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4靴屋で

「オジサン、今日はバイトないんだろ?善は急げっていうじゃない早く百貨店に行こ」


 百貨店で買い物するって決めてないのになんでそこなんだ?スマホで地元の掲示板のアプリからいただけるものないかと検索しょうと思ってた矢先になんだコイツ。


「百貨店で接客して欲しいんだ。今までないことを経験したいデス」


百貨店は行ったことあるのかと尋ねたら


「行ったことは何回もあるけど、買い物したことはないの」


 なんなん?コイツ、貧乏?、倹約家?万引き家族?

 まぁそんなことは、どうでもいいけどコイツと移動すると目立ち過ぎる食器棚の裏あたりにお袋が後生大事にしまった紙袋があったよな、ドデカい袋に入れて移動。


「オジサン、なにすんの?僕を抱っこして歩けばいいじゃん」


そんなことできるか!街中の笑いものになる!


 例えばニワトリを自転車のカゴに入れて運転してる奴。大型インコを肩に乗せて写真撮らせて金を要求する観光地詐欺。豚を犬代わりに河原を散歩させる奴。それ同等の変わり者か怪しい奴だと思われる。職務質問にあったらどうする!


「乱暴に扱うとまつ毛が痛むから何か被せて欲しい」


 ラジャー、ブラジャー、象印ジャーということでamazonのダンボールに入ってたプチプチの安全ビニール袋を頭に被せその上に中身が見えない様に風呂敷で蓋をした。準備完了!

 買い物出発!


「ぞんざいに扱ったらタダじゃ済まないからな。人前で"ヒトゴロシ"って叫ぶからな」


 今、どちらが主導権を持つかの瀬戸際。奴もそう思ってるだろな・・

 ガレージを開け軽ワゴンの助手席に大型紙袋を置く。国内最大の衣料品店に到着。のちTシャツを購入しようとすると


「半袖はダメ長袖にして欲しい」


 刺青が入ってるのか?コイツ反社か?

 よく見ると腹話術人形の腕の部分は平たいゴムチュープの様なもので出来ている。腹話術師が手足を曲げる仕草に対応できる仕組みなのだ。

 靴下とTシャツお買い物完了!


「チョト待てよ、オジサン!愛情を持ってこれにしょうかな、似合うかな、なんて考えながら

選ぶもんだろ!なんだこの靴下。豹柄?大阪のオバハンじゃないぞ!」


 めんどくさい奴だな・・


 なにが好みかと聞くと


「アニメの主人公の緑と黒の格子模様が欲しいですww」


 おーおーおーねねらっしいね〜。(北陸言葉でお子ちゃまという意味)僕はこの得体が知れない奴は子供と理解し戦闘力の数値はダウン。、、、と考えてるうちに男性が寄って来た。


「オジサン!こいつやばい奴だ。逃げて」腹話術人形が呼びかけるや否や


「この紙袋の中身を確認させてください」


 僕は何もわからず紙袋を差し出すと、素早く奪い取り中身をむさぼるかの様に確認した。

 男はしばらくして「チッ」と舌打ちをして紙袋を僕に手渡した。

腹話術人形は


「オジサン!犯罪者扱いにされたんだぞ!噛みついてやれ!」


 こいつ何を言ってるか分からず紙袋を受け取って、人形に誰なのか問うと


「万引きGメン。奴らに出くわすと20通りの作戦で降りかかる火の粉を振り払う」


 僕は腹話術人形に「人は万物の中で唯一やり直しが効く動物なんだ」と教えボーダー柄の靴下と例の長袖のTシャツをひとまず購入。

 もっと欲しがった腹話術人形だったが、よく考えて買い物をする事を教え、その場を切り抜けた。

 僕は年金六万円プラスバイト代でぼーとやりくりしてますが、実は兄に内緒でお袋から少し加勢してもらい、ちょっとした賃貸物件を45歳の時に購入していた。10年ほど前にローンを完済し、その後ローン返済を見届けてお袋は他界した。その収入のおかげで惨めな思いをせずに平均値で生活できている。母親に感謝ですね。

 

 なんせ大学は出たけれど内定した会社に就職せず学生当時からバイトしてる喫茶店で今でもバイト。65歳今でもバイト。この世は金がすべての資本主義。腹話術人形にも厳しく接しないとお金はいくらあっても足りない。


 無事衣料品の買い物が済み、百貨店に車を進めると腹話術人形が場を和ませようとしたのか喋り出した。


「オジサン軽自動車?」


 失礼な奴だ。

 母との同居時代は病院の送り向かいで大型SUVを動かしていたが、歳と経費節約で他界後軽動車に変更した。軽の性能の向上、燃費良し、高速料金安い。あと、10年もすれば免許を返上しなければならない。不満な点は追越車線の変更での瞬発力不足かな…

 腹話術人形はカッコいい車に乗りたいのか少し不満そう。

分相応な生活をする事。虚栄心は身を亡ぼす。40年以上喫茶店にいると色々な方と出会いがあり、別れがある。栄枯盛衰も人一倍見てきた。身近な友達も人生を転げ落ちたり、出世して順風満帆だったり、、ほとんどは堅実な奴が多い。僕の周りは日本のスタンダード版かな?


 同窓会で孫の話をする奴。金を貸した友達は誰一人と返ってこず、周りからも姿を消した。金融機関から相手にされず最後の繋ぎなんだろうか、友達を恨まず、普通人生には分岐点があり仕事につき、結婚をし、子供を授かり、新しい家族がいる。色々な起伏がある。


 僕の人生はベターとしたものというかな独身年金生活者。後ろ指を刺される思いがする。

 そんな僕の思いを腹話術人形は気遣ってか


「ぼくがオジサンを幸せにしてあげる」


 ???コイツ何を考えてるのか出会ってから2日目ダゾ!

約束の靴を買いに行かなくてはと頭の中をきりかえる。


 隣町の百貨店の駐車場に車を置いて売り場へと紙袋を抱えて向かった。腹話術人形は紙袋の中でそわそわしてる様子。

懐かしいというかお袋がこの百貨店の外商登録してたのでカードでお買い物をしてたけど他界後年間70万以上の買い物は僕の年間生活費並みなので外商は無効にした。

 キャッシュレス時代だから、JR西日本のSuicaカードが使える。

 百貨店の中に量販店のテナントが出店し、沢山の靴を陳列し、景色が良く、靴を手に取るや否や店員が寄ってきて


「お決まりですか」


 問いかける。

 さわやかなスタッフは求めてる靴、サイズ、好きな色などの好みを早口で聞いてくる。スニーカーが欲しいと答えると私の歳を聞いて2、3のメーカーを指定した。

 大きな紙袋からおもむろに腹話術人形を取り出して、この子の靴が欲しいと訊ねると(笑)的な表情をした。真剣な顔つきを私と腹話術人形がすると、店員は足のサイズを測りナーキかNのブランドを薦めた。腹話術人形はNの方をまじまじと見てたので、

 グレーの15.5センチの靴を購入後私の靴も揃いで買った。





「オジサンとお揃いだねって」



心を弾ませながら話しかけてくれた。


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