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第九話  ペネロペ、王女の侍女になる

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 ペネロペと個人的な話がしたいとアンドレスが言い出すと、パチェコ理事長は喜んで席を外した。本来、未婚の異性同士を二人っきりにすることはないのだが、この二人の殺伐とした空気から察するに、何かの間違いなど到底起こることなどないだろうと判断されたわけだ。


 理事長の秘書が冷めたお茶を淹れかえた後、応接室に二人だけ残されることになったペネロペは、

「実は君に、私の妻になって欲しい。つまりは契約上の妻ということになるのだが・・」

 と、宰相補佐に言われたらどうしましょう!などと突拍子もないことを考えていた。


 婚活に失敗したペネロペの最近の愛読書は一風変わった恋愛小説で、昨日、読んだ小説では、宰相の地位に就くイケメンが、侍女として働く子爵家の令嬢に『契約結婚』を持ち掛けていたわけだ。


「周りから結婚をせっつかれて困っていたところなんだ。君も結婚は考えていないというのならちょうどよい、私のお飾りの妻になってはくれないだろうか?」


 結局、イケメンはお飾りの妻にする予定だった子爵令嬢を溺愛して、契約結婚を本物の結婚にしようと宣言。二人はハッピーエンドを迎えることとなったのだが、シチュエーション的にはそんなことを言われてもおかしくない状況に陥っている。


 紅茶を口にしたアンドレスは二十六歳になるはずだ。宰相補佐の地位に就くアンドレスは、領地のことは弟に任せ、自らは妻も娶らずに王宮で政務に励んでいるという話をペネロペは聞いたことがあった。


 周囲からの妻の斡旋が多そうな男を前にして、契約結婚はアリなのか、ナシなのか、そんなことをペネロペが考えていると、

「理事長から、君がすでに卒業するのに十分な単位を取得しており、卒業までの間を休学扱いにしても何の問題もないと聞いている」

 と、アンドレスが言い出したため、ペネロペは生唾を飲み込んだ。


「実は、非常に困ったことがあって」

 確かに、これだけ整った容姿をしていて未婚のエリートなら、困ることも山ほど出てくるだろう。


「私は口が堅いので、何を言ったとしても、家の名にかけて外に漏らすことはないと宣言いたしますわ」


 契約結婚・・からの離婚か溺愛かはわからないけれど、何処まで続くかも分からない地獄の婚活を終わらせられるのなら、契約結婚もいいのかしら・・


「そうしてくれるのなら助かる。実は今、我々は、姫の嘘に非常に困らされている状況なのだ」

「・・・」

「アドルフォ殿下が廃嫡となり、妹姫であるロザリア殿下を女王として担ぎあげる勢力が大きくなっている状態で、とにかく姫は、嘘をつくのだ」


 アストゥリアス王国の第一王子が正妃から生まれたアドルフォ殿下、第二王子が側妃から生まれたハビエル殿下である。ロザリア姫は正妃からお生まれになったアドルフォ殿下の妹姫。


 ちなみに側妃様はラムール人だということで、ハビエル殿下は非嫡出子扱いとなっている。その為、アドルフォ殿下が廃嫡された現在、ロザリア殿下が王位継承第一位となっている状態となるのだ。


「えーっと、契約結婚とか、そういう話じゃなくて?」

「なんなんだ、契約結婚って?」


 二人はまじまじと目を見交わすと、ペネロペはしどろもどろとなって言い出した。


「だって、結婚を勧めてくる親族も、結婚を迫ってくる女性たちにもうんざりしたものだから、たまたま現れた私が丁度良い的な感じで?お飾りの妻になって欲しい的な?」


「何故、初対面の君に対してお飾りの妻になってくれと私が言い出すんだ?しかも、契約?お飾り?文言が酷いにも程があると思うのだが?」


「まあ、そうなんですが」

「そこまで結婚したかったのか?」

「そういう訳じゃないのです。もしも、万が一にもそんなことを言われたら、面倒臭いなあとも思いますし、これが渡りに船なのかとも思いますし、でも、結婚かあ・・」


 世の中に碌な男が居ないという現実を目の当たりにしたペネロペとしては、顔が良い奴に碌な男はいないという真理を導き出している。


 元婚約者のフェレも顔が良い男だったが碌な奴じゃなかったし、きっと、この目の前に座る宰相補佐も、顔が良すぎるくらいに整い過ぎているのだから、きっと碌でもない男に違いない。


「私、結婚するなら、ぼんやりとした顔立ちの、誰が見ても三日後には忘れてしまいそうな、そんな顔の人と結婚したいと思っているのです」


 だからお前とは到底結婚など考えられない、という視線を送られることになったアンドレスは思わず自分の口をへの字に曲げた。


「今は結婚ではなく、ロザリア姫のことについて話しているのだがな」

「そうでした」


 アストゥリアス王国では女性の即位も認められているし、過去には三人ほど女王を輩出しているようなお国柄でもある。第二王子がラムール人の血を引いているから王位を継承させることは出来ないという理由で、王女が即位をする方向で話を進めている最中で、その王女が嘘をつきまくっているので困っているというのは国難にも繋がる有事ではないのだろうか?


「ロザリア姫は大きい嘘から小さい嘘まで、様々な嘘をつくので私たちは頭を悩ませているのだが、そこで、小さい嘘から大きい嘘まで見破れる君の登場だよ」

「勝手に登場させないでください」


「姫は王位継承第一位に繰り上がったというのに、たくみに嘘を使い続けた結果、現在、教育係も不在の状況なのだ」

「それ、本当にまずい状況なのでは?」


「無名の君が突然姫の教育係になるのは難しいので、まずは、姫の専属の侍女として入り込んで欲しい」


「無理でしょ、王族の専属侍女になるような人は、派閥の力がないと駄目なんだって聞いたことがありますし」

「いいや、大丈夫」


 アンドレスは長い足を組み直しながら、にこりと笑って言い出した。


「現在、たった一人だけ残った専属侍女ですら辞めさせられる寸前となっているのだ。君が一人加わった程度で、何の問題にもならないのだよ」


「えーっと・・」


「しかも、侍女として王宮に入り込むことが出来れば、結婚相手は探し放題。魔法学校という狭い狩場で探すよりも、大物が複数潜伏する王宮へと狩場を移動させた方が、成功する確率が格段に上がると思うのだがね」


「えーっと・・」


 結局、休学手続きをすることになったペネロペは、婚活の場を王宮に移すことを決意することにした。グロリアには老後は共にしよう等ということを言いながらも、結局、結婚できずに一人だけ残り続ける自分を想像して、

「やっぱり、出来るだけのことは頑張らなくっちゃ!」

 と、奮起することに決めたのだ。王女の侍女については、細かいことを考えるのはやめたともいう。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

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