67養子は誰に
ニューハーフバーに行っても何かと小市民には、ぶが悪い。
行きつけの市街地再開発喫茶店に行っても、前日の商店街理事会に出席したばかりに、裏切り者のレッテルを貼られ肩身が狭い。モーニングサービスに伺ってもマスターの嫁は、後から来た客のモーニングを先に出し、あと回しにされる。
あからさまな、嫌がらせをするが、これは元々、マスターの嫁のギス口に塩をすり込む人間性。
昨日、田舎の17歳年上の従姉妹から電話が有り、兄の息子の結婚式に欠席した事を問われ、僕以外の従兄弟は全員出席だった。
しかも、来月は姪の結婚式の招待の話まで出たが、何も聞いてなかった。
悔しさはなく、正月に兄の家族、お袋の前で酔狂を切られ、お袋が他界後の相続で土はお前、金は俺。
通称エリートと呼ばれる側から見ると羨望の兄ではあるが、僕にとって、けつの穴のコンマい野郎なので、奴が酔狂して以来、会話がない。
そして、お袋の葬儀は最悪で無言の葬儀だった。
腹が立つ!俺の貯金箱の様な全財産は、あの家族に渡さない憎悪の思いが込み上がる。"あいつら家族に俺の貯金箱は、ビタ1文渡さない"
「福ちゃん、僕の養子になる?」
「オジサン、いいよ」
善は急げ!市役所に行こう〜で市民相談所を訪ね、相談員に養子縁組の相談をした。
担当者は髪の長い女性で生気のないか細い声で問いかけた。
「○○さん私、井ノ中と申します」
名刺を拝見すれば、井ノ中 貞子・・・
長い髪、井ノ中、貞子。 これリングの貞子さん?
僕の心の中を察してか、貞子はか細い声で話しかけた。
「○○さん、私生きてます」
「○○さん、まず、養子縁組許可の手続きの手順から説明いたします。まず、申立人の戸籍謄本、養子さんの戸籍謄本を家庭裁判所に申請書を提出」
僕は困ってしまった。僕はリックから福ちゃんを取り出し尋ねた。
「井の中さん、この子を養子にしたいです」
(笑)(笑)(笑)
かぼそい笑いが聞こえた。
「○○さん。冗談はやめてください。では、コチラも冗談で養子さんのお名前を拝見いたします」
「福ちゃん、何ていう名前?」
福ちゃんはしばらくモジモジしながら、目を閉じて、口を開いた。
「荒鐘健太」
「アラガネケンタです」
井の中さんは頬に両手を当てて目を丸くして絶叫した。
「ギャー〜〜〜❗️」
井ノ中貞子の悲鳴は市役所内にこだまし、警備員が駆けつけ、僕はトイレに逃げた。
大の扉を開けてロックし便座に腰をかけた。
しばらくし、リックから携帯ボトルを取り出しドクダミ茶を飲んで福ちゃんに話しかけた。
「福ちゃん、虐待児童の化身と薄々感じとっていたんだけど・・」
福ちゃんは答えた
「オジサン、楽しかった。僕、消えてもいいよ」
「嫌だ!まだまだ一緒がいい。消えるな」
福ちゃんは涙を拭い
「オジサン、ありがと、一緒にいていいの」
「当たり前だ」
警備員がドアをノックしたので僕達は投降した。トイレを出ると貞子さんがいて一言僕にか細く伝えた。
「荒鐘健太君は出生登録されてない子供です」
僕は真摯に答えた。
「僕達は今、この瞬間を楽しく生きてます」
警備員と貞子さんは道を開けた。
背後から、か細い声で
「瞬間を生きろ」
聞こえた。




