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五話 立って歩く。


 時はアレンがベナデース壁の門から外……つまり国外追放されてしまったところに戻る。


 ここはサンチェスト王国の東にあるベナデース壁。


「俺はサンチェスト王国にもう必要ないようだよ」


 アレンはしばらく高くそびえるベナデース壁を見上げていた。


「ハハ、ここ数年働き詰めだったからな。あとの余生をゆっくり過ごすのも悪くない……か。隠居なんて考えたこともなかった」


 寂しさを振り払うようにアレンは無理矢理笑って見せた。


 それでも、アレンの表情はすぐに寂しげな表情へと戻る。


「さて行くかな……ん?」


 ひざに手を置いて立ち上がろうとした時だった。


 不意に自分の右手に視線を向けたところで、見覚えのない指輪が右手の人差指に付けられていることに気付いた。


 その指輪には赤色の宝石が付いていて、リングに錆びや汚れがあって古くに作られた物のようだった。


「んん? 何だ? これは? 見たことが無いけど魔導具か? どんな効果なんだろうか? いや、どんな効果であろうと、気持ち悪いな」


 アレンは指輪を観察するように見つめていた。そして、指輪に恐る恐る触れて、外そうと試みる。


「ぐぬぬぬ……抜けない! 何らかの条件を満たさないと外すことのできない魔導具なんだろうか? まぁ……外せないなら仕方ないか」


 指輪はアレンがどれだけ力を入れて指から引き抜こうとしたが外れなかったので、そうそうに諦めて立ち上がった。


 そして、服に付いた砂を払いながら、周囲に視線を巡らせる。


「さてさて、これからどうしようかな」


 アレンの目の前には森が広がっていた。


 そして、視線を右にずらしていくとその森を迂回するように道がある。さらにその道の向こう……つまり道を挟んで森の反対側には巨大な岩がいくつも転がる岩石地帯となっていた。


「うむ。とりあえず、周りに人の気配はないなぁ……ほんとどうするか」


 周囲の状況を目にしたアレンは腕を組んで考え始めた。


 隠居するにしても、衣食住をどうにかしないとな。


 確か、ベナデース壁の向こう側にある森の名前は……『ユーステルの森』だったか?


 それでユーステルの森を迂回するように作られた道は……確かベラールド王国とかいう国に続いているんだけか?


 ベラールド王国へ向かう?


 しかし、どのくらいの距離にあっただろか? 腹の空きぐわい、喉の渇きぐわいから考えて近くに何かあってくれないと積むんだけど……。


 んー国外の地図まで頭に入っていないから絶対とは言えないが……直線距離ではそれほど離れていなかった。


 だけど、ユーステルの森を迂回して向かうので時間が掛かってしまうんだよな。


 んーベラールド王のことは良く知らないんだよな。


 ベラールド王国はなんか知らんが……悪党として国外追放されたと思われる俺を受け入れてくれるだろうか?


 それとも、このベナデース壁に沿って東に向かいバルベス帝国へと入国するか?


 距離的にはベラールド王国と同じくらい……?


 だが、バルベス帝国ならば国土が広いから簡単に密入国もできそうだよな。


 んーいや……待て待て。


 俺はバルベス帝国の軍と戦うことが多かった。


 帝国内に俺を憎んでいる人間も少なくないだろう。


 身分を隠しながら暮らしていって……。


 もし、俺の身分がバレたら敵中で命を狙われ続けるだろう。


 そんな環境で暮らしていくのは辛すぎる。


 アレンはしばらく考えを巡らせていたが、ベラールド王国へと向かう道を歩きだした。


「……帝国は……ないな。だとすると前者か……受け入れてくれることを祈ってベラールド王国に向かうかな。あと最終手段で……森の中か? 一人でまったく情報のない森に入るはなかなか拙いな」




 ◆



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