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ライラック

作者: 歌川 詩季

 この方式で描くのは、これきりかもしれません。

 安穏(あんのん)とした空気に

 陰影が深く()える

 鬱屈(うっくつ)した顔を浮かべ

 鋭刃(えいじん)のあたる喉元に

 嗚咽(おえつ)()を鳴らす


 架空の楽園を(えが)くも

 揮発した願いが鼻を()

 空論をからまわりさせて

 敬虔(けいけん)な信仰を(ささ)げれば

 恍惚(こうこつ)は得られるのかと問いかけた


 殺伐とした都会に(はら)まれ

 針葉(しんよう)(とが)らせた樹々(きぎ)のならぶ森

 数奇な運命が待つでもなく

 静謐(せいひつ)(とばり)(おお)われるでもなく

 荘厳な夕陽(ゆうひ)さえも()くした地平線のむこうに沈むが


 鍛造(たんぞう)の意志を内に持て

 鋳造(ちゅうぞう)形骸(けいがい)を胸に残すけれど

 追憶にまでは至るまい

 点滅の空隙(くうげき)を徐々に大きくしては

 永久(とこしえ)は無だけと砂に(かえ)


 難問に足りない智慧(ちえ)をめぐらせるよりも

 人間を愛してみろ

 塗壁(ぬりかべ)目口(めくち)()いて

 涅槃(ねはん)の友とするは

 能面のシミュラクラ


 徘徊の(たみ)へさえ

 誹謗(ひぼう)をあびせるな

 分別があるのなら

 偏屈を平らにして

 豊穣な心であればいい


 幕間(まくあい)もわきまえず

 見境(みさかい)なくのばされる腕を

 無惨に散らせば

 面倒を起こしてくれるなと

 黙禱(もくとう)と呼ぶにも短くてすまん


 厄災を(はら)

 憂慮を照らし

 欲望を喰らい生きていく


 磊落(らいらく)に咲く花の名は

 凛然(りんぜん)としたライラック

 流浪(るろう)にその身を()とすとも

 練達へと至る道は(ひら)けるものだと

 路傍に(たお)れるを(ゆる)しはしない

 

 矮小(わいしょう)な私がそう誓えるものならば——

「ら」行入れ忘れかけた(汗)



挿絵(By みてみん)

制作:歌川 詩季


挿絵(By みてみん)

制作:冬野ほたる先生

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マイナスいちご(加工)
制作:歌川 詩季
― 新着の感想 ―
[良い点] あいうえお作文だとは感じさせないほど、惹き込まれてしまいました。 普段と違って硬い感じですが、その中に柔らかさも感じられて素敵な詩だと思いました。
[良い点] すこすこすこのすこ♡ [気になる点] まえがき、エーっ!? ぶぅぶぅ!w [一言] 恋初めし豪放不羈が蕾落を  リラは集いの叢咲き還る  こいそめし  ごうほうふきが  らいらくを  …
[良い点]  すごいです。  縛りを感じさせない、どこまでも歌川様らしいお言葉だと思います。  孤高で厳格。でも正義ではない。そんな感じがしました。
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