第7話 ココロおどらない金曜日
今日の日付は5月13日金曜日だ。そう、金曜日。1週間で2番目に嬉しい日だ。ちなみに1番は土曜日だ。なぜ金曜日が2番目に嬉しいかというと平日の終わり、授業という地獄から一時的に解放される。今日さえ頑張れば楽しい楽しい土曜日が待ってると思えば1日なんてあっという間に終わる、はずだった。
スマホの通知を確認すると先輩からメッセージが届いていて、こう書いてあった。
『今日の放課後にバンド関係の話をしたいから多目的室まで来て』
とのこと多目的室なんて使ったことないな。机と椅子と本棚とかしかなかった気がする。なんというか自習する所っていうイメージが強い。少しがっかりしつつもやっとバンドのことをことを進めるのかという気持ちだった。でも、なんかひっかかることがある。なんだったか、忘れた。
ベットから降り、顔を洗って朝飯食って、着替えて、歯を磨いて。栞はまだ起きてない、まぁ別にあいつは放っておいてもいいかな。
「いってきます」
2階から返事は返ってこない。ぐっすり寝てるんだな。ゲームやってたら明らかにカチカチマウスと青軸のキーボードの音がするはずだ。ドアに鍵をし、忘れ物チェックをし、学校へ向かう。
「あ」
思わず声が出た。そうだ、思い出した、メンバー探ししなくちゃいけないんだった。これは何か言われるな。先輩から何か言われるかもしれないけど覚悟を決めて学校へ向かうのだった。
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朝、教室に着くと船越が窓に手を当て、ぼーっと立って外を眺めているのが見えた。そのままスタスタ歩いて船越のもとまで行く。近くに行っても船越は気づかない。
「船越」
「…名取君?」
ポンと船越の肩に手を乗せるとやっと気づいた様子だった。
「どうしたんだよ外をずっと見つめてさ。なんかいたか?」
「ううん、なんでもないの」
「…そっか」
俺は自分の席に向かったが、明らかになにか隠してるというか悩んでいるような雰囲気だった。あまり探りたくはないが気になるなぁ。
昼休みになった。1、2、3時間目と授業を受けてたがやっぱり船越の様子がおかしい。こういうときはあいつの友達に聞くのが一番手っ取り早いな。
ということで日比野のもとへ行った。
「日比野はもう気づいていると思うけど、船越の様子なんかおかしくないか?」
「…えっ、あっ、もちろん気づいてたよ!うんうん!」
日比野は焦ったように言った。こいつ気づいてなかったな。まぁいいや。俺は少し頭をかいた。
「まぁとりあえず船越の様子がなんかおかしいんだ。お前がそばに行ってやれ」
「えーそれって私じゃなくて名取でもいいんじゃないの?」
「いや、俺じゃなくてお前じゃなきゃ駄目なんだ。な?」
そうすると途端に嬉しそうな顔をして日比野は「響子〜」と船越のもとへ走っていった。よし、計画通り。
「やっぱりこういうのは女子同士がいいんだよ」
そうつぶやくと席に戻らずなんとなくトイレへ行った。
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授業を適当に受けていたらあっという間に放課後になってしまった。帰りのHRが終わり、スマホの通知を確認するが、何も来ていなかった。先輩からのメッセージも朝から変わりないし、そのまま多目的室に向かえばいいのだろう。
多目的室は高校側の校舎の地下1階にある。地下一階には多目的室のほか図書室やトレーニングルームなどあるが俺には一切関わりのない教室だから全く来たことがない。
多目的室の前で一応2回ノックをする。そうすると
「入っていいわよ」
と先輩の声が聞こえてきた。
「失礼します」
さながら職員室に入るかのようだった。
教室に入ると先輩は一番前の教団の前の席に座っていた。
「で、先輩。今日は何をするんです?」
「あなたメッセージ読んだの?」
若干キレ気味だった。怖い。
「いやバンドのことについて話すって書いてありましたけど他にも何か話すのかなーって思っただけです」
「ふん、それならいいわ。とりあえず本題に移るから私の隣に座って」
