69養子は誰に
役所からの帰り道 僕は福ちゃんを抱いて家に帰った。お釈迦様の話を聞いて今日だけは、周りを気にしない。
「オジサン、僕をだっこして歩けるネ」
「福ちゃん、今日だけ・・明日からはリュックに入ってもらう」
福ちゃんは行き交う人に まばたきしたり、口パクで話しかける。
背後からザワザワと声が聞こえる。
子供が寄ってきて飛び上がって福ちゃんに抱きつこうとする。
どこに隠し持ってたのか福ちゃんは子供に飴玉を渡す。
ヤバイ、ヤバイ。家まで時間がかかるし、自宅も近くなってくるので、ご近所さんの噂も気になり、ひとまずリュックに福ちゃんをしまい付けると。
「小心者、人非人!ぞんざいに扱うな!お釈迦様に言い付けるぞ」
脅しには屈しない。
「どうぞ、ご勝手に」
福ちゃんは叫ばなかった。
ひとまず僕は『勝った』拳を握りしめると、大きな声で子供を叱りつける声が聞こえた。
子供は泣きながら母親に少しだけ距離を置いて着いていく。
カンシャクが治まらない母親は又叱る子供は泣きながら着いていく。
そこで福ちゃんは僕に言った。
「子供は母親しか信じる者がいないんだ・・いつもあんな感じだったな、僕はあんなの嫌い」
僕の子供の頃は母親から不条理に叱られた記憶がない。
いつも僕が悪さをして理詰めで叱られたと云うか、兄と10才離れてたので甘やかされて育った。
自宅に近づき、隣のコインパーキングに僕の軽自動車が停まってる。コレは華子さんに違いない。自宅の駐車場を覗くと此間の車よりランクが上がってる。玄関は鍵が掛かってなく、奥から華子さんの声が聞こえた。
「おかえりなさい」
『はぁ?』おかえりではなく『おじゃましてます』だろ!昔からトンチンカンな事を言う。僕は挨拶がわりに車の事から話をきりだした。
「車替えた?」
「私に似合う車だから、ドンドン乗り替えで将来はイエローのスーパーカーかも」
華子に立て替えたお金はほとんど返ってきたが、あと100万程帰ってきてない。僕の目つきで解ったのか
「ガリバー君、小心ね。私、わかってるって」
華子さんの店は大きく経営の舵を切り岡山県、農協とタイアップして岡山の食材中心に展開する道の駅の様な販売をして朝一に新鮮な食材を届けてもらい、元々の従業員が販売する。
安さと新鮮さが手伝い、噂が広がり成功している。華子は僕に聞いた。
「あといくら返せばいいの!」
「華子さん、あと100万はありますけど」
「ガリバー君、返せばいいってもんじゃないのよ、貴方のお母さんの家の状態をキープしている私の身になったら」
いつもの如く訳の分からない事を言う。僕は福ちゃんにテレパシーを送った。
『華子さんは返す気あるのか?』福ちゃんの答えは『わからない』僕は『目の動きで読みとってくれ』返事は『眠たくなってきた』
華子さんは自前のお茶を入れて僕に話しかけた。
「今日は福ちゃんを連れてどこに行ってたの」
僕は華子さんに、かくかくしかじかと伝えると怪しい目をして、いきなり
「私、凄く覚悟がいるけど、ガリバー君と籍を入れるか・・100万円もチャラになるわ」
「!、俺の100万〜!」
「ガリバー君、いやなの?それじゃ、2階の掃除してこようかな」
「困る」
「ガリバー君、冗談よ。あの、いつか店が大変だった時に手伝ってくれた大学生なんかどう?あの子真面目だし、福ちゃんを大事にしてくれる約束で養子にすれば?2階のデッドスペースを子ども食堂にしてくれたり、店の補助金申請、在庫のオモチャを高く売ってくれたり、あの子いいと思う」
たまには、華子さんのタイムリーな意見にビックリ仰天。福ちゃんに尋ねると
「オジサン、お好み焼き食べれる」
どうやら、寝起きなのか、福ちゃんも華子に似てきた。訳がわかってないのか?




