59店頭販売Ⅲ
殿様の謀反にはビックリした。
もう誰も信じない。信じるのは福ちゃんだけ。
「オジサン、いいこと言うね。でも、殿さんの言う通り調査してみたら」
華子さんに電話してみた。
「あんたデータバンク?ガシャ」
切られた。
華子の会社に伺い、殿様の考えを伝え決算を拝見すると殿様の言った通りの内容だった。
華子も他人が協力してるので観念したようだ。
資料をコピーして殿様に手渡すと、さすが、昔取った杵柄。ポイントを指摘した。
「社員も高齢になって人件費がかさんでるな・・しかし、コレを削減せず粗利を上げるには利益率を維持して、売上を上げるしかない。ガリバー君が単品売りを薦めると客単価が落ちて売り上げは上がらない。
小売人は涼しい顔をして湖面を白鳥の様に泳いでいるけど水の中は必死でみずかきをバタバタ動かしとるんや。高級外車も手放して、髪振り乱して頑張ってるんや。銀行も赤字の垂れ流しは見逃さへんで、アイツらの商売のやり口は晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げる。金貸しの化けの皮が剥がれる日も近い。ガリバー、退職金積立、忘れとった。そんな呑気なことやない。あの子は殆どが借金の担保に入ってるんや。早く解放してあげたい。ワシとガリバーはこのプロジェクトは運命共同体やバックに黄門様が控えてる事を心強く思って行動するべし!以上、終わり 」
「あの〜僭越ながら、決算書お渡ししましたよね。30万程使ってますが」
「ガリちゃん、君の事業計画書も出てないのに金、出せるか?黄門様はまだまだですぞ」
時間もないのに、ややこしい、便所の家事でヤケクソや!ナスがママならパパはキュウリで、福ちゃんに相談すると
「フラワーサンストアの立地、建物内部を調査してみよう」
福ちゃんをリックに入れて駅からフラワーサンストアまで三分半、アーケードは雨に濡れず、
通勤客の動線になっている。
サンストアは初めて小さな八百屋だったが隣が売りに出れば買い取り百坪以上の敷地になった。2階は応接間に社長室、機能してない物置。
物置は昔、雑貨を置いていたが、芳しくないので閉鎖して埃の被ったスチール棚にガラクタが残ってる。化石化したオモチャなどなど。
福ちゃんが提案した。
「オジサン、IT業界の異端児ポケモンが言ってたけど、投下資本が少ない。在庫がない。利益率が高い。定期的にお金が入る仕事が儲かるんだって」
「オジサン、大手の銀行マンが華子さんの応接でパソコン開いて、帳簿を見てる。アイツの頭の中は倒産までマジックが点灯して、次の売却先は決定してるみたいだよ。早くしないと潰れてしまう。自分1人の考えではどうにもならない。いろんな人の知恵をかり、素早く行動しよう」
善は急げ、バイト先のマスターに相談し、大工の吉田さんの要請とモールの元店長に連絡を依頼し携帯で行きつけの喫茶店の大学生にもLINEで、このいきさつを伝えた。
僕は沿線の主要な駅近辺を調査。
ポケモンの唱える商用地を回り、最後に殿様に連絡した。
殿様には地域の信用金庫の担当者に面会出来ないかと相談のち1時間後に電話をかけなおすように指示を受け、のち信用金庫の応接間に通され、支店長と融資担当者の名刺を頂き席についたが僕は、生まれてこのかた名刺を作った事がなく、言い訳をして席についた。
支店長に再構築補助金の相談から話を切り出した。
支店長は
「殿様は組合の大口の組合員で、殿様の要望なら協力致しますが、フラワーサンストアさんはちょっと・・」
ためらいがちだった。
僕は勇気を出して提案した。
「現状のままでは、間違いなく審査されないのはわかりますが、再構築はフラワーサンストアの為にある制度じゃないですか?お力を貸していただきたい」
その瞬間に、支店長はじめ職員が起立した。
『怒られるのか?』ドアが開き殿様が
「ガリバーが慣れない事を必死で提案しとるんや!コレは、このワシが言うとる事と受け止めてくれ。早よせんか!」
「かしこまりました」
支店長は即答し
「他行と違いウチには再構築の元審査員が居ます。他行と違いスムースです」
力関係なのか、殿様との話は早く済む。
まだ、やる事はかなり有る。
まず、行きつけの喫茶店で大学生と待ち合わせて、フラワーサンストアの2階のオモチャを査定してもらった。かなり、レアモノのソフビ怪獣や人形、着せ替えセット、外国製のミニチュアカーなどが多数ありオークションにかければかなりの金額になる。
いわゆる未使用デッドストック物だそうだ。
夜中のうちに大工の吉田さんはスチール棚などを解体して、くず鉄業者で現金化。
2階フロアのピータイルはケレンで剥がして波打つ硬化した接着剤の模様が様になる。
天井のジプトンは残して、壁は垂木に石膏ボードを貼り付け、吉田さんの友達の塗装屋さんが天井、壁を白く塗り、蛍光灯を外しLED照明に変更。
