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第二十八話  激怒するグロリア

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 転移門を使ってカサス領から急遽、王都へと戻って来たグロリアは、本宮で療養することになったペネロペの元へ見舞いに向かい、ベッドの横で項垂れるアンドレスを見るなり強烈な平手打ちを喰らわせた。


「あちゃー」


 アンドレスの後に居た焦茶のもじゃもじゃ髪のエルがびっくりしたような声をあげると、グロリアはエルの襟首を掴んで、彼の頭を平手で叩き出す。


「ペネロペは絶対に安全だって言ったから任せたのよ!それなのにこれはどういう事なの!事と次第によっては殺すわよ!」

「ひーん!リアちゃんゴメンってー!うっかり騙された形になっちゃったんだ!まさかキリアンが生きているとは思ってなかったしー!」


 エルが頭をバシバシ叩かれていると、

「キリアンっていうのがあの魔法使いの名前なんですか?」

 と、ベッドで目を覚ました様子のペネロペが問いかけてきた。


「黒髪、黒目のイケメン魔法使いでしたよね?本当に、イケメンには碌な奴がいないということは元々知っていましたけど、危うく殺されるところでした!ムカつく!」


「「ペネロペ!」」


 ベッドで身動きが取れないペネロペに抱きつきながらグロリアは涙を流した。


「ごめんなさい!ごめんなさい!やっぱり貴女も領地に連れて行けば良かったわ!」

「本当です、グロリア様、何故連れて行ってくれなかったんですか」

「だって、この男が、自分が死んでも守るって言うのですもの」


 グロリアが睨みつけるようにしてアンドレスを見上げると、すっかり意気消沈した様子のアンドレスが項垂れながらペネロペの手を握りしめた。


「すまなかった」

「すまなかったの一言で済む話じゃないですよね?私、死ぬところだったんですよ?」

「まあ、まあ、まあ、まあ」


 二人から睨みつけられたアンドレスを庇うようにエルは前へ出ると言い出した。


「ペネロペ嬢、本当にごめんね。アルフォンソ王子がサラマンカの魔法使いを雇ったという情報を得たから、僕は彼が宿泊しているという宿の方へと向かってしまったんだよ。彼らは王都に侵入後は泊まる場所を移動し続けていたから、真実だと思われた情報に惑わされてしまったんだ」


 ボルゴーニャの間諜はこちらの思った以上に、奥深くにまで潜り込んでいる。情報一つとっても正確なものかどうかが分からないのは由々しき事態だと言えるだろう。


「それに、キリアンの強力な術式の所為で、離宮の中は外からの魔力を吸い込めない状態になっていたんだ。だからアンドレスは君を助けるために、自分の生命力を魔力変換して敵と戦ったんだ。彼は君のために自分の寿命を五年も切り捨てたんだ」


「五年も!」


 エルの言葉を聞いてグロリアは愕然とした様子でアンドレスの顔を見上げたけれど、ベッドに寝たままのペネロペは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて言い出した。


「例えば私が平均寿命の70歳まで生きたとして、昨日、あのままあっさりと死んでいたならば、52年もの寿命をバッサリ切り捨てられたことになりますわよね?」


 52年と言われてしまえば、ぐうの音も出ないと言った様子でエルが黙り込むと、ペネロペは淡々と言い出した。


「そもそも、姫を誘拐しに来るかもしれないということで、万全の態勢で迎え撃つということでしたよね?わざわざ侯爵家の方々を離宮まで呼び寄せたというのに、敵の戦力は私が居る二階に上がってくるまで、損耗もしていなければ、減ってもいないように見えましたけど?」


「それは!キリアンが凄腕の魔法使いだから!」

 エルが必死になって言い出した。


「サラマンカを追放されたキリアンは、僕とか、他の魔法使いが追って行って殺したんだよね。確実に殺したと思ったんだけど、生きていたんだからびっくりしたんだけど」


「そんな魔法使いは、何故だか復讐したいみたいな感じでしたけど・・まさか・・」

「もしかしたら、僕に復讐がしたいのかも」


 エルはグロリアの遠縁のサラマンカ王国から来た子爵家出身の留学生で、魔法使いの彼は異国で魔法を学ぶためにアリカンテ魔法学校に留学しているのだと、ペネロペは話には聞いていた。


 いつでもグロリアの研究室に入り浸って、侍従のようにお茶を用意してくれるエルは、あの黒髪の魔法使いと渡り合えるだけの技量があるということであるのだろう。


「ロザリア姫がカサスに逃げていて良かったよ。姫が居ないからってことで、後から尋問する予定で離宮の人間は生かされた状態で捕らえられていたんだ。襲撃者のうちの一部の人間が勝手に火をかけてまわったみたいで、危うく焼け死ぬところだったんだけど、アンドレスによって助けられているから安心して!」


 大きなため息を吐き出したペネロペは目を瞑った。

 もしかしたら自分以外の人間は皆殺しとなってしまったのではないかと思ったのだ。


「それにしてもペネロペ嬢ったら、キリアン相手に善戦したみたいだよね?彼、物凄く強いでしょ?どうやって戦ったの?魔力の制約もかかっているような状態で、女性一人じゃ他勢に無勢も良いところだったでしょう?」


「エル!」


 グロリアはエルの耳をぎゅうぎゅう引っ張りながら言い出した。

「ペネロペにはまだ安静が必要なのです!貴方からは直接聞かなくちゃならない話が多そうよね?今すぐ移動しましょうか?」


「ええ〜!僕はリアと話すことなんか何もないと思うんだけど〜!」

 耳を引っ張られたままグロリアが部屋から出て行くのを見送ると、無言でベッド横に置かれた椅子に座るアンドレスを見て、

「貴方は一緒に行かないのですか?」

 と、問いかける。


「行かないし、行く必要もない」


 そう言って自分の手を握ったままのアンドレスを見上げたペネロペは、一応は自分のことを心配してくれたのだなと理解した。


 アンドレスがペネロペを発見した時には、彼女は血まみれの状態で倒れ込んでいたのだ。肩口は斬りつけられ、口から吐き出した大量の血液の所為でお仕着せの胸元は血でぐっしょりと濡れているような状態だったのだ。


「後、一歩、遅ければ死んでいた」

 瀕死の状態だから指輪の魔石が起動したのだが、それにしたってペネロペは最悪の状態に陥っていたのだから。


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