68養子は誰?
僕達は役所を後にしベンチに腰掛け福ちゃんが語りかけた。
「オジサン、いつもありがとう。僕の出生届も無かったのはショックだった」
福ちゃんの返事に戸惑いを感じながらも、何か話しかけようと思い
「梅にウグイス、松に鶴、ガリバーに福ちゃんって僕達のことやおまへんか?」
少し笑った福ちゃんは語りだした。
「あの世に旅立った時、これで虐待に合わないと思った矢先に僕の前に凄くいいお香の香りがするオジサンが立っていて、ラップて話しかけたんだ」
「ヨーヨー、アンタ誰の子、可愛い子。アンタの名前なんちゅうの?」
「アラガネケンタと申します。ところで誰?」
「シャカ、シャカと申します」
シャカシャカはラップを止めて普通に話しかけた。
「本当に辛かっただろう。世界には不自由な子供が後を絶たない。しかし、日本と云う法治国家で、お前はかわいそうすぎる」
「言ったんだ」
「福ちゃん、何でラップで語りかけたんだろう?そのオジサンの頭はグリグリの天然パーマで額の真ん中にホクロあった?」
「オジサン、その通り!髭はナマズみたいだった」
「福ちゃん、お釈迦様じゃないか!それから?」
福ちゃんは話を続けた
「オジサン、シャカシャカは娑婆に戻りたいかと聞いたんだ。それで、シャカシャカはオジサンの同窓会をズームで僕に見せて説明したんだ」
「ケンタや、あの男。何の取り柄も無い男。ちょっと歳がくっとるが、少し間違えたらこの世を掌る男になっておったかも」
「シャカシャカ、そんな凄い人なの?」
「いや違う。人はほんの少しで人生が変わるのじゃ。ほれ、見てみ〜。うだつが上がらん人生を物語る顔。皆んなの話について行かぬあの顔。あいつも、お前もつまらぬ人生を変えてみれば?しかしながら、もし、もしじゃ、あやつがオマエをぞんざいに扱ったら『シャカシャカそっちに帰りたい』と、叫べ!さけんだらお前は砂のように消え、この浄土に戻れる。しかしながら、人として娑婆に戻れぬ。アイツと腹話術人形で付き合えるか?」
「シャカシャカさん。一度でも、腹話術人形でも、楽しくやりたいデス」
「そうか」
お釈迦様は唱えた。
「天井天下唯我独尊!」
「オジサン、それから僕はオジサンと知り合った」
「福ちゃん、僕は、まばたきしたらこんな年になってしまった。君と出会って、いいも、悪いも、人生が変わったんだ。これだけは道破出来る。楽しい」




