第三十五話 不埒な男たち
35話、入れるべき話が入っていませんでした!改めて読んで頂ければ幸いです!!
実際、離宮に軟禁されている間、ロザリア姫はまともに医師や治癒師の治療を受けたことがない。
子供だから熱が出ることも度々あったようなのだが、医師はやって来ても薬ひとつ出さずに、ニヤニヤ笑いながら出て行ってしまうのだという。ロザリアが病の時に医師がやって来るのは体裁を作るため。
高熱が出た時には、それで死んでは困ると言って、侍女頭が熱冷ましの薬だけを与えていくのだと聞いた。
ペネロペが専属侍女となってから二度ほどロザリアは熱を出したのだが、彼女は王宮の医師が来るのを嫌った。あまりに嫌がるものだから、丁度、王宮に出仕していた父を使ってペネロペが幼い時から診療を受けている医師と回復師を呼ぶことにしたのだ。
頑なに受診を拒んだロザリアも、ペネロペの父が連れて来た代々バルデム家に仕える老いた医師に対しては心を許したようで、ようやっと薬を飲んで回復に向かうこととなったのだ。
病に罹っても一切の治療をせずに嘲笑を浮かべて帰って行ったという医師や治癒師は、イスベル妃に重用された者たちだったらしい。宰相からの裁きを受けて、二度と治癒には関われないような体にされた上で、放逐処分となったのだとペネロペは父から話として聞いている。
とにかく、ロザリアは色々な意味で難しい。尊い身であることをあっさりと放棄するほどの大胆さと聡明さをもつ彼女は、自分のことについてはあまりにも頑固で無頓着だ。
「こちらの部屋に貴女様の侍女がお待ちです」
ペネロペが考え事をしている間に、神経質そうな侍女頭が声をかけてきた。いつの間にかマリーが待つ部屋まで案内してくれたようで、豪奢な扉を開けながら優雅に辞儀をする。
丸屋根が連なる帝国の皇宮は数多の棟に分かれているのだが、マリーが待つ部屋は控えの間から大分離れた場所にある。身分も知れない異国出身の侍女など粗末な部屋に案内されていそうなものなのに、扉の向こうにはやたらと豪奢な家具が並んでいる。
「どうぞ中へお入りください」
そう言って侍女頭は乱暴にペネロペの背中を押して部屋の中に押し込むと、扉を閉めて外から鍵をかけたようでガチャガチャと音が響き渡る。つんのめりながら部屋へと足を踏み入れたペネロペが顔を上げると、二人の男に両腕を掴まれた。
腕を掴まれたままのペネロペの前に、暗赤色の髪色をした年若い男が近づいて来る。
そうしてペネロペの顎を掴みながら言い出したのだ。
「兄を殺した氷の英雄の婚約者だと言うからどんな娘かと思いきや、思いの外平凡な容姿をした女ではないか」
蔑みの眼差しで自分を見つめる翡翠の瞳を見上げたペネロペは、目の前に居るのがアブドゥラ第四皇子だろうと察した。ペネロペの腕を掴む二人の屈強な男は、皇子の護衛となる男たちというところだろうか?
「ウィッサムと貴様の父親が皇宮に入り込んで何かをしようとしているようだが、私が皇帝となるのは決まったのも同じこと」
皇帝は妾妃が産んだ子を皇帝にすると豪語しているというのに、自分が皇帝になると豪語する。
「兄を殺した悪漢の縁者である其方が皇宮に入り込んだと聞いて、わざわざ呼び出してみれば笑止なことよ」
ペネロペはイケメンも嫌いだが、品の無い男も大嫌いだ。
目の前の第四皇子は、顔はそこそこに整っているかも知れないが、痩せ細った筋肉しか付かず、貧相な肉体をしている。ペネロペを嘲笑うその顔自体が下品極まりない。
ペネロペの腕を掴む男たちも下品極まりない様子で、ニタニタ笑いながら舐め回すようにペネロペを見てくるのだ。ペネロペはイケメンが嫌いだが、下品な男も大嫌い。
「貴方は嘘をついていますね」
腕を掴まれたままの状態で、ペネロペはアブドゥラ皇子をじっと見つめた。
「私が皇帝となるのは決まったのも同じことと言いながら、自分が皇帝になるとは想像がついていない。皇妃が居るから何とかなるだろうと思いながらも、実際に自分が実権を握ったら何をすれば良いのかイメージすら湧いていないのですよね?」
ペネロペはこの状況でも呆れた声を上げ続けた。
「第一王子が優秀すぎて、忘れ去られていた皇妃の息子でしたっけ?可愛がる程度でしかないお飾り皇子でしたっけ?」
アブドゥラはひたすら甘やかされた皇子なのだ、軍人を近くに侍らせては居るものの、本人自身に武勇の誉などあるわけもない。幾ら偉そうにしたところで、それが滑稽にしか見えない。
「上の皇子たちが優秀過ぎたが故に、劣等感しかない皇子、優れたところが一つもない凡庸な皇子、そんな貴方が皇帝に決まった?」
ペネロぺがそう言って笑い出すと、怒りで顔を真っ赤にさせたアブドゥラがペネロペの襟首を掴んで持ち上げる。そうして、ペネロペを引きずるようにして隣室へと連れ込むと、そこには大きなベッドが置かれていたのだった。
確か、花の宮殿でペネロペを辱める為に用意された男の数は三十人ではなかっただろうか?ペドロウサ侯爵家の娘マカレナが主導となって、ペネロペに恨みを持つ男たちに声をかけて行ったところ、それだけの人数が集まった。
ペネロペが怪我を負って宮殿で世話になった際に専属となった侍女のマルタが、ペネロペが犯されるのを楽しく見学しようということで友人たちに声をかけて、給仕の役を買って出たという話も聞いている。
ペネロペの胸ぐらを掴んだまま歩いて来たアブドゥラ第四皇子が、ベッドの上にペネロペを投げ付けると、胸元の生地が破れるような音が室内に響いた。ベッドの上に広がるスカートからちらりと見える足首が扇状的で、アブドゥラの後にいる二人の男たちはすでに自分の衣服を脱ぎ始めている。
「さあ、これから氷の英雄の婚約者とやらに存分に楽しませてもらおうか」
アブドゥラは自分の首周りの衣服を緩めながら、ニヤニヤ笑ってペネロペを見下ろして来た。
「顔はそれほどでもないが、あの氷の英雄を夢中にさせているのだろう?であれば、体の具合は相当のものであるのに違いない」
ニヤニヤと下品な笑みを浮かべる男たちを見上げたペネロペは、ごくりと生唾を飲み込みながら自分の両手を握りしめた。
三十五話 不埒な男たち 三十六話 くそ野郎 となります。
このお話もラストスパートとなりますので、最後までお読み頂ければ幸いです!
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