9ケーブルTV
僕のバイト先にケーブルTVが来た。誰かの投稿で取材に来たのだろう。
クルーはデレクター1人、カメラ、音声、照明さんに、あまり売れてない吉本芸人の司会で始まった。
お題は、福ちゃんの腹話術喫茶。司会が
「はい、本日は40年以上続くモールの喫茶店からでーす。何が有名かって?ずっと続くオリジナルのコーヒーの味、香り、ピザ。それと、なんと、此処には腹話術人形の福ちゃんが珍客として、いつもカウンターにいます???今日は双子?」
2体の人形が打ち合わせ通り登場。人形を操るのは元教員の自称この町の腹話術人形協会の会長と出たがりババアがディレクターの指示通りに、人形は仲良く絡み合いワーワー腹話術の言葉で始まり、マスターに司会がマイクを向ける
「こんにちは、マスター ここは可愛いお客さんと、昔可愛いかったお客さんの交わる店ですね」
マスターはすかさずカメラに向かって
「はい、私は人との出会いを大切にする喫茶店をやってまいりました。そこでこの人形と出会った瞬間ビビッときました。お客さんに楽しんでもらえるって、ね〜」
そこで常連客は『イェーイ』と打ち合わせ通り歓声を上げる。
1人ずつ人形を回してインタビュー。
取材は終わった。その中に元中華料理店の大将と姐さんの顔も。姐さんは福ちゃんを抱かなかった。それはチャッカリ自分自身で福ちゃん人形を購入してたのです。
その後女子高生は来店するわ、親子連れも来店。
マスターはメニューにキャラメルマキアート、カフェラテを追加するなど、さすが商売人抜け目がない。
流行りと言うものは残酷なもので、同じような店が出没するあり様。この町に福ちゃんのコピーが何体?20体程存在する街になった。
しばらくするとケーブルTVから録画のDVDが届けられ、一連の流れが映し出された。
その中でマーガリンをぬったモーニングトーストを食べながら、コピーの顔にマーガリンの付いた手で撫でた瞬間
「オイ!じじい!俺のマブダチの顔に油をねじり付けるな!デリカシー無いのか」
確かに聞き覚えのある福ちゃんの声が録音されていた。