俺は先輩の右隣の席に座った。教室が基本的に右の席が男子、左の席が女子となっているからそういういうふうに座ったのだろう。背負っていたリュックを机の横にかけ、椅子に腰を下ろした。
「じゃあ本題に入るわね。私が理想としているバンドには私と名取くんの2人を含めて最低でもあと3人は必要よ」
「先輩はボーカル、俺がギター。あとはドラムとベースと...あ、もしかしてツインギターっすか?」
「違うわよ!キーボード!キーボードが弾ける人が欲しいの!」
からかうのたのしーと心のなかで思うのであった。
「私たちの音楽にはキーボードが必要よ。だからキーボードでもピアノでもいいから弾ける人を最優先で探して欲しいの」
その話を聞いてふと思ったことがあった。俺の場合は先輩がギターを買ってくれたけど他のメンバーはどうするんだ?例えばピアノを弾けたとしてシンセサイザーやキーボードの類を持っているとは限らない。ドラムなんかも家で持っている人は珍しいだろう。そんな不安が顔に出ていたのか先輩にはバレバレだった。
「あ、心配はしないで。楽器持ってなくても私が買うから」
「えっ、そんな金どこにあるんです!?」
「ふふっ、秘密よ。いずれ教えてあげる」
人差し指を立て、口元に当てながらそう言っていた。
先輩の謎はさらに深まるばかりであった。
「じゃ、今日話すことはこれだけだから鍵をかけて帰りましょ」
「そうしますか」
俺らは立ち上がり、椅子を机の中へしまう。俺は窓やドアを閉め鍵をかけた。先輩は自分の荷物をまとめていた。そして教室の電気を消し、若干夕日が差し込む多目的室を後にした。
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船越響子は一人っ子だった。家は一軒家。母は教師、父はピアニストだった。学校の勉強は母が教えてくれたし、父はピアノを教えてくれた。けど特に役には立たなかった。
父に何も言われてないからコンクールは出なかったし、勉強だって、受験は推薦だったから勉強は必要なかった。提出物さえ出してれば5なんて普通に取れた。それでも両親は喜んだ。テストで100点を取れば好きなものを買ってもらえた。毎日美味しいご飯もあった。父は忙しいから家にいない日は多かったけど、それでも楽しい日々は続いていた。まぁそんなのはもうないけど。
船越響子は家の前にいた。自分の鞄から家の鍵を出し、ドアの鍵を開けるがそこで手が止まる。ドアが鉄の塊のように重い。でも、毎日そうだ。ドアは急に軽くなり、開くことができた。
「ただいま…」
そう当たり前のあいさつをしても反応してくれるのは玄関の天井についているセンサー付きの照明だけだった。父は相変わらずいない。きっと仕事でどこかへ行っているのだろう。母も靴がないからきっと出かけているのだろう。
私は靴を脱ぎ踵を揃えて端へ寄せた。2階にある自分の部屋に向かって階段を上がる。『きょうこのへや』と書かれた看板をぶら下げているのが私の部屋だ。この看板は小学生の頃に授業か何かで作ったのものだった気がするがいまいち覚えていない。なんだが着替える気力もなく、そのままベットに倒れ込んでしまった。
「はぁ…」
そうため息をついて目を閉じた。
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それは何気ない誰かの会話だった。
「幽霊が見える生徒がいるんだってさ」
「そんなのウソウソ。どこに見えるっていう根拠があるんだか」
「わかんねぇからみんなでイジってあげてるんだよ」
「なんだかかわいそうだな(笑)」
「「はははははははは!!!!」」
それは何気ない誰かの会話だった。
おはようございます。こんにちは。こんばんは。初めての方は初めまして。いつも読んでくださってる方はありがとうございます。どうも、乙坂一矢またの名をJanneです。みなさんお元気でお過ごしでしょうか?僕は最近忙しすぎてこっちに手をかけれる暇が無く、しばらく更新できていませんでした。すいません。今回が2ヶ月ぶりの投稿ですかね?もう年が変わるっていうのに…ちなみにこの話が今年最後の投稿です。こんな下手くそな小説を読んでくれる方本当にありがとうございます!これからはまた元もペースで投稿していきたいと思いますのでよろしくお願いします。それでは良いお年を!