第0話 はじまりはじまり
5月2日それはよく晴れた日だった。
人通りの多く、車通りも多い道。そんなところにある横断歩道だった。右を見れば人。左を見れば人。ごった返すにもほどがある。俺、名取祐介はこんなところで何をしているのかというと、信号を待っていた。あたりまえだ。むしろ信号を待っている以外の回答はなかっただろう。
ふと、手に持っていたスマホから顔を上げた。そうすると横断歩道の向こうに同じ学校の制服を着た女子がいた。
身長は…160cmは超えてるだろうか。周りの女子と比べて身長が高い。それにあの髪型。銀髪ロング…あんな髪型だったら見たことくらいあるはずだ。だけど、
「あんな女子いたか?…ん?」
「―――、―――――」
何か喋ってるようだ。だが遠すぎて何も聞こえない。
次の瞬間、
「うおっ!」
強く風が吹き、目を閉じた。その次の瞬間彼女はいなくなっていた。
「なんだったんだ…あの子は?」
幽霊にでも出会ったのだろうか。はたまた神隠しにでもあったところを目撃してしまったのか。
「これで名前なんか取られたら怖いな」
昔見た映画を少し思い出して、青になった横断歩道を渡り、俺は学校へ向かった。