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8福ちゃんのバイト

福ちゃんをカウンターの端の席に鎮座してしばらくして、常連客の元お隣さん中華料理店の大将の姉さんが来店のち大将もカウンターに座った。


大将は病気を患い、ゆっくり来店。中華料理店は八百屋に貸してる。

姉さんは80過ぎ?歳を公表しない。

いつも元気で、いつもの濃いめのストロングコーヒーを注文のち隣の福ちゃんと目が合い


「かわいい〜マスター買ったの?」


「ガリバー君の所有」


 大将の姉はこう付け加えた。


「うだつの上がらないあんたにしてはガリバー君、店がパッと華やかになるね・・あんた、初めてのクリーンヒットよ」


 こころのなかで、『いらんお世話やほっといて 』と、つぶやいた。


「抱っこしていい」


 姉さんは、はしゃぎながら尋ねた 


「いいですよ」


 答えると、頭をなでなで、頬擦りしたり、高い高いして抱きかかえ「私の小さい頃は戦時中で貧乏だったし、人形なんか買ってもらえなかった。


「ああ嬉しい このお人形さん腹話術の人形?ガリバー君使い方教えて」


 僕もあまり知らないけど、一通りの使い方を教えてから30分ほど楽しんで大将と姉さんは帰った。


 姉さんは弟の身体を気遣いリハビリがわりに天候の悪い日以外は来店してくれる心優しい方。


 大将はマグカップでアメリカンコーヒーを飲みながら姉の輝いた表情を眺め心の中のかすみが少しは晴れるような顔をした。


 姉さんが遊んだのち大将がコーヒーチケットを2枚切るよう、いつも、僕にサインを出し、姉と席をたちドアのカウベルが鳴り、いつものように 『またのご来店をお待ちしております』と送り出した。


 ひと月もすると福ちゃんはほぼ常連客の人気の的となり、あっちの席こっちで声がかかり、いじられっぱなし。

 

 教員出身のおじいちゃんは腹話術人形の本を購入して発声の練習を数人で集う。


 おばあさんが、昔取った杵柄で洋服を作って着せてあげたり、福ちゃんは、小遣いをもらったり。


 福ちゃんがカウンターに座る日は僕がバイトをする日と決まっているのでもう1体を皆んなでお金を出すか、僕が連れて帰らず福ちゃんを店に置く提案が出された。


 僕は福ちゃんに尋ねると


「初めて人気者になったけどオジサンとの時間も大切にしたい」


 答えるので、ネットで販売の同じ人形を購入することが決まり、12万円で即購入したが問題は色々と発生する。


1.僕がバイトをする日は福ちゃんが2体居る


2.購入した福ちゃんはよく壊れて修理代がかかる


3.人形の取り合い←年寄りにも上下関係があるが如く睨み合いのケンカ


4.コミュニティ化


5.福ちゃんをワンテーブル1体


6.福ちゃんの嫉妬


1.の問題に対してはあまり騒ぎにならなかったが、ミッキーマウスは何体かあるが、同じ時間には何体ものミッキーは出没しない神聖なものだと愚問が飛んだが「あんた、知ってる自慢したいだけでしょ」と、一喝。


2.不思議なことに、もう一体の福ちゃんだけが壊れるセミオーダーだから修理にも時間がかかる


3.恐ろしいですね。ゲートボールでの年寄り同士の喧嘩が始まるように 長いとか 手荒くしてる などの言い争いは醜い。


4.静かにコーヒーをたしなむ方もおられる最中腹話術の練習に熱中し、コーヒー屋ではなく、コミュニティサロン化


5.最大の問題。僕の福ちゃんがもう1体の福ちゃんに嫉妬する。


「オジサン、アイツには魂が入ってない!」


バイトの帰り道、福ちゃんに話しかけられて返事に困った。


「こないだ作ってもらった洋服をなんでアイツが着てるんだ!」


「もう一体の福ちゃんは君に何か言ったのか?

あの人形はフルタイムでお客さんを楽しませてるんだよ色々な所に行けない。君は色々な所に行ったり、見たり、あの子と違う楽しみができる。だから、あの子は君のコピーなんだ。あの子は君を羨んでるだろう・・。だから快い態度で接してほしい」


 と頼んだ少しばかり反省したのか


「・・・オジサン、今度どこ連れてってくれるの?経験しなかった事をしたい」

 

 次のバイトの日は、もう一体の福ちゃんにお辞儀をして仲良くカウンターの隅に座ったら、マスターから


「明日ケーブルTVの取材がある」





告げられて僕の福ちゃんのTV出演も決まった。

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