プロローグ
目を開けるとそこには、見知らぬ顔があった。
なにがどうなっている? ふと、自分の手を見つめると、赤ん坊の様な手であった。
なんだこれは? ここは、病院じゃないのか?
一体なにが起きた?
パニックになりながらも、首を傾げて記憶を辿った。
そうだ、俺は友達の彼女を庇って、ストーカー野郎に刺されたんだ。だからここは、病院の筈だ。
しかし、起き上がれない。後遺症か?
何か、目の前の女性が喋った…なに言ってるんだ?
全く聞き取れない…外国人の医者か?
確かによく見ると、綺麗な金髪で、眼を見張るほどに綺麗な外国人であった。鼻筋は細く、人形の様に頬がスラリとして肉付きがない。
歳は…20代ぐらいに見える。
俺は言葉が通じるか分からないが、試してみることにした。
うん? 上手く喋れないな?
そう考えていると、外国人の女性が徐に胸を曝け出した。
…ちょっ…なにやって…痴女か? そうなのか? おい今度は俺を持ち上げたぞ? 持ち上げた?
どうやって? おわっぷ…胸に押し付けられた。
これは…俺赤ん坊になってる? そうか!
夢ってやつか。刺された後遺症で、長い夢を見ている。
そうと分かればミルクを飲ませていただきます。
しばらくミルクを飲んでいると、茶色のドアが一気に開けられた。
男か! これは…ミルク飲んでる所を奇襲するとは、夢だが、この男やるな!
男は、鎧を身に纏っている。痩せ細っていて、騎士見たいな格好をしているが、とても弱そう。俺の方が強そう。
しかし男は恥ずかしそうに、手で顔を隠した。
隠すくらいならノックしろよー。
そう思った。だがその瞬間…男は、真っ二つに割れた。
ひぇ…さすが夢…覗きの天誅でござるか? なんか夢にしては、リアルな血飛沫だ。
男の背後に、長い鋭利な刃物を持った、ゴブリンのコスプレした男がいた…うわー怖っ。そう思っていると、女性が俺を白い揺籠に戻した。
なに…見れないじゃないか? 揺籠の柱が邪魔だ。
ゆっくりとこちらに向かってくるのが、柱越しに見えた。コスプレ男は、恰幅が良くてさっきの騎士見たいな格好のやつとは、雲泥の差だった。
緑色のゴブリンマスク…まるでコスプレとは思えないほど、不気味な表情をしている。
目は赤く腫れぼったく、鼻は鋭く尖っている。口は、鼻で隠れてよく見えないが、歯は鋭く尖っていて、ドラキュラを思わせた。
鼻息が荒く、それが耳に届くほどだ。
刃物には、先程男を斬った血痕が付着していた。
こいつそれを舐めている。ヤバいやつだ。不気味なケタケタと不気味な笑い声が聞こえて、耳を塞ぎたくなる。
その時ゴッと鈍い音が聞こえた。なにぃ…こいつコスプレ男、女性を殴りやがった。とんでもないやつだ!
こいつ死ね死ね! 俺は、人差し指で指して言った。すると指から何か光線の様なものがゴブリンの顔を貫いた。
さすが夢だ。コスプレ男を退治成功。女性に暴力振る奴は死んでも自業自得だな。
俺は満足して眼を瞑った。夢から覚めるために。