51敗者復活
決勝戦が行われる前に敗者復活の1組の選考が行われ、姐さんが選ばれた。
バイト先の喫茶店仲間は会場で歓喜の声を全員あげ、場を盛り上げた。
姐さんは余りの嬉しさに地べたにへたり込み司会者の質問に声を詰まらせ
「今までの努力が報われました」
答える様はこの歳で完璧にやり遂げ、あらゆる生活面で自分が決めたことは最後まで諦めない。
後光が差してると言うか光り輝いて見えた。
間髪入れず福ちゃんは悔し紛れの言葉を吐いた。
「オジサン、天津と姐さんにスポットライトが当てられてるから光って見えるの演出、演出」
「福ちゃん、興醒めするような事を言うな。嬉しくないのか」
「オジサンがヘタッピでセリフ間違えたり、緊張をつくらなかったら、決勝戦に残れていたのに」
「福ちゃん、ハッキリ言って負けを認めよう。わかるかなぁ、真摯に受けとめ、自分達の何がいけなかったかを考え直し来年に繋げよう」
僕は福ちゃんに勝ち負けではない事を伝えたかった。
福ちゃんは、へ理屈で切り返した。
「オジサン、考え方が甘いな、だから時間だけが過ぎる生活ができるんだ。よく目を閉じて僕と出会った時からのことを思い出してみよう・・生活変わったでしょ?やる気が湧いたことあるでしょ?出会ってよかったんでしょうか、悪かったんでしょうか?」
確かに福ちゃんと出会ってから不思議なことが起こる。こんな機会にも廻り合わない。
「それとこれとは話が違う」
「福ちゃん、なぜ進出したかった?」
「オジサン、TVに出たかった」
TVか・・僕もこのくらいの年にテレビに憧れたよな・・突然福ちゃんは僕に啖呵をきった。
「オジサン、オジサンは美談を並べるけどそれで良いのか?何も自分でやり遂げたことあるのか?マスター、殿様、全て助けを借りて、そこそこの生活してるんじゃないか。例えば人間として殿様がしてくれた事を他の人にお返ししたか?愛する人に真剣に向き合ったか?」
ぐうの根も出なかった。
「オジサン、初めて会った頃、僕をぞんざいに扱うなって言ったよな。キングオブ腹話術の練習を真剣にしたか?適当にやってたんじゃない?吉田のおっちゃんに腹立てて"悔しいです"なんて吐いた言葉は頭の中から吹っ飛んでただろ。普通、言われた方は忘れない。言った方は忘れてる・・・」
穴があったら入りたい。
「オジサン、何でもかんでも中途半端に終わらせてる。同窓会の帰り道。友達は子供や孫の話を楽しそうにしてただろう。それってみんな達成感じゃないの?僕みたいな子供はまれなんだ。自信がないから結婚しない、子供をつくらないは世の中の背徳行為だと僕は思う。オジサンはそこから逃げてんじゃない?やり遂げたことあんの?」
時間を戻したい。
「オジサン、ご清聴ありがとうございました。ところで準決勝進出したいだろ?金属バット持ってこい。天津ボコボコにしてやる」




