んでるから、その隙にフェミナを痛ぶれ。」
なんだと…俺はその言葉に衝撃が走った。嫌だ…俺が母の足手纏いに。ふざけるなそんな…こと。
「ああ、良くやった、アリエナ。2度と俺たちに逆らう気を無くしてやるぜ。もっとも、その時はあの世に行ってるだろうがな。」
コンクルカが母に…見てられない。俺は心で泣いた。目をつぶっても、嫌な音が俺の耳に入ってくる。
母さん…俺は目を見開いた。血を吐いてる母が目に入った。
…誰か助けて…誰でも良い。お願いだ。
「はは、マギとか言ったか? しっかり見とけよ。母親の最後をよ。」
ソリス・フラクトゥラ!
誰かの声がした。その瞬間アリエナの左手が吹っ飛んだ。
この必殺技は…確か…ティミの…そうだ、ティミが俺を助けてくれたんだ。
自宅の入り口から、彼が弓矢に魔法を乗せて攻撃したんだ。
「ぎゃゃあー。腕が…腕がぁ!」
アリエナが悲鳴をあげた。
…動ける…動けるぞ! ありがとうティミ…早く母を回復して助けないと。




