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番外編 8  女同士の戦い

すみません、こちらの話が抜けていました。こちらも読んで頂ければ幸いです!!

「まあ!ワインですか?」

 ペネロペはにこりと笑って言い出した。

「ごめんなさい、私、ワインは飲めないんです」

 火傷を負った状態で王都にある侯爵邸へとやってきたプリシラは、アデライダのことを女王のような気質の人だと言っていた。


 自分の思うままに物事が通るのは当たり前、そうする為にはどんな人間を陥れようとも問題ないと考えている人物。


 今日、このパーティーが戦争に勝利した祝いのパーティーだということも、国王陛下主催のパーティーだったとしても関係ない。自分が気に入らないペネロペを排除するためには、どんなことでもやってやるという気概のようなものをペネロペは感じ取っていた。


「それにそのワイン・・毒が入っていそうで・・」

 ペネロペがわざとらしくそう言うと、アデライダはあからさまに不快な表情を浮かべる。彼女の様子から察するに、どうやら何かの薬物を混入している訳ではないらしい。


「それに、赤ワインでしょう?私が着ているこのマルティネスブルーのドレスにかける気満々みたいじゃないですか?」


 明るく朗らかに内容が物騒すぎる言葉を吐き出しながらペネロペが笑みを浮かべると、アデライダのグラスを持つ手が微かに震え出している。


 ペネロペの対応がよっぽど気に食わなかったのだろう。彼女の顔は真っ赤に染まり上がり、怒りで小刻みに震えている。アデライダはイグナシオの妻となって子供まで産んではいるが、身分としてはアンドレスの正式な妻となったペネロペの方が上。ペネロペの言動について文句を言える立場にはない。


「どちらにしても、私のお腹の中にはアンドレス様との子が居るので・・」

 ペネロペは満面の笑みを浮かべながら、

「ごめんなさいね」

 と言って小首を傾げて見せた。


 ペネロペのお腹の中には確かにアンドレスとの間に出来た子供がいる。

 何しろ帝国の離宮で貪るようにして愛され続け、気が付いた頃にはバケツとお友達になったのだ。つわりもだいぶ良くなってきているからパーティーにも参加出来るけれど、ワインなんか飲むわけがない。アルコールは胎児にとって悪いものとされているのだから。


「まあ!子供が居らっしゃるの?」


 ペネロペはアデライダが激昂すると思っていたのだが、彼女は鮮やかな笑みを浮かべながら、

「きゃああああ!おやめください!」

 と言って、自身のドレスにワインをかけながら床に転がるようにして倒れ込んだのだった。


「こ・・こ・・子供が居らっしゃるなんて全く知らなかったのです!喉が渇いているかと思ってワインをお持ちしただけなのです!決して悪意あって差し出したわけじゃございませんわ!お許しください!お許しください!」


 ワインまみれのまま悲鳴混じりの声で謝罪するアデライダの周りに人々が集まり始める。

「お姉様!」

「大丈夫ですか!」

 集まって来た人々の中から飛び出してきた二人の淑女が、慌てた様子でワインまみれのアデライダを助け起こしている。


「どうされたのですか?」

「一体何があったのですか?」


 座り込んだアデライダは宝石のような涙を流しながら言い出した。

「私が悪いのです・・私が悪いのですわ・・」

 身も世もなく泣き出したアデライダは、二人に支えられながら言い出した。


「ダンスで喉が渇いているだろうと思ったのです、決して悪意あってワインを持って行った訳ではないのです」

 差し出されたハンカチで涙をおさえたアデライダが、

「まさかお腹の中に子が居るなどとは思いませんもの!お二人が結婚されたのも知りませんでしたし、まさか、お腹の中に子が居るだなんて・・思いも致しませんでしたもの」

 そんなことを言い出した為、集まった貴族たちがザワザワと騒めき出す。


 今、現在、ペネロペの腹の中に子供が居るとするのなら、それは正式な伴侶となる前に授かった子供ということになるのだろう。


 その相手がアンドレス・マルティネス卿であれば何の問題もないものの、婚前から男性と深い関係を結ぶような女性である。種はマルティネス卿のものではないのではないかと憶測するものまで出てくるようで、

「おやめください、ペネロペ様を変な目で見るのはおやめください!おやめください!」

 と言ってワーーッとアデライダが泣き出せば、皆がペネロペに対して白い目を向けるようになっていく。


 そもそも、アストゥリアス王国の社交界は、血統主義である貴族たちが主流であり、次の王位をハビエル王子が継ぐということに難を示している貴族がほとんどなのだ。そんな中で、ハビエルの婚約者であるグロリアの親友とも言われる令嬢、今は妻となって侯爵夫人ではあるが、その腹の中に誰の子とも知れない赤子が居る。


 婚姻後であれば子供を授かることは何の問題もないというのに、婚姻前に授かるということは、決して褒められるようなことではない。


 その褒められるような状態ではない新米の侯爵夫人が、弟の妻にワインを掛け回して責め立てているというのだ。ここから新米夫人を悪者として仕立て上げれば、帝国の血を引く王子の足を引っ張るきっかけとなるのではないのか?


「確か・・ペネロペ様は婚約を破棄させるのが大好きだったような・・」

「悪女と言われるような人でしたものね」


 口火を切った誰かの発言により、舞踏会場に不穏な空気が溢れ出す。

 ワインで濡れた状態で憐れにも倒れ込む貴婦人と、その目の前に立つ貴婦人、誰が悪かと言えば一目で判断できるだろう。


「あーっはっはっはっはっ!実に面白い!実に!実に面白すぎる!」


 漆黒の生地に豪奢な金の刺繍が施されたディシュターシャを身に纏うその男は、ペネロペの隣で豪快に笑うと、ペネロペの顔を覗き込みながら、

「ペネロペ、今こそ『お前は嘘をついている!』と言い出すべきではないのか?」

 と、言い出した。頭部布のゴトラを黄金の輪で止めているその男は、南大陸で最も高貴なる存在であり、

「ラファ様!何故、このような場に居るのですか?」

 ペネロペは思わず驚きの声を上げた。


番外編8抜けていて申し訳ない!!そして、感想で教えて頂きました!!ありがとうございます!!

モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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