勿論、2階の応接間、社長室は一階のバックヤード隣に移動で2階は蘇った。
近隣主要な駅近辺は駐輪場が多い。
しかし2階のデッドスペースに自転車は預けにくい。
投下資本が少なく、在庫がないのは預かる商売。
駅近だからアッ!大学生が言うとったな〜。
学童保育は駅前市街地改装ビルのデッドスペースに設ける案があった。
まずは2階の半分を学童に使う。
電子ピアノを設置
大型タブレットを壁面付ける
運動など出来る様にマットを敷く
2階のあとの半分を丼ご飯一杯100円とスーパーの惣菜コーナーのイートインにして仕事帰りの親子が揃って食事をしてもらう。
近所の一人暮らしの独身者にもイートインを利用して欲しい
学生が利用すれば子供たちに勉強を教えて欲しい
「2階の施設は役所に掛け合い補助金の対象になるはずです」
一階の売り場は昨年にリニューアルしてるので実演販売などのの配置替えが肝心になるだろう。
深夜の何日かで工事が完了したが、大手銀行の融資担当者に勘付かれた。
担当者は華子社長に融資の関係上、金の流れを説明する様に迫った。
華子は訳の分からない説明をした。
「ガリバー君が勝手にしたの」
まるで小学生の様な稚拙な返事に融資担当者の口が数秒空いたままになってしまった。
「社長!ここは株式会社が運営している所ですよ。アカの他人が工事を行ったでは済まされない。本部に連絡し、今までの融資はなかった事とお考えいただきたい」
担当者は倒産までのマジックが一桁になった事を確信した。
華子から電話がかかってきた。
「ガリバー!あんたが改装工事をしたおかげで私の会社は、銀行が手を引いておしまいよ!どうしてくれるの?従業員は生活かかってるのよ!」
「訳を聞かせてほしい」
と、言う間もなく電話は切れた。
僕は慌てて華子の会社に向かい、華子と決算書を持って信用金庫にアポを取って、そののち支店長室に通された。
そこには殿様が先に到着していた。
華子は支店長と殿様の前で決算書を提示しことの成り行きを説明し始めた。
その後支店長は
「かなり、負債が膨れましたね。しかしながら、フラワーサンストアさんは自社物件ですので、すべての担保と照らし合わせて少し足りないですね。それと借り換えても、私ども信用金庫の金利は0.5%高くなります。少し担保を追加していただいたら、なんと本店に稟議をとおせるのですが」
華子は負債の額を話し出した。
「3億円ですよ。担保の倉庫、自宅、店舗を売却してもお釣りが出ますが」
思わず僕はつぶやいた。
「3億円、高額や!大事件の代名詞的金額。僕の生涯稼ぎきれない数字」
華子が僕の顔を見て口を開いた
「担保有ります。ガリバー君の家とマンション」
なんて事を言うんだ。
コントとちゃうぞ!絶対に飲めないというか、このプロジェクトに参加して、手出しが増える一方なのに。
それよりそんな事この場で言わんやろ。
思ってると殿様が切り出した。
「売却したらチャラ以上になるんやろ?それで借り替え出来んか?バブルの頃とえらい違うね。なんやったら、このワシを担保に入れたろか?」
「滅相もございません」
「ほな、決定という事で一件落着。カッカッカ」
何が担保に入ろか?だと!棺桶に入れっつうの。僕は支店長に一言伝えた。
「大手銀行マンが足繁く通って帳簿を見てるのです。あれは何処かに売却するとか裏で話が決まってないでしょうか?」
殿様は決断した。
「早く、銀行に借金返済の準備をするんだ。支店長時間がない」
「かしこまりました」
1週間で信用金庫の稟議が通り、大手銀行に伺うと、そこにはフラワーサンストアに貸し付けた歴代の支店長が座り、こちら側は華子とフラワーサンストアの店長と僕で3対6では、ぶが悪い。銀行側から債務超過に関する資料が手渡された。
はっきり言って、耳揃えて返せだった。
3人は予想通り、顔を見合わせて、華子は殿様に電話し、会議室に殿様が現れた。
「大手ドラッグストアと下手な絵を描き、貸し剥がし行為、不届千万!金返せと言うなら仕方が無い。華子さん返してやんなさい」
銀行側に華子は小切手を手渡した。
そして殿様は吠えた。
「ワシの街でこの様な行為が頻繁に行なっとったのか?既成事実として商工会議所、行政に通達致す。それで良いな」
支店長が口を挟んだ
「担当者が単独で行った行為で、私たちは何も知りません」
「不埒三昧、担当者の管理ミスは上司の責任。土下座して詫びろ、詫びろ、詫びろ・・・・・・」
それからTVのシーンと同じ事が繰り返された。
貸し剥がしの件は、大きくマスコミで取り上げられ、融資担当者は網走に左遷、歴代店長たちは降格か出向で、この支店は隣町の支店と統合で消え去った。
店に戻ると華子は殿様と握手をして殿様は僕の方に振り向き勝ち誇った顔をして一言
「華子さんハグして欲しいでちゅ」
華子は殿様にお礼を言ってハグをして殿様は僕に完封勝利の表情で
「ダルビッシュの気持ちや」
吠えた。




