四十八話 十五日後。
前にリンベルクの街に訪れてから十五日が経った。
今日は冒険者ギルドで講習会があると言うことでアレンは朝早くリンベルクの街に再び訪れていた。
「お、お前は確かアレンだったな」
リンベルクの街の囲う壁に設置された扉のところにゴードが立っていた。
「うん、こんにちは。ゴードさん」
「街に入るのか?」
「うん」
「じゃ、身分証と入街税の銅板五枚だがあるか?」
「うん」
アレンは懐から身分証となる冒険者のギルドカードと銅板五枚を取り出して、ゴードに手渡した。
「あぁ。確かに……お、今回もなんか売りに来たのか?」
「うん、さっき罠で捕まえたんだ。今日はあまり時間がなかったから、ガーホ鳥が三羽かな?」
アレンが吊るしていたガーホ鳥をゴードに見せた。
ちなみにアレンは罠など使わずに、小石を投げて捕まえている。
ただ、今のアレンは十二歳の子供を装っている。
普通に考えて小石を投げて素早いガーホ鳥を捕まえることのできる十二歳の子供は居ないので罠で捕まえたことにしていた。
ゴードは感心したようにうなずいた。
「すげーな。ガーホ鳥はそんな簡単につかめるもんじゃないはずだがな」
「ふふ、あ……それと今日は冒険者ギルドの講習会があるんだった」
「そうなのか。じゃ遅れないように行くんだな」
アレンはゴードからギルドカードを返してもらうと、急ぎ冒険者ギルドへと向かって走り出した。
アレンが冒険者ギルドに入ると、受付カウンターへと向かった。
受付カウンターは二つ開いていて、あからさまに片方が行列で、もう片方は空いていた。
アレンは首を傾げながらも空いている方の受付カウンターへと並ぶ。アレンが静かに待っていると隣で行列に並ぶ冒険者の声が聞こえてくる。
「今日もフレデリカちゃん可愛いなぁ」
「マジで、天使だよな」
「はぁ……」
「そういえば、彼氏できたって噂が……」
「な、それは本当か?」
「前、休日に男と二人で街を歩いていたところを見た奴が居たんだったよな?」
「あぁ。それ、フレデリカちゃんに聞いたら、親戚のお兄さんだったんだって」
「……それって本当か?」
あぁ、この行列は前来た時に噂になっていたフレデリカちゃんが受付しているカウンターを目指していると言う訳が……。お疲れ様だな。
アレンが周りの声に聴き耳をたてていると、前に並んでした人が居なくなってカウンターに向かった。
受付カウンターにはベルディアが居て、アレンを見るとニコリと笑った。
「おはようございます。アレン君」
「こんにちは。お姉さん」
「く、くうううう」
ベルディアはもだえるように体を震わせた。
そのベルディアの様子に周りの職員も、近くに居た冒険者達も怪訝な表情を浮かべていた。
「ん? どうしたの?」
「ううん、なんでもないわ。確か、今日は講習会だったわね」
「うん」
「講習会までは少し時間があるからロビーで待っててね。あ……もしかして、今日も何か売るのかしら?」
「うん、今日も罠でガーホ鳥を三羽捕まえた」
「ふーん、すごい腕ね」
「罠のおかげなんだけどね」
「そう。じゃ、どんな罠を使っているのか聞かれても内緒にしなきゃ駄目よ? そう言う技術でこれからもご飯が食べて行けるから」
「うん、分かったよ」
「ふふ、そういえば、『飛翼』の二人がアレン君のことを気にしていたのよ?」
「飛翼……? あぁ、二人の組のなんかすごくカッコ良かったお姉さん達だったかな。え?あの二人が俺のことを聞いたの?」
「そうよ。びっくりしちゃったわよ。アレン君はもしかしたら何か持っているのかしら」
アレンは口元に手を置いて考える仕草を見せる。
気配はちゃんと偽っているつもりだけど……?
もしかして、俺の実力が計られた?
冒険者はそういう勘が鋭いから厄介なんだよな。
んー困るな。
この街の中では十二歳のアレン君を演じているというのに……。
どうしようかな?
……いや、どうしようもないか?
口止めする?
この冒険者ギルド内では一番の冒険者だろうが、今の俺でも勝てなくもなかったはずである。
いや、実力を見極められるたびに実力行使で黙らせるのも面倒だよなぁ。
んーどうしようかなぁ。
アレ? そもそも、どの程度実力を読み取られたか?
騒ぎになっていないと言うことは……そこまで問題ではないか?
まぁ……なるようにしかならないだろうな。
念のために……なくなったら困る塩とかまとめて買っておくかな?
「どうしたの?」
「いや、なんでもないよ」
「そう? じゃ、そうね。ガーホ鳥を買い取りに出したら……そこの階段から二階のA-2号室に行ってね。そこで講習会をやるの」
「うん。分かった」
ベルディアの指示を聞いたアレンはガーホ鳥を売りに行き、講習会をやるA-2号室へと向かうのだった。
ベルディアはアレンを見送ると、アレンの後ろ姿を眺めながら小さく笑った。
「ふふ」
「あの先輩~」
「どうしたの?」
「さっきの子が先輩の話していたアレン君ですか?」
「そうよ。それがどうしたの?」
「んーあの子が……」
「ん? どうしたのよ」
「いや、すごい才能を感じる」
「そうなの? やっぱり元冒険者だと感じるところがあるのかしら?」
「先輩、私が元冒険者だということは言わないでください。けど、やっぱりってことは先輩も何か感じていたんですか?」
「いや、私にはそういう勘は備わってないわ。この前、『飛翼』の二人もそう言っていたのよ」
「ふーん、アイツらが……正直担当になってみたいですが、先輩のお気に入りじゃ、無理ですね」
「駄目よ。アレン君は!」
「むー先輩のところには良い冒険者並びますよね。ほんとズルい。私のところには雑魚しか並ばない……」
「もう、そんなこと言わないの。フレデリカも頑張って! 私も手伝うから」
「先輩ありがとうございます」
「しかし、フレデリカに先輩って呼ばれるのは変な感じがするわね。確かにこの職場では先輩なのだけど……年齢は貴女の方が歳うッ」
年齢のことを言おうとしたベルディアの口を、フレデリカが凄まじい速さで押さえてニコリと笑った。
「先輩。年齢のことも言わない約束ですよ」
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