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あと50分

よろしくお願いいたします。


読みやすいように、少し直しました。





「勇者の血をひくお前だが、いつまで保つかな」

「きっとカヌレ達が助けに来てくれる。だから信じて待ちます」

 



 時は少し遡り、魔王のいる居城で、侯爵夫人マドレーヌは魔王に囚われていた。

 何千年も昔、勇者がこの魔王を討ち、隣国の聖女でもあった王女と結婚して王になった。

 伝説の魔王の敵意と魔力に当てられて、マドレーヌの体は悲鳴をあげていた。

 

 

 つい先程のことだ。 

 侯爵邸で、夫の帰りを待っていた。

 突然、この国の聖女が訪ねてきたのだ。

 この国では、聖なる力を持つ者が教会で修行して、神官や聖女になる。

 訪ねてきた聖女は平民の生まれだったが、努力を重ねて認められて、皇族の婚約者候補になったという。

 そんな彼女を、マドレーヌ夫人は尊敬していた。

 彼女が先触れもせず、夜に急に訪ねてきた時、疑問に思わず応対してしまった。

 緊急事態だったら困るだろうと思ったのだ。

 マドレーヌが玄関の扉を開けた時、聖女は魔術がかかれた紙を取り出した。

 そして、マドレーヌに向けて放った。

 

「どうしてお前ばっかり!私だって努力してきたのに!」


 一瞬だった。

 気づいた時には、森にいた。

 侯爵邸から飛ばされたと分かった。

 なぜ彼女がそんなことをしたのか、マドレーヌには分からなかった。

 何度か、話したことはある。

 しかし、体が弱い夫人は社交に出ることも出来ない。

 隣国から一緒に来た王太子妃やモブエー達と、身内だけの小さなお茶会をするくらいだ。

 聖なる力を持ってはいるが、修行に耐えられる体力はない。

 時々体調のいい時に、近くの孤児院で、自分が教えられることを教えるのが限界だった。

 

 森で呆然としていたら、禍々しい魔力をもつ男が現れた。

 男は、黒髪に血のような瞳、ねじれた角をもつ魔王だった。

 魔王は、かつて勇者に倒されたことがあると言った。

 彼は、長い年月をかけて力を取り戻し復活したという。

 魔王を倒した勇者の子孫は、隣国のサルミアッキ王家だ。

 マドレーヌの生家は、王家から分家した公爵家だ。

 彼女も王族の血を引いている。

 彼はマドレーヌを憎々しげに捕まえて、魔王城に連れてきた。

 そして、無数の巨大な黒いヒルのような魔獣を出して、マドレーヌを襲わせている。

 マドレーヌには守護魔法がかけられていたので、魔獣の直撃は避けられた。


「お前の魂には、俺が勇者の一族にかけた呪いの痕跡が残っている。どうやって免れたか分からんが、もう一度かけ直してやる。忌々しい一族め!」

「呪い…!?」


 魔王は黒い靄を出した。

 それは無数の鎖や魔物の形を取り、マドレーヌに襲いかかってきた。


「この呪いは、命と魂を傷つける。生まれ変わっても消えることなく続く呪いだ」

「これは…!?あれは…悪夢じゃなくて呪いだったの!?」


 マドレーヌは幼い頃から、無数の鎖や魔物に襲われる悪夢に苦しめられていた。

 カヌレと結婚した辺りから、悪夢を見ずにすむようになっていたのに。

 マドレーヌは、必死で聖力を体の周りに張り巡らせて、身を守る。

 それでも全ては防ぎきれず、傷ついていく。

 痛い…!!

 すると、ふとお腹に違和感を感じる。

 お腹に命が宿っていることに、気がついた。


(カヌレとの赤ちゃん………産みたい!産んであげたい!私をずっと守ってくれるカヌレが、私に望んだもの…!)


 カヌレはマドレーヌに、自分との赤ちゃんをいつか産んでほしいと願っていた。

 彼女が何か欲しいものはないのかとたずねると、いつも照れ臭そうにそう願うだけだった。


(魔王の呪いは命と魂を傷つけて、生まれ変わっても消えない…。そんな呪いを赤ちゃんに背負わせるわけにはいかないわ)


 マドレーヌは自分を守っている守護魔法に干渉し、お腹の子を集中的に守るようにした。

 肌身離さず持っている6つの魔石を使い、自分の身を守る結界を張り巡らせる。

 魔王の呪いと魔獣達は、隙をついてはマドレーヌを傷つけ続けた。

 痛い…!!痛い!!!

 魔王はマドレーヌを見て、嘲笑っている。


(きっとカヌレ達が助けに来てくれる………信じて待たなくては!!絶望しては駄目!諦めたら呪いに負けて終わる…!)


 

 マドレーヌのもつ魔石の一つが、力を使い果たして砕けた。

 





★★★★★


 

 


 モブエーは、城下町の仕事場にいる時に、時間が巻き戻っていた。

 ここは、レディ・マンボウ旅行会社。

 マドレーヌ夫人ファンクラブの仲間達と立ち上げた会社だ。

 モブエーは社長を務めている。

 『推し』であり友でもあるマドレーヌ達を、隣国へ追いかけるためだ。

 レディ・マンボウはマドレーヌのあだ名である。本人は知らない。

 もし知ったら、真っ赤になり恥ずかしがって泣き出し、困り果てて逃げ出すだろう。

 会社には数人の社員が残っていた。

 モブエーは急いで魔道士の道具を取り出して、副社長に声をかけた。



「すまない!緊急の用事で出かけなくちゃいけなくなった!すぐ動ける奴いる?」

「1人いるわ。剣士ね。帰りは遅くなるの?」

「ありがとう。モブビーコ。助かるよ。すぐ来てもらって。すぐ飛ぶから。帰りは朝かな…上手くいけばね」

「分かったわ。後のことは任せて。何かあれば、連絡ちょうだい」

「うん。どうしても捕まえたい奴がいるんだ。絶対に許せなくてね…」

「気をつけてね」


 モブエーは駆けつけてきた剣士とともに、カヌレとマドレーヌの家へ魔法で飛ぶ。

 マドレーヌを魔の森へ飛ばした聖女が、笑いながら家から飛び出してきた。

 モブエーは、睡眠魔法を全力で聖女に叩き込む。

 ふいをつかれて昏睡状態になった聖女を、剣士に縛り上げさせた。

 聖女に魔力封じの魔道具をつけて、秘密裡に会社の倉庫へ放り込んでおくように頼んだ。


「絶対に逃さないでね。ゆっくり尋問しなくちゃいけない。こんなことを2度と起こさないために」


 感情がすんっと抜け落ちた表情で、モブエーは言った。

 辺りの温度が、絶対零度まで下がったように冷え込んだ。

 そして、モブエーはカヌレを迎えに転移魔法で飛んだ。

 残された剣士は、倒れている聖女を見てつぶやく。


「優しい社長をあんなに怒らせるなんて…誰だか知らないが終わったな……」






★★★★★





 カヌレは、時が戻った時には、王城にいた。

 魔王の魔力が時空に干渉している為に、マドレーヌが魔の森に飛ばされた直後にしか戻れないらしい。

 事前の打ち合わせでは、ローズはそう説明してくれた。

 彼女の話を聞いた時は驚いたが、チャンスをくれた彼女には感謝しかない。

 ローズは、強力な救援を連れて魔の森へ直接向かってくれる。

 自分は、モブエーが迎えに来てくれて一緒に魔の森へ転移して、マドレーヌ救出に向かう。

 この国の皇太子とはカヌレは、学生時代からの友人だ。

 皇太子に気に入られ、この国で彼の側近をしている。

 皇太子のいる執務室に駆け込み、カヌレは直談判した。

 皇太子は話を聞くと、自分の持つ聖剣をカヌレに貸し与えてくれた。

 王家の紋章入りだ。


「おまえの話を信じるよ。カヌレは昔からマドレーヌが絡むと怖いからなー。それがあれば、魔の森にいる騎士達と交渉しやすいだろう。こっちでも出来ることがあればやっておくから」

「ありがとうございます!この御恩は決して忘れません!!必ず妻を助け出して戻ります!助けるまで何度でも何度でも何度でも…やりなおしてみせます…!」

「こわっ…」


 カヌレは聖剣とありったけの魔道具を抱えて、モブエーとの待ち合わせ場所に向かった。

 モブエーが転移してきた。

 カヌレはモブエーと一緒に王宮の庭から転移魔法で、魔の森へ飛んだ。



「マドレーヌ!絶対に助けだします!!!たとえ何度やり直すことになっても!」













読んでいただき、ありがとうございます!

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