三十八話 修行修行。
「まさか、やるとは……」
アレンはホランド達がそれぞれの武器を素振りしているのを眺めながら呟いた。
すると、片手剣を振っていたホランドは苦笑した。
「ハハ……ああ、言われてやらないなんてありませんよ」
「そうか。ホランド……力任せにせず、もう少し剣の性能を信じてやれ」
「はい。これずっと素振りからですか?」
「基礎からだ」
「ノックスはブレなく直線的に長槍を突き出せ」
ホランドに続いて、長槍を構えて突く動作をしているノックスのところに歩いてきてアレンは声を掛ける。
「はいッス」
「相手の急所一点を突くイメージを持て」
「はいッス。これはずっとッスか?」
「あぁ、さっき、いくつかの基本的な型を教えてやったろ? 正直、手の皮が剥けるくらいにまで突き抜け」
「手の皮が剥けるくらいッスか……」
「頑張れ」
「リン、もう少し相手がいることを意識しろよ? 魔物の相手はもちろんだが、人間も」
ノックスの隣で、両手に持つナイフを振るっていたリンにアレンは声を掛ける。すると、アレンの指摘を聞いたリンは目を見開いて驚く。
「え、人間も?」
「冒険者なら人間相手は少ないかも知れんが……世の中どうなるか分からんからな」
「そう……だね。分かった」
「この後は投擲の練習に移れよ」
「分かった」
「ユリーナ、全身の筋肉を使ってナイフを鋭く振り抜け」
リンの隣で、同じくナイフを振るっていたユリーナにアレンは声を掛ける。
「わかった。あの……」
「ん? 何だ?」
「私はずっとこの素振りだけ?」
「あぁ、飽きるだろうが、先ずはナイフを鋭く振り抜けるようになれ」
「……わかった」
「これはさすがに魔法は午後からにするか」
アレンは座りこんでいるホランド達を眺めながら呟いた。
武器の訓練が終わった後、ホランド、ノックス、リン、ユリーナは地面に座りこんでいた。
「もうダメです。腕が……」
「手の平が痛いッス」
「腕が上がらない」
「脇腹が……」
ホランド達の様子を眺めながらアレンは苦笑した。
「ハハ……この訓練は体と言う基礎を作るために続ける必要がある。しばらくは辛いかも知れんが……そこは慣れるまで耐えるしかないな」
「耐えてみせます。俺は貴方のように……」
「嬉しいこと言ってくれるな。昼食は作っといてやるから、しばらくそこで死んでいろ」
「すみません。ありがとうございます」
アレンはスッと立ち上がって屋敷へと向かっていったのだった。
アレンの後ろ姿を見送りながら、ホランドが呟いた。
「アレンさん……なんであんなに元気なんだろう?」
「分からないッス。俺らに気を使いながら走っていて呼吸一つ、汗すらかかないなんて……やばいッスね」
「……あそこまですごくなる自分が全くイメージできないんだけど」
「ふす……ん」
「アレンさんのところまで行けるかは分からないけど……これを続けたら……強くなるっていうのは分かるな」
「それは……そうッスね。俺達は強くならないといけないッス」
「そうね。アレンさんをわざわざ付き合わせているんだから」
「ふすん」
ホランド達は座り込んで動けないながら、しばらく話していた。
「さて、昼食も昼寝も終わって魔法の訓練を始める訳なんだが。今日は何からやっていくか……ホランド、ノックス、リンは瞑想でマナを感じ取れるようになったんだよな?」
地べたに座ったアレンは、向き合う様に地べたに座ったホランド、ノックス、リンに問いかけた。
「はい。俺は少し時間がかかりますが」
「言われた通り、朝起きたら瞑想をやってるッスよ。ちゃんと感じれるッス」
「だいぶ慣れてきたんだから。正直魔法を試しに使いたくてうずうずしてなんだから」
「ふむふむ、そうか」
ホランド、ノックス、リンの答えを聞くと、アレンはどこからか拾って来た木の棒で地面に何やら書きはじめた。
「確かにマナの流れはずいぶん改善しているから。んーじゃあ、自分の得意不得意を知るためにも一日ごとに魔法の種類を絞って訓練して行くか」
「ふすん。そう、私も一通り全部の種類の魔法を習った」
アレンの隣に座っていたユリーナが口を開いた。
ちなみにユリーナはすでに魔法を使うことができているので基本的に講師側に回っていた。
「じゃ、まずは火属性の魔法だな。これが【ファイヤーボール】の魔法陣だ」
アレンが何気なく木の棒で書いていたのは火属性の魔法である【ファイヤーボール】の魔法陣だったようだ。
魔法陣と言うのも、円とその円の中に小さな円と三角の図が書かれているだけだった。
アレンは自分の書いた魔法陣にスッと手を乗せる。
アレンが手を乗せた魔法陣がうっすらと光り出したところで、魔法陣から三十センチほど上の辺りに拳サイズの火の玉が出現した。
「前にも言ったが、まずはイメージするんだ。今回は火属性の魔法をなので……こんな感じの火の玉。イメージが固まったら体内に流れているマナを魔法陣に集めて……マナを自身がイメージした魔法へと変換する」
「はい」
「はいッス」
「分かった」
早く魔法の訓練を始めたい様子のホランド、ノックス、リンを目にしたアレンは笑みを浮かべた。
そして、先ほど出した火の玉を、まるでお手玉みたいに操作しながら口を開く。
「まぁ、口で言うほど簡単にはできないだろうが……とりあえずやってみろよ」
アレンの言葉を聞くとホランド、ノックス、リンは意気込んで魔法の訓練に乗り出したのだった。
ただ、三十分後。
「なんで、できない……」
「出来ないッス!」
「出来ないよ……」
ホランド、ノックス、リンは地べたに寝転がって声を上げた。そんな、ホランド達の様子を見てアレンは笑う。
「ふ、ここで出来たら。天才だな」
「あのどうやったら……」
ホランドがいち早く起き上がって、アレンに問いかけた。
「ふ、そんなもん。自分で試行錯誤して見つけるしかないんだよ。魔法を使う感覚を掴むには……。ほら、寝てないで続きだ!」
アレンに急かされるような形で、ホランド達は魔法の訓練を再開するのだった。ただ、……その日一時間を超えて魔法の訓練に時間を割いたが、結局誰も魔法を使うことはできなかった。
◆◆◆
読んでいただきありがとうございました。もし……少しでも面白いと思ったら、お手数ですが……評価とブクマをいただけると作者が元気になりますのでどうかよろしくお願いします。ヾ(๑╹◡╹)ノ"




