66はめを外したい
金持ちの考え方は僕には全く理解出来ない。
名誉と私利が絡むととんでもないことになる。
腹の虫が治らないと言うか。なんだろうこの気だるさは・・・福ちゃんどう思う?
「僕だって金持ちに対して、お金がないから腹立つわ〜。うらやましい。世の中動かしてるんだ!なんでオジサン、お金持ってないの?あの人たち何十億動かしてるね。なんで?くやちぃです」
「ムシャクシャする時はどっか行こ」
「オジサン、うさを晴らすには海に行こう」
「福ちゃん、海といえば、1番の記憶に残るのは?」
「ニューハーフでしょ」
「福ちゃん、砂浜とか、波、ビーチグラスとか、あるでしょ、なんで?」
「浜に行って、1番記憶に残ってる。こないだYouTubeでニューハーフの腹話術人形がお客さんからチップをもらってた。僕もチップをはずんであげたいな。BOOさんから貰った小遣いあるでしょあれ全部持っていく」
「てことは、ニューハーフの店に行くのか」
「LETS BEGIN!」
いただいた名刺があるから腹話術人形がいるニューハーフの店を福ちゃんが探し当てた。
「オジサン、店名が"マーガレットとリボン"!」
「最寄りの駅は三ノ宮か・・・お酒飲むから、新快速で40分」
「オジサン、こんな店に行ったことあるの?」
「金がないからそんな所で遊んだことはない。
経験したいから、福ちゃん、行こうぜ」
三ノ宮から山側に歩いて路地を曲がる雑居ビル"マーガレットとリボン"3Fにあった。見るからにぶっ飛んでる店だった。
いきなりママのおで向かいに、懐かしい顔をすると、ママは握手を求める仕草で僕のマタンキを潰しにきた。
「いらっしゃい〜アッ!あなた、オカマビーチで会った、おっさんね。人形はお元気?」
「このリックの中ですけど」
「それって、虐待じゃない〜」
言いながら、タマキンを潰された。
ボックス席に通され、オカマの黒服がおしぼりを差出してママと2人のニューハーフと腹話術人形のニューハーフ。
「シャンパンで乾杯しましょ。」
他の客もシャンパンから始めたので了解したら横に座ったデブの通称マジ子がおもむろにボトルを一本ラッパ飲みで空にし、
「ゲップ」
「マジ?マジ子?」
ママはもう一本催促をし、乾杯した。
ママの源氏名はキャンタマ、キャンタマ。
それと怪人マジ子とガラスの仮面の月影チブサ。
腹話術人形のガーナ。
ガーナのベースは福ちゃん。
金髪ショートヘアーに顔黒で常に葉巻を咥え口を開けると煙が出る。
どんな仕組みになってるか、わからないが、ここは異空間。
ガーナは時々葉巻の煙を福ちゃんに吹きかけ、挑発する。しばらくすると、後から来たカウンターの客が「勘定」と、声をかけると
「300万円」
カウンターの客はバックからポンと3冊の札束をカウンターに置き店を出た。
福ちゃんは僕の袖を引っ張り
「オジサン、金あんの?ここは暴力ボッタクリ!」
「ちょっと、お手洗いをお借りします」
トイレに入るや否や、金といえば殿様。殿様に電話した。
「ガリちゃんなんの用?」
「殿様〜神戸のボッタクリ、ニューハーフバーに来て、お金が300万程足りないんです」
「なんちゅう店?お前、65歳やろ?持っとるやろ?」
「マーガレットとリボンです。お金がありません〜」
「そこに、キンタマとか言うママがおるか?」
「居ます」
「ワシ、電話しとくわ」
殿様との話が付き、席に戻ると、福ちゃんはガーナから煙を吹きかけられ、月影チブサから厳しいお説教をくらい、マジ子が福ちゃんのズボンを下ろしてでガーナに股間を握らしてる。
慌てて、福ちゃんをリックに入れて『勘定』を済ませ、ママから
「ガリバーさん殿様と知り合い?殿様に付けときますから、また来てね〜」
2度と来るかと思い、最悪の神戸の夜を後にした。翌日、殿様邸に伺い、
「殿様、昨日は助けていただきありがとうございます。あんな、高額な店は2度と行きません。許してください」
「ガリちゃん、ワシはたまに行くけどな、お前には貸しが出来たな。カッカッカ」
「一生かかってお返しします」
「御意!ガリちゃん、ええんやで、それより華ちゃんとワシとの会話の録音。目の前で消去せんかぇ!消去!このこわっぱが!」
懐から印籠を取り出し、かざした。
僕はこのしがらみから、土下座せざるおえなかった。福ちゃんがテレパシーで僕に言った。
「オジサン、何か、おかしいって、殿様の目が笑ってるし、オカマバーからの金額を聞いてないよね。請求金額が分かってないし、請求金額をこちらに回してもらおう。オジサン、ギャンブル!オジサン、その前に大学生のスマホに華子さんと殿様の会話を録音をコピーするんだ」
僕は土下座しながらスマホを操作すると殿様から
「ガリちゃん、なんしとるん?スマホから手を離して、こっち来てワシの眼の前で華ちゃんとの会話を消去して」
これじゃ全部殿様の思いのままになってしまうし、僕の伝家の宝刀は無くなり、最悪、殿様の奴隷になってしまう。
考える隙を与えず殿様は、土下座する僕の髪を掴み
「早よせえや!消さんか!」
観念して僕は録音を消去した。
・・・敗北宣言。
この場に奥様が通りかかり
「いつも、我が家に協力してもらってるガリバー君に、あなた、なんて言う事をするの!貴方の横暴な態度を見届けましたよ」
「ガリバーが悪いんや。全部、ガリバーが悪いんや」
殿ご乱心のち奥様は一言
「この、泥亀が!」
で、奥様はその場から離れた。殿様は近くに寄って
「ガリちゃん、3万程の飲み代くらいワシ払うがな」
「殿様、300万じゃないの?」
「ガリちゃん、303万やったかのう」
これが、さっき福ちゃんの言わんとしたことか?福ちゃんが僕に言った
「オジサン、オジサン自身でマーガレットに支払いに行けば」
「殿様、私が昨日のツケを支払に行きます」
「ガリちゃん、ワシの口座に泥を塗るの?困るよりダイマルや」
僕たちは殿様邸を後にして銀行から持ち慣れぬお金を引き出し昨日のマーガレットとリボンに向かいツケを支払った。
「2万?」
ママは付け加えた
「あれは新規のお客様への恒例の儀式よ」
空いた口が塞がらなかった。
勘定を済ませママが一言
「また、オカマビーチで会いましょうね」