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百十一話 何が一番大切か?

 冒険者の捜索ため、ユーステルの森に入って六時間が経っていた。


 先頭を歩いていたアレンが木の枝を除けた先に焚火をした跡を見つける。


「? あそこに焚火跡が……少し寄って行くか?」


「はぁはぁ……そうね」


 アレンの問い掛けに、疲労困憊の様子のリナリーが頷き答える。


 リナリーの答えを聞いて、アレン達は焚火跡に近づいて行く。


「これは……まだ新しい」


 アレンがそう呟きながら、焚火跡の中の黒く炭になった木の枝に触れで砕いた。その様子を見ていたスービアがリュックを降ろしながら頷く。


「あぁ、もしかしたら遭難した連中がここで野宿したのかも知れねー」


「意外と近くに居るかもな」


「そうだな。……気を抜くなよ?」


「あぁ。ホップ……お腹の調子はどうなんだ?」


 アレンはリュックを降ろしていたホップに視線を向けて問いかける。


「腹痛の薬を飲んで……もうとっくに治ったわ」


「そうか、それは良かったじゃん」


「そうだな。しかし、今日の腹痛はやばかった」


 大丈夫だと言いつつ、ホップはお腹を擦りつつ表情が優れていない。


 そのホップの様子を見たアレンは、次いでリナリーに向ける。


 リナリーは歩き詰めで疲れているのか、先ほどから座り込んで黙っていた。


 アレンは顎先に手を当てて考える仕草を見せる。


 んー今日はかなり歩いたからな、リナリーがかなり疲れているなぁ。


 いつもより歩くペースも早くなっていたっていたか?


 それは先頭を歩く俺が悪かったかな。


 どうしても、助けを求めている奴が居ると思うと、歩く足も速くなってしまうのか。


 そして、ホップも体調が悪そうだし……。


 しかし、嫌な予感がするとお腹が痛くなるってなかなか面倒だな。普通に感じ取るだけでいいんだが……。


 この二人の状態から察するに……今日は無理だな。


 アレンはスービアに視線を向けて話しかける。


「……スービア。今日はここで野宿するか?」


「そーだな。もう少し進みたいところではあるが。リナリーとホップの状態が悪そうだし」


 アレンの提案にスービアはリナリーとホップの様子を窺って頷く。


 ただ、そこで黙っていたリナリーがバッと顔を上げて声を上げる。


「ま、まだ、行けるわ!」


「リナリー、無理は良くないぜ」


 スービアはリナリーに視線を向けて、首を横に振った。


「そんなことないわ。助けを待っているかも知れないのよ?」


「……そうかも知れない。だが、仮に遭難した奴らを発見できてもだ。ソイツらを襲っているであろうゼルフェネックと戦うことになる可能性が高いぜ。俺は言ったよな? ゼルフェネックは前に狩ったロックヘッドボアよりも厄介な魔物だと。こういった遭難した奴らを捜索するクエストで一番やっちゃいけねーのは、二次災害だ。今日はもう休む……異論は許さない」


 普段へらへらしているスービアであるのだが……目付きを鋭くしてリナリーを見据える。そのスービアの視線を受けてリナリーはビクッと体を震わせて黙った。


「……」


「冒険者なら危ない橋は渡っちゃ駄目だぜ。特にお前はリーダーだろうが、危ない橋を渡って仲間を殺したいのか?」


「私、そんなつもりは……」


「仲間や周りの状況を見極めないと、すぐに死ぬぜ。冒険者の冒険は遊びではないんだ」


「……ごめんなさい」


 リナリーは俯いて、謝罪の言葉を口にした。


 スービアはリナリーの頭にポンと手を乗せると、ニカッと笑う。


「助けに行きたいって気持ちも分かるが。冒険者なら何が一番大切か考えて行動しなきゃだぜ? ちなみに俺は、この中じゃリナリーを一番愛しているぜ? いつでも俺のベッドの隣は空いているからな?」


「……何を言っているんだか」


 アレン達はこうして焚火跡を見つけた場所で野宿することになった。

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