かんでしまった自己紹介
過去に遡る。
二年生に進級した、4月の始業式の日。
一年生のときから彼氏ができずにいた私。
勉強や運動があまり得意な方ではない。
周りから笑われてしまうほど。爆笑とまではいかないが笑われる。それに合わせ容姿もぱっとしない。
始業式で校長の長い話を聞きながら、目を瞑って、彼氏ほしい彼氏ほしいと心のなかで呟いていた。
教室に戻り、窓側の一番前から順番に自己紹介をしていく。男子の後に女子という感じに進んでいく。
ついに私にまわってきた。緊張して名前をかんでしまった。小さな笑いが起きて、恥ずかしくてたえられなかった。自己紹介を言い終え、椅子に座ったと同時にため息が漏れた。
自己紹介が終わり、担任が教卓に手を置いてこう言う。
「いじめのない、皆仲良く一丸となって一年やってこう。それじゃあ──」
いじめのない学校なんてないでしょ、と心のなかで呟く。
LHRが続いて、担任の話が続いていく。
数人の男子が少し賑やかにしていた。その中に那波君もいた。担任は、やんわりした注意をするだけだった。
LHRが終わり、休み時間になった。
那波君の周りに数人の男子と女子が集まっていた。
「なーばっち。これからよろしく、なっ」
「嬉しいー、那波君と一緒のクラスっ」
男子達が笑顔でそんなことを言っている。
「晴樹と一緒で良かった~」
「晴樹君とまた一緒で嬉しいー」
女子達も仲が良さそうだ。
いかにもイケイケの男女達。
目をつけられたくないな、私。
私が見ていることに気付いた那波君と目が合う。すぐに下を向いて、机に視線を向ける私。
「どうした?那波っち。かんでた娘じゃん、気になるの?」
一人の男子が那波君に聞いている声が聞こえた。
「え~、あの娘冴えないじゃん。私達がいるのに。晴樹とは全然じゃ~ん」
女子からもそう聞こえた。
「ちょっと、気になるんだ。あの娘」
周りの男女は笑い声をあげて、やめなよーなどと楽しそうに話していた。
ああぁ、嫌だなー。もっと静かなクラスがよかったなぁ、私。
放課後になり、すぐに教室を出ていく私。
私が下駄箱の前についたときに後ろから声をかけられた。
「はーまなか、さん......だったよね。良かったら、一緒にどう?」
身体ごと那波君のほうに向け、誘いを断る。
「今日は......ちょっと。えっーと、那波君には、ともだ、ちがいる......から、私じゃなくて、も......」
しどろもどろになりながらも口に出す私。暴言や手をあげてくるかもと、びくびく震えている私に笑顔を浮かべる那波君。
「そっかぁ~。断られるよなぁ。聞こえてたよね、あいつらが浜仲さんについて言ってたこと。俺は、そんなこと思ってないから。それだけは知ってほしくて。じゃまた、明日ね。浜仲さん」
那波君は、靴に履き替え、私に手を振ってから校舎を出ていった。
私は、那波君のことを信じていいのか悩んでいた。
家に帰ると、お兄ちゃんと弟がおかえりと優しく迎えてくれた。
夕飯のときにも悩みは言えずに寝ていく私だった。
告白の続きは後になります。告白までの流れをお楽しみにしててください!




