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エルフ、処刑される。

 俺は、部屋の中でがばっと跳ね起きた。

 なにがあった、とまだおぼつかない意識の中で記憶を呼び起こした。そうだ、俺は神社で、変な鳥居のなかに吸い込まれて……。そこまで思い出すと、顔や腹をぺたぺた触って全くなんともないことを確認した。

「なんだよ、夢かよ」

「夢じゃないよ」

 クッションのような柔らかな声色が、部屋に響いた。俺はそこで初めて、隣に人が立っているのに気づいた。背の低い、女の子だ。パジャマ姿で、枕を横に抱えている。

「あなたは確かに、鳥居の中に入ったわ」

「じゃあ……あの声は君かい」

 彼女は首を振った。まつげの長い目が俺をまっすぐに捉えた。

「カードを引いて」

 それだけ言うと、彼女は懐から、クレカサイズのカードを三枚出した。

「悩んでも無駄よ。あなたが何を引くかはもう決まってるから」

「引けば、いいの?」

 戸惑いながら、俺は手を伸ばした。左端の一枚を手に取ると、首をかしげてしまう。

「真っ白じゃないか」

「それでいいの」

 何をさせられているんだろう、という疑問も、しかし彼女が小さく手を振ったのを機に立ち消えになる。

「ばいばい」

 彼女が言うや否や、途端に、俺のしゃがみこんでいた床が消えたのだ。次の瞬間、俺の身体は空にあった。

 真下へ向かう重力が、混乱する俺の身体を潰すようにのしかかる。今度こそ死ぬ。迫ってくる地表を見まいと、ぎゅっと目をつぶった。

 やがて、ごちーんと音を立てて頭が何かに衝突した。同時に、低い男の悲鳴も聞こえてくる。

「いってー」

 俺は頭を抑えながらつぶやいた。星が回る、という表現がしっくりくるくらい、くらくらする。でも死んでない。しかし、そのことを不思議がったり、安心したりする余裕はなかった。

 俺は重大な問題の渦中にあったのだ。

「おい、だれだお前は」

 野太い男の声が、辺りを見回すと、やけに耳の長い面長の人間たちが目をぱちくりとさせて俺を囲んでいる。髪の色が白かったり、金色だったり様々だが、何やら様子がおかしい。そこで初めて、俺は自分の下敷きになって倒れている甲胄の兵士にきがついた。

「ああ、ごめんなさい」

 俺は後ろに飛び退き謝った。



 

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