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70大学生養子になってくれ

 華子の提案に僕も興味を示したが、簡単に養子縁組となると・・逆の立場を考えると、例えば僕が出世前の年に養子に迎える話が出たとしよう。


 断るだろう・・大学生は快い性格であるが故に話しづらいし、彼とは長く付き合いたい。


 ひとまず自然体で行きつけの喫茶店に向かい、彼と、たわいのない話でもしよう。


 市街地改装ビルの喫茶店に伺い、マスターに彼のことを聞いたが、就活で珍しく2週間ほど店に来ていない。マスターも困った様子で

「ガリバー、ワシもネットで欲しい物を彼に頼みたいし、お客さんも困っとるんよ」

 

 ネット時代。この喫茶店の周りは彼に依存していた為、ネットの文盲となり、世間様の常識から大きく水が開けられた者たちの溜まり場になった。


 簡単に福ちゃんに発した言葉から大変な問題になって、楽しい生活が遠のいた。


 福ちゃんに僕の悩みを相談すると


「どうでもいい、僕はオジサンの子供になりたかっただけだよ。深く考える、考えるほどおかしくなっちゃう。大学生のお兄ちゃん就活で大変だから喫茶店にコーヒーを飲みに来てないんだよ」


「福ちゃん、どうして僕の子供になりたかったの?」


「オジサン、怒らないし、怒っても僕の目線で怒る。優しいし、いろんな所に連れて行ってくれる。ここまで誉めたんだからなんかちょうだい」


「福ちゃん、いいこと言うね。飴玉1個の値打ちがある」


「オジサン、飴玉1個?お好み1枚の値打ちがあると思います。・・・アッ!オジサン、お好み焼き、お好み焼き。大学生の携帯に電話してお好み焼き誘えば?」


「福ちゃん、あいつ、お好み焼き誘えば、絶対来るもんな。福ちゃん、養子の話はオフレコで頼む」


「オジサン、ラジャー、ブラジャー、象印ジャー。早く、携帯、デラ焼き食べたい!」


「あのね、福ちゃん、オジサンの好きな豚玉がカローラなら、福ちゃんの頼むデラ焼きは焼きそばが入っていてクラウンやないの?カキ氷でも豪快な注文したよな」


「テヘ、オジサン、焼きそばとお好みが合わさって一粒で2度美味しい。細かいこと言わない」


 まずは大学生に電話して10回コールしたが出なかった。


 福ちゃんは留守電になったら、内容を伝えるよう指示した。


「もしもし、ガリです。お好み焼き食べに行かん?」


 すぐさま大学生から電話がかかってきた。


「ガリバーさん、俺、俺・・・」


「どないしたん?とりあえず、萌焼きに集合。今から来る?」


「秒で伺います!」


「10分後に集合」


 萌焼きの2階が大学生のワンルームだから僕達より早く着く。


それでは格好が付かない。


 先に僕たちはお好み焼き屋について、10分ジャストに大学生は来た。


おしぼりで顔を拭いてハイボールを2杯注文後、豚玉2枚に、福ちゃんのデラ焼き1枚をひとまず注文して乾杯。

 

 大学生は、いつもと様子が違うので僕から話をした。


「就活大変だね。地下の喫茶店のお客さんも心配していたぞ」


「あの〜俺、就職したくないです」


 40年前、僕にも混沌とした時期があり、障害物を乗り越える事なく、ベターとした生活を送ってしまった。


 僕はその事に関して何も言えないから


「こんな時は腹一杯食って、次に備えよう!」


 恥ずかしながら、このような事しか頭に浮かばなかった。


 僕たちはむさぼるようにたいらげ、同時に自分達の悩みも消化されてる気分になっていく。


 時に、食には不思議な魔法がかかる。次の注文を尋ねると、僕はネギ焼き、大学生はやきうどん、福ちゃんはデラ焼き。


「福ちゃん、またデラ焼き?」


「オジサン、萌焼きは創業30年以上の間に鉄板に味の妖精が宿って美味しいね」


「妖精?どこに?見えるのか?」


「洒落のわからないオッサンやね」


「ワハハ、ハハハ」


 鉄板のガスを消して、たわいのない話から僕は本題に切り替えた。


「なんで、就職したくないの?」


 しばらく沈黙がつづき、大学生は話し出した。

「ガリバーさん、とりとめも無く数社を訪問しましたけど、ぼくに合う会社が見つからなくって」


「君、贅沢な話に聞こえるが、将来、何がしたいの?僕の口から偉そうなことは言えないが、

学生時代は成績が悪くて内定をいただいたのは、三流の証券会社。当時、金融経済社会ではなかったので株なんてヤクザな商売だったから内定を断った。それからバイトで食い繋ぎ、いろいろな人の助けを借りてなんとかって感じだが、そんな環境はマレだと思う。上を見てもキリがなく、下を見てもキリがない。どんな仕事をしたいの?」


「SEの仕事がしたい」


「福ちゃん、SEって何?」


「オジサン、システムエンジニア」


「福ちゃん、システムエンジニアって?」


「オジサン、新聞読んでるんでしょ。アホ」


 1発福ちゃんの頭を叩いてから大学生に言った。

「シ、シ、知ってるよ。シ、シ、システムエンジニアはかなり、高度な職業と思うけど、現代の工場作業のようなもんだよね」


「ガリバーさんのおっしゃる通りなんです」


 ヤマカンで答えたが当たった。福ちゃんに握手を求めたけど拒否された。大学生は話をつづけた。

「ガリバーさん、僕は福井の農家の三男坊で奨学金で大学に通ってます。就職して少しずつ返済に回していくつもりです。就職しても離職率は、どの企業のSEは高く、SEの殆どが限界を感じ、40歳頃に退職する。結局、学歴が幅を利かせて要領の良いものが出世する。長男は公務員でそこそこ安泰で、将来は親父の農業を継ぐでしょう、次男は、関東で就職しSEをしています。次男の生活は仕事に追われる毎日で、国の労働基準法なんて疑問がのこり、身が持たない・・将来が不安で不安で・・」


 ふと、殿様の言葉が脳裏をよぎった。


『ワシに恩を返すな、コイツと思うヤツに返してやれ』


 まさしく、彼かもしれない。養子縁組など、どうでも良い。自信をつけさせる。それだけでいい。


 僕は大学生に頼み事をした。

「この腹話術人形、どう思う?」




「オジサン!僕を捨てるのか?ぞんざいに扱うと、シャカシャカに言うぞ!」

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