三十四話 屋敷。
アレンが警戒しながら鎧兵と戦った闘技場の先にあった扉を開けた……。
その瞬間、鐘の音が聞こえてきた思ったら、扉の向こう側がパッと明るくなった。
アレンは突然明るくなったことで、少し目をくらみながらも扉の先を見る。
「これは……ん、屋敷か?」
アレンの視線の先には、土をくり抜いて作られた小さな街くらいならばすっぽり入ってしまいそうなほどに広い空間があった。
その広い空間の中央には、大貴族が住んでいそうなくらいに大きな青い屋根の屋敷が一軒建っていたのだ。
青い屋根の屋敷は、未だに鳴っている鐘が設置されているのが中央の建物、その手前には金色の噴水があり、更に両サイドにはそれぞれ二階建ての建物があった。
形が統一されていて正面から見ると、シンメトリーになっているようだった。
そして、屋敷の周囲には十メートルはある高い壁と堀が彫られていて、その堀を水が流れていた。
続いて、上を見ると、巨大な丸い球体が浮かんでいて、その球体からは太陽のような温かい光が全体を明るく照らしていた。
「ここは地下通路のゴールとなる場所か? ノヴァ、何か……嗅ぎ取れるか?」
「スンスン……いや、特に何も……少なくとも生き物の匂いはない」
アレンと同様に、扉の先を覗いたノヴァが呟いた。
アレンは前に居たノヴァに問いかける。
すると、ノヴァは鼻を動かす仕草を見せ、首を横に振った。
「そうか。じゃ、ユリーナの探知魔法には何か引っかかるか?」
「えっと……あの屋敷の中央の建物の中……何かある。なんだろ……こんなの今まで感じたことのない。なんかすごい」
どこか魅了されて熱に侵されたような様子のユリーナは屋敷の前の辺りを指さした。
アレンはユリーナの指さした方へと視線を向ける。
「まだ、建物の中に鎧兵みたいなのがいるのかな? ちょっと行ってみるか」
アレン達は開けた扉からまっすぐに屋敷まで続く、石畳を歩いて行く。
屋敷の前、堀にかかっていた橋を渡って門の扉へ向かって、アレン達は相変わらず隊列を組んで進んでいた。
「門の扉は開いた状態か……? アレ? そういえば、鐘の音が止んだな」
「そうですね」
アレンの後ろを歩くホランドがアレンのつぶやきに答える。
「んーあと門のところに帝国の紋章があるな」
「やはり、ここが帝国の持ち物なのでしょうか? だとしたら、なんで人が居ないのでしょうか?」
「確かに……それは謎だ」
「うわぁ……すごい」
「すごい綺麗」
開いていた門の扉から屋敷の敷地内に入ると、目の前にはリン、ユリーナが思わずこぼしてしまうほどに目がくらむほどに豪華な作りの建物。
そして、正面から見ると建物や金色の噴水のすべてがシンメトリーとなって整った建築美を感じる。
「これは凄いですね。こんな綺麗な建物を手放しますかね?」
「……何かあったか……そういえば、あの鎧兵が『この先の宝はお主のものである』とか言っていたから一応は俺がここに入ることは駄目っていう訳ではないと思うんだが」
「そうなんですか? では、今のこの建物の所有者はアレンさんと言うことに?」
「そうなるのかな?」
アレンが首を傾げて、ホランドの問いかけに答えあぐねていると……。
隊列の一番後ろを歩いていたノックスがアレンに問いかける。
「ここがアレンさんの所有物ということは……ここに住むってのもアリなんッスかね? 中もずいぶん綺麗そうッスよ」
「え? 住むって? ここに?」
「そうッス。いや、建物の窓から部屋の中にベッドが置いてあるのがチラッと見えるんッスよ」
「むむ、それは……もう一週間以上ベッドで寝てないよな……」
「さすがにふかふかのベッドが恋しくなってるッスよね?」
「むむ……それはそうだな。いや、その答えを出すのは一回見て回ってからだな」
「それは、そうッスね。確かに屋敷の中に何があるか分からないッスよね。じゃ、これから探索ッスかね?」
「あぁ、そうだな」
「あ……あと一つ気になるんッスけど。なんで、こんなに綺麗な状態で残っているんッスかね? あ、もしかして誰かがここに来て管理しているんッスかね?」
「ん、それは保存の魔法が掛けられていたんだと思う。少なくとも地下通路に直近で誰かが使った形跡はなかったし、ノヴァの鼻でも人間の匂いは嗅ぎ取っていなかった。つまり、誰かが管理していると言うことはない」
「なるほどッス」
「話を戻すと、今日すべてを探索できないだろうから……とりあえず、正面のでかい建物を見よう思うがどうだ?」
「そうですね。先ほどのユリーナが言っていたことも気になりますし」
アレンが考えを述べて、後ろを振り向く。するとホランドが答える。
そして、ホランドの他のメンバーであるリン、ユリーナ、ノックスも特に反対意見は内容で頷いた。
「わふ……腹が減った。そろそろ、飯にせぬか?」
アレンの前を歩いていたノヴァ疲れた表情で振り返り、アレンへと言った。
「時間的にまだ早いな。しかし、ノヴァは戦闘もあったから……えっと」
アレンは鞄を開ける中から、干し肉を取りだして、ノヴァに食べさせた。
「あむ……にゃむにゃむ」
「それで、しばらく我慢するんだな」
「うむ。そうするかの」
「そうしてくれ、じゃ……行くぞ」
「むう、食べている最中なんじゃが、にゃむにゃむ」
正面の建物へ歩き出すアレン達に対して、少し遅れて干し肉を咥えたノヴァが付いてくるのだった